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24.【Side:オスリック】消えたセラフィン

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 王太子として生きていることが知らしめられた今、式典への参加を拒否することは不可能だった。久しぶりに王太子が式典に姿を見せるとあって軍の騎士たちも喜んでいるため、その気持ちを踏みにじるのもはばかられる。
 式は6時の鐘の音とともに始まった。定期的に行われている大会の優勝者への褒賞の授与やら高齢の騎士が引退することへの労いやら、内容は多岐にわたっている。
 式典のあいだはよっぽどのことがなければ席を立つことは許されない。それでも退屈している暇はないので気にならないが。
 国王からの祝辞もあるが、今年騎士になった者の中から選ばれる優等若芽賞の祝辞は俺が述べることになっている。

「では今年の優等若芽賞を発表いたします――」

 式も後半に差し掛かった頃にようやく俺の出番が回ってきた。俺も壇上に向かわなければ、と気を引き締めたところで、視界の端でちらりと影が動いた。
 ……アキム?
 今日の式典に出席の予定がないアキムがホールの端に姿を見せていた。
 手を振っているみたいだが、アキムが祝辞に向かう俺を応援するとかそういう殊勝な行動を取るわけがない。俺もそんな心配されるような人間でもないし。
 なんなんだ、と疑問に思いつつもいつまでも椅子に座っているわけにはいかないので、そのまま壇上に登る。
 まさかこの壇上に何か仕掛けられているのか? だからアキムは俺に気付かせようとしたのか?
 しかしそれは俺の思い過ごしでしかなかった。祝辞をきちんと終えても何か悪いことが起こる気配はない。
 席に戻ると、まだアキムはホール内に残っていた。何か言いたげだが、大きな声を出すわけにもいかずに困っているようだ。式典が終わったらすぐにアキムのところに直行だな、これは。
 最後の最後でやたら長いアエルバートの祝辞を聞かされ、うんざりしながら終了を待った。こいつがこんなにも長話をするとは初めて知った。城に不在だったことで、知る機会がなかったのだ。

「殿下、大変です」

 式典が終わると、俺が向かうのよりも早くアキムがやって来た。ただならぬ様子から、相当大変な事情だと察する。

「何があった?」
「セラフィン様の行方が分からなくなりました」

 スッと頭の芯がしびれるような気がした。受け入れたくなくて脳が拒否したのだろう。固まっている場合ではないと自分自身を𠮟りつける。

「経緯は?」
「昼間に一度実家に帰ると城を出たのですが、それから帰って来ておりません」
「ハイタッド家に泊まっている可能性は?」
「確認のために人をやっていますが、セラフィン様は日帰りの予定だとおっしゃって出ていかれたので可能性は低いです」
「最後に見たのは?」
「城の兵士です。昼前に侍女と一緒に出て行く姿を目撃されています」
「その侍女は?」
「……帰っていません」

 思わず舌打ちしそうになる。侍女が帰っていないのでは事情を聞くこともできない。
 侍女も一緒に巻き込まれたのか。それとも侍女がセラフィンに何かをしたのか。両方の線で考える必要がありそうだ。

「城下町へ向かう。情報を集めるぞ」
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