いけめんほいほい

Scene03 麦わら帽子はまだ早い

56 時の流れに埋もれし名前

「ってここは神社じゃないのかい？」

安志は思わず声を出してしまう。

「それがどうかしたか？」

ガラの悪い男がそういった。

「老人ホームなんじゃ……」

恋次の言葉にガラの悪い男がいう。

「そこはあれよ。
　大人の事情ってやつだ」

「そうですか……」

恋次はため息を吐く。

「おいおい、そんなんじゃ子供は納得してくれないぞ」

そういってジャージ服の中年の男が現れる。

「清さん！」

するとガラの悪い男たちが背筋を伸ばす。

「そう改まるなって……」

「いえ、俺たちは清さんのお陰でここにいますから！」

「ハハハ……まぁいい。
　君たちは何をしてここに連れられて来たのだい？」

「河川敷でギターを奏でながら歌ってたらここに連れてきてもらいました」

安志がそう言うと中年の男が言う。

「そうかい。
　河川敷で歌をか……おっと自己紹介が遅れるところだった。
　僕の名前は神宮寺　清。
　この老人ホームの院長さ」

「老人ホームってどう見ても神社ですよね？」

「廃社となった神社を買い取ってそこをそのまま老人ホームをすることになったんだ」

「買い取りですか？」

「長年愛された神社の取り壊しが決まって、でも取り壊しに反対した地域住民との勃発を清さんが建物をそのままで老人ホームを経営することでみんなを納得させたんだ」

ガラの悪い男が得意げに言う。

「ところで君たちふたりはこの子達に自己紹介を下のかい？」

「下村亀之助だ」

「片山鶴太郎っす」

「自己紹介は大事だぞ」

清がそう言って苦笑いを浮かべる。

「釜戸恋次です」

「京極安志です」

そして恋次たちも自己紹介した。