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Scene01 やさしい世界

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あるところ。
ある場所に光り輝く金色の瞳を持つ一族がいました。
その姿から彼らのことを金色一族と呼んでいました。
彼らの目は、綺麗でいて魔力を増幅させる効果があるため希少価値が高かったのです。
これまでも、欲深い盗賊たちが彼らの瞳を目当てに襲うことなんて日常茶飯事。
でも、金色一族自身の魔力も高く盗賊たちはあっけなく返り討ちにしてきました。

そして、今日……
ひとりの金色一族の若者が、旅立とうとしていました。
金色村では、数年に一度、くじ引きで選ばれたものが修行の旅に出る風習があるのです。

「いよいよ主は、今日旅たとうとしている。
 その旅出を祝って、この瓶底眼鏡を贈呈しよう」

尊重がそういって瓶底眼鏡を若者に渡します。

「さて、金色一族では旅の際におねこ一族の誰かを旅の共に連れて行くしきたりになっておる。
 主は、誰を連れて行く?」

若者は静かに答えました。

「はい。僕は13さんと旅に出たいです」

すると1匹のおねこに注目が集まります。

「僕でいいの?」

「はい。
 おんなじ僕っ子同士ですし。
 何より幼なじみですからね」

「そっか。じゃよろしく!」

若者は小さくうなずきました。

「こちらこそ!」

そうしてふたりは村を出ました。
13が言いました。

「どこに行く?」

13が宙に浮き舞うようにくるりと回転しました。

「そうですね
 廃墟図書館に興味があるんですが……」

「廃墟図書館?
 本でも読むの?」

 13が、そう尋ねると若者がうなずきます。

「はい
 ちょっと読みたい本がありまして、あと武器になる本があるらしいんです」

 若者がそう答えると13が笑います。

「君は根っからの武器マニアだね」

 すると若者もそれに負けない笑顔で答えます。

「13さんには、負けますよ」

 若者と13が、顔を見合わせクスクスと笑い合いました。
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