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Scene01 やさしい世界

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――廃墟図書館

若者と13は、廃墟図書館にて本を探しています。

「わぁー
 色んな本がありますねぇー」

若者が、嬉しそうに声を上げます。

「君ってホント、本の虫だね」

13が、そう言うと若者のほうを見ると若者が本を食べていた。

「ん?呼びました?」

「いや、呼んでないよ。
 僕は、本を読んでいるよ」

 13は、ちらっと若者のほうを見ます。
 若者は、やっぱり本を無心で食べています。

「……ねぇ、本って美味しい?」

 13は、ほんの出来心で尋ねてしまいました。
 すると若者が答えます。

「はい、この本は、パリパリしてて塩加減が絶妙で美味しいですよ」

「塩……?」

「あ、はい。
 この本を全部食べると魔法が覚えれるんですよ。
 古い図書館なのであると思っていたのですがあってよかったです」

 若者がそれはもう嬉しそうに笑います。

「魔法を覚えれる本?」

「はい」

若者は、そう言って最後の1ページを食べ終えました。

「……そか」

すると本のページがすぐに元に戻りました。

「うわ!13さん。
 この本、再生紙ですよ!」

「そか……でも、それはちょっと意味が違う気がする」

13は、そう言って苦笑いを浮かべました。

若者は、2冊めの本に手を当てた。

「え?まだ食べるの?
 お腹いっぱいにならない?」

13が、そう尋ねると若者が答えます。

「この魔法書は、いくら食べてもお腹が膨れないですよ」

若者は、そう言って本のページをちぎりそれを口に運びました。

「……美味しい?」

13が、そう尋ねると若者は首を横に振ります。

「ちょっと味がうすいな。
 この本、レタスの味に近い。
 マヨネーズをかけると美味しいかも」

「本にマヨネーズ?」

13が、首を傾げます。
若者は、目の前の空間を歪ませそこからマヨネーズを取りました。
召喚魔法ですね。
そして、本にマヨネーズをかけるとそれを食べた。

「うん。
 美味しい」

若者は、嬉しそうに笑って本をむさぼります。

「その本は、食べたらどんなメリットあるの?」

「ここの本は、回復魔法が多いのできっとこの本も回復魔法だと思いますよ」

「そっか」

「13さんも、よかったら食べません?
 この本再生紙だし、回復魔法を覚えれるし便利だよ」

「んー。
 僕は回復魔法は、いくつか持っているからいいや……」

「そう?
 もったいない」

 若者は、そう言って笑うとその本を食べ終えました。
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