いけめんほいほい

はらぺこおねこ。

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Scene04 あおはる

80 いちばんぼし

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少し昔の話。
ひとりの子供が泣いていた。

「欲しい欲しい!
 欲しいよー」

幼稚園に通う百道は、弱虫で今日も駄々をこねて泣いている。

「ダメ!あれは売り物じゃ無いんだから我慢しなさい」

母親になだめられるも百道は、さらに泣きじゃくる。

「欲しいよー欲しいよー」

すると父親が言った。

「あれは、いちばんぼしなんだ。
 百道もボクシングで、一番になれば、父さんがプレゼントしよう!」

「本当に?」

一時退院をしていた父親の言葉に百道は喜ぶ。
父は末期の癌だった。
余命宣告もされている。
その大切な時間は百道のために使う。
それが父の願いだった。

「でも、泣き虫百道になれるかな??」

父親が笑う。
その笑みは誰よりも暖かく優しかった。

それから百道は、ボクシングを頑張った。
サンドバッグを殴り、拳を痛めては泣いて。
試合に出れなくては、また泣いて。
そうしつつも百道は少しずつ強くなった。

そして、試合の日が近づく。
初めての試合の日。
百道は負けた。

悔しくて泣いた。
情けなくて泣いた。

「また来月の試合があるだろう?」

父の言葉が優しく百道を包み込む。

「でも、どうせ負けるもん」

百道は優しさに包まれ甘えた。

「諦めたら試合終了って言葉は知ってるよな?」

「アニメのセリフでしょ?」

百道は涙をボロボロこぼしながらいった。

「でもな?百道。父さんは思うんだ。
 諦めたら諦めた先の道がある。
 生きている限り試合は続くんだ。
 百道は、次の試合も諦めるのか?
 いちばんぼし欲しくないのか?」

百道には父がなにをいっているのかわからない。
わかることはいちばんぼしが欲しいということだ。

「じゃ、わかるな?」

百道は大きくうなずいた。

「ボクシングでいちばんになるー!」

百道の目がかがやく。

「よし!そのいきだ!」

父はこの時、状態は悪かった。
百道との会話の時以外酸素マスクが外せなかった。
本当は、少しの間も酸素マスクを外していい状態じゃない。

余命1ヶ月もない状態だった。

そして、百道の試合の日がやってくる。

百道は気合を入れて、拳を握る。
この試合はテレビで放送される。
試合に来れない父に見てもらえる試合。
百道は頑張った。
殴られても泣かない。
前に現れるのは自分より強い人ばかり。

それでも、百道は試合に勝った。
勝ち続けそして、優勝した。

テレビのインタビューを受け金メダルを手に入れ。
病院に向かった。
しかし病室には父の姿はない。

看護師さんに尋ねた。

「あの父は??」

看護師さんは、少し泣きそうな顔をした。
そして、連れてきてもらった少し寒い部屋。

そこには動かなくなった父の姿があった。

「お父さん?」

返事はない

触ってみた。

ひんやひと冷たい。

百道は、初めて知った。
これが死なのだと。

百道は泣いた。
いっぱい泣いた。

「お父さん僕、一番になったよ?
 一番になれたよ?メダルだってほら……」

しかし父は返事をしない。

するとひとりの看護師さんが現れた。

「百道くん」

「え?なぁに?看護師さん」

「これお父さんから……」

そういってひとつの箱を渡した。
箱の中身は、父のスマホ。
そして、星のストラップだった。

スマホの中には動画が残されていた。
百道は動画を再生した。

「百道へ。優勝おめでとう。
 クリスマスのツリーの星は見つからなかったが、星のストラップをお祝いにプレゼントしよう。
 大事に使ってくれ」

「なんだよ!
 なんだよーもっといいセリフないの?」

百道は、涙を零した。
でも、その不器用さが、父らしく少しだけ笑えた。

それから12年が過ぎた。

「なぁ、百道」

「ん?どうした?」

海夜が百道に尋ねる。

「そのストラップ、ずっとつけてんねんな?」

すると百道は答える。

「ああ、これは俺のいちばんぼしたまからな!」

「意味わからん」

「父ちゃんの形見なんだ」

「そっか。そやったら大事にせなな!」

「ああ」

百道は、プロボクサーを目指す少年。
自分より弱い人を守り自分より強い人に媚びない。
そんな少年になった。

強い強い少年になった。

目指すのは世界一のチャンピョン。
そして、今度は誰かにプレゼントするだ。
一番というなの一番星を。
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