上 下
47 / 50

信頼

しおりを挟む
「やれやれ狭量な・・あれは私が晶に給餌するのが不満なんだろう。」

「そうなの?」

要から与えられまま、大人しくモグモグと給餌を受ける晶。
日頃自立した晶を知っている人からすると、目を見張る程考えられない行動だ。

本人としては甘えてる自覚は全く無いのだが、こんな姿を見れるのは家族の特権だ。
それをわかった上で、要が晶に対しめっぽう甘くするのが余計に夜彦の感に触るのだろう。

仕方ないだろう夜彦、こんな可愛い娘なら親バカにもなるさ。

などと、おくびにも出さない鉄壁の無表情を誇る要だった。

「あぁ、獣化してるから心が体に引っ張られてるんだろう。狼種は特に顕著だからな。あれは、晶を番と認識はしている様なんだが、まだ何も言われていないのか?」

こてんと頭を傾げ、しばし熟考。
こくんと頷く。

眉間に皺を寄せ考える姿も可愛いと思えるから、親バカも極まれりだなと、要は内心苦笑いだ。

「・・・そうか。夜彦は私に似てヘタレだから、すまないな。・・晶は夜彦がいいのかい?」

「うん。」今度は迷いのない即答。

「そうか・・・わかった。戸籍上は兄妹だが、まぁやり様はどうとでもなる。その辺は大人にまかせなさい。私としては、可愛い娘を外に嫁がせなくていいんだ、喜ばしい事だよ。」

目端を光らせながら、口の端でニヤリと笑うその様は、裏社会を影で牛耳り暗躍する人物にしか見えない。

が、悪者顔で実際でやってる事は、食事を済ませた晶の口をすすいだり、蒸しタオルで口元を拭ったり、寝ぐせを直してあげたりと、病床の子を甲斐甲斐しくお世話するオカンでしかない。

細やかでまめな気遣いは、実母ミレーヌよりも、義父要の方がよっぽど母親らしいと晶は思っている。

そして夜彦と同様に この2人よく結婚したなぁ謎だ、と常々思うのだ。
しおりを挟む

処理中です...