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01:お願い
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お昼ご飯を食べ終わり、何気なく廊下に目をやる。
そこにはありふれた光景――蓬莱奏斗くんが女の子に声を掛けられている姿があった。
ひとり、ふたり。……あ、もうひとり増えた。
「奏斗くぅん! 昨日はあ・り・が・と。助かっちゃった♡ またよろしくね!」
「奏斗、奏斗! ねぇねぇ、放課後ヒマ? 遊びに行こーよ!」
「奏斗くん、助けて! 午後一の授業で小テストあって大ピンチなのー! 勉強教えてー」
おお……一瞬で三人もの女の子に取り囲まれてる。都会のショッピングモールで見つかっちゃった芸能人みたい。
わたしは視線を教室内へと戻し、窓際の席にいる佐藤くんに近づいた。
「佐藤くんっ! ちょーっとお願いがあってさ」
「来栖くん? 非常に優秀でどんな問題も自力で解決できる来栖くんがお願い?」
佐藤くんはメガネのつるに手を掛け、レンズを光らせる。
「いったいどんな無理難題が飛び出してくるのか……。真面目な来栖くんの頼みとあっては聞いてあげたいところだが果たして……続きを話してくれたまえ」
佐藤くんは体ごとわたしの方を向き、真剣な顔をして耳を傾けてくれる。
佐藤くんはわたしのことを真面目と言ったけれど、彼のほうがよっぽど真面目。
わたしがこれからする〝おねがい〟に幻滅しませんように、と祈りながら話す。
「実は……その、言いにくいんだけど」
うぅ……緊張するなぁ。
断られちゃうかな? 断られちゃったらどうしよう……。
「わけあって……彼氏のふりをして欲しいの!」
「「彼氏のふり?」」
なぜか前からと後ろから同じ言葉が聞こえた。
前から聞こえた声はもちろん佐藤くんのもの。でもって後ろから聞こえた声は……。
「か……蓬莱くん?」
振り向くと、奏斗くんが真後ろに立っていた。四人の女の子を引き連れて。……さっき見たときより増えてるし。
え、どうして奏斗くんがここに?
「なんだよ、り……来栖。彼氏欲しいの? 俺じゃダメ?」
絶句するわたしを置いて、奏斗くんは話を進めた。
わたしが答える前に、奏斗くんの周りの女の子たちが騒ぐ。
「えー⁉ 来栖さん図々しくない?」
「つり合ってなさすぎー。気まずくなってすぐに別れるっしょ」
どうしよう。否定も肯定もできずに固まってしまう。
否定したら、わたしが奏斗くんと付き合いたがってると思われてしまうかもしれない。でもこのまま……奏斗くんの前で馬鹿にされたままにしておくのも嫌だ。
どうしようか悩んでいたわたしは、またしても一歩出遅れた。
「いったん黙ろうか」
「「「「…………」」」」
奏斗くんの発した一言で四人は一瞬にして沈黙した。
奏斗くんは、すっっっっごぉぉぉ~~くモテる。
ビジュアルが俳優さん並みに整っているだけでなく、うちの学校の理事長先生の息子さんでもある。うん、モテる要素しかない。
わたしのことを気にかけてくれた奏斗くんには悪いけど、誤解で妬みを買いたくない。
「……えっと冗談、だよね? そうだよね、うん。あのね、わたしがお願いしたいのは彼氏の〝ふり〟をしてくれる人で……。あ、ほら、蓬莱くん忙しそうだし! この話は忘れて!」
佐藤くんとの会話に戻ろうと顔を戻すと、肩をトンと叩かれた。
「そんなこと言わずにさ。俺にも話を聞かせてよ。もしかしたら俺のほうが力になれるかもしれないだろ」
「来栖くん。僕より蓬莱の方が向いてる話だと思うし、蓬莱にも相談したらどうかな?」
佐藤くん、空気を読んで。
見なくても分かる。背中に女の子たちからの憎しみの視線がつきささっている。たぶん奏斗くんと一緒にいた四人だけじゃなくて、奏斗くんを好きなクラスメイトたちの分もある。
「わたしは佐藤くんにお願いしようと……」
「いやいやいや! 僕よりも蓬莱の方が適任なのは間違いないって! ね! ね!」
にっこり笑顔を浮かべた佐藤くんの圧力に思わずたじろぎそうになる。
佐藤くんから『引けない』って圧力を感じた。
……あ、佐藤くんのこめかみから汗が。……もしかして冷や汗?
佐藤くんにも何か事情があるのかも。
「えー、来栖くんの彼氏なら佐藤くんの方がお似合いだって!」
「そうそう。だって来栖さんだよー」
「てか来栖さんと奏斗くんが並んでたってカレカノに見えないし」
「たしかにー。つり合い取れてなさすぎてふりすら無理っしょ」
女の子たちが、奏斗くんに彼氏のふりをさせまいと口を挟んでくる。でも今に限って言えばわたしも彼女たちと同意見だ。
だって……みんなには内緒だけど、実のところわたしは奏斗くん専属のメイドをしている。
そこにはありふれた光景――蓬莱奏斗くんが女の子に声を掛けられている姿があった。
ひとり、ふたり。……あ、もうひとり増えた。
「奏斗くぅん! 昨日はあ・り・が・と。助かっちゃった♡ またよろしくね!」
「奏斗、奏斗! ねぇねぇ、放課後ヒマ? 遊びに行こーよ!」
「奏斗くん、助けて! 午後一の授業で小テストあって大ピンチなのー! 勉強教えてー」
おお……一瞬で三人もの女の子に取り囲まれてる。都会のショッピングモールで見つかっちゃった芸能人みたい。
わたしは視線を教室内へと戻し、窓際の席にいる佐藤くんに近づいた。
「佐藤くんっ! ちょーっとお願いがあってさ」
「来栖くん? 非常に優秀でどんな問題も自力で解決できる来栖くんがお願い?」
佐藤くんはメガネのつるに手を掛け、レンズを光らせる。
「いったいどんな無理難題が飛び出してくるのか……。真面目な来栖くんの頼みとあっては聞いてあげたいところだが果たして……続きを話してくれたまえ」
佐藤くんは体ごとわたしの方を向き、真剣な顔をして耳を傾けてくれる。
佐藤くんはわたしのことを真面目と言ったけれど、彼のほうがよっぽど真面目。
わたしがこれからする〝おねがい〟に幻滅しませんように、と祈りながら話す。
「実は……その、言いにくいんだけど」
うぅ……緊張するなぁ。
断られちゃうかな? 断られちゃったらどうしよう……。
「わけあって……彼氏のふりをして欲しいの!」
「「彼氏のふり?」」
なぜか前からと後ろから同じ言葉が聞こえた。
前から聞こえた声はもちろん佐藤くんのもの。でもって後ろから聞こえた声は……。
「か……蓬莱くん?」
振り向くと、奏斗くんが真後ろに立っていた。四人の女の子を引き連れて。……さっき見たときより増えてるし。
え、どうして奏斗くんがここに?
「なんだよ、り……来栖。彼氏欲しいの? 俺じゃダメ?」
絶句するわたしを置いて、奏斗くんは話を進めた。
わたしが答える前に、奏斗くんの周りの女の子たちが騒ぐ。
「えー⁉ 来栖さん図々しくない?」
「つり合ってなさすぎー。気まずくなってすぐに別れるっしょ」
どうしよう。否定も肯定もできずに固まってしまう。
否定したら、わたしが奏斗くんと付き合いたがってると思われてしまうかもしれない。でもこのまま……奏斗くんの前で馬鹿にされたままにしておくのも嫌だ。
どうしようか悩んでいたわたしは、またしても一歩出遅れた。
「いったん黙ろうか」
「「「「…………」」」」
奏斗くんの発した一言で四人は一瞬にして沈黙した。
奏斗くんは、すっっっっごぉぉぉ~~くモテる。
ビジュアルが俳優さん並みに整っているだけでなく、うちの学校の理事長先生の息子さんでもある。うん、モテる要素しかない。
わたしのことを気にかけてくれた奏斗くんには悪いけど、誤解で妬みを買いたくない。
「……えっと冗談、だよね? そうだよね、うん。あのね、わたしがお願いしたいのは彼氏の〝ふり〟をしてくれる人で……。あ、ほら、蓬莱くん忙しそうだし! この話は忘れて!」
佐藤くんとの会話に戻ろうと顔を戻すと、肩をトンと叩かれた。
「そんなこと言わずにさ。俺にも話を聞かせてよ。もしかしたら俺のほうが力になれるかもしれないだろ」
「来栖くん。僕より蓬莱の方が向いてる話だと思うし、蓬莱にも相談したらどうかな?」
佐藤くん、空気を読んで。
見なくても分かる。背中に女の子たちからの憎しみの視線がつきささっている。たぶん奏斗くんと一緒にいた四人だけじゃなくて、奏斗くんを好きなクラスメイトたちの分もある。
「わたしは佐藤くんにお願いしようと……」
「いやいやいや! 僕よりも蓬莱の方が適任なのは間違いないって! ね! ね!」
にっこり笑顔を浮かべた佐藤くんの圧力に思わずたじろぎそうになる。
佐藤くんから『引けない』って圧力を感じた。
……あ、佐藤くんのこめかみから汗が。……もしかして冷や汗?
佐藤くんにも何か事情があるのかも。
「えー、来栖くんの彼氏なら佐藤くんの方がお似合いだって!」
「そうそう。だって来栖さんだよー」
「てか来栖さんと奏斗くんが並んでたってカレカノに見えないし」
「たしかにー。つり合い取れてなさすぎてふりすら無理っしょ」
女の子たちが、奏斗くんに彼氏のふりをさせまいと口を挟んでくる。でも今に限って言えばわたしも彼女たちと同意見だ。
だって……みんなには内緒だけど、実のところわたしは奏斗くん専属のメイドをしている。
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