いけめんほいほい

はらぺこおねこ。

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Scene04 あおはる

81 喧嘩と青春

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「恋次にもすぐにできるよ」

その言葉は誰よりもエグく刺さった。
だってそうだろう。

「私がなってあげるよ」

ならまだしも。
他人任せの「すぐにできるよ」

自分は好きにならないけど。
他に好きになってくれる人がいる。

そう言われると心が折れる気がした。
そんな意味はない。
そんなことはわかっている。

でも心が折れる。

そんなことがあった次の日。

恋次はジムにいた。
あれから毎週一回はジムに顔を出している。

殴りに来ているわけでもない。
殴られにも来ているわけでもない。

避ける練習をしているわけでもない。

おじさんと百道と話に来ている。
たまに滋もいる。

それが楽しかった。

いいことないかな。
いいことないかな。
いいことないかな。

毎日毎日それの繰り返し。

そんなある日。
恋次は見てしまった。

女の子が不良に絡まれている。

助けてボコボコに殴られても女の子はときめかない。
そんなのわかっている。

でも、身体は動く。

「やめてあげてください」

「ああん?」

不良が恋次を睨む。

怖い。
身体が震える。

不良は恋次を殴る。

でも、不思議と身体が動く。

「なめてんのかテメェ」

別の不良が恋次を殴る。

でも、やっぱり恋次の身体は動く。

避けるチャンピョン。

目指せるかもしれない。

そう思った瞬間だった。
そのとき。

「もしかして釜戸くん?」

助けた少女がその名を呼ぶ。
知っている人だった。

清子の親友。
阿母おかあ 水面みなもだった。

「阿母さん?」

不良はここぞとばかりに恋次に殴りかかる。
見なくてもわかる。
恋次はその拳を避け次に来る不良3人の攻撃を避け。
背後に回る。

「知っていてくれているんですか?」

阿母のテンションが上がる。
恋次のテンションは上がらない。

喧嘩のイメージを植え付けたくないからだ。

でも思った。

あの平吉と満の件のあと。
自分が喧嘩をするというイメージを結びつけている人も少なくないんじゃないかと。

「おい兄ちゃん。
 ウチの若いやつが世話になってるようだな」

こうして強い強面の人が出てくるのは想像通り。
いくら雑魚でも4人相手は避けれるか自信がない。

そう思って相手の確認をしたら……

不良3人が吹っ飛んだ。

平吉、満、安志が殴ったからだ。

まさかの身内……
しかも仲間。

頭がついていかない。

康信までそこにいて、警察官を連れてきている。

「おまわりさんこっちです」

これはおそらく自分がボコボコに殴られた状態で助けられるのがアニメの世界だろう。

だけど自分は無傷。

そして殴ってないので恋次はお咎めなし。
そしてなぜかよく耐えたと刑事の村雨小太郎に褒められた。

水面に絡んでいた不良たちは薬・強姦・傷害などを繰り返す組織の末端の一員だった。

なので刑事たちも目を張っていた。

ただ平助と満と安志は少しだけ注意を受けた。
その程度だった。

そんな放課後。
事件は起きなかった。
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