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09:プライド
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「そ……そんなんじゃないけど……」
でもきっとそう思われても仕方がない。
「そういうことなら納得だわ。この偽彼氏くん、全然莉衣に似合ってねぇし」
「あ、それは私もちょっと思ってた。つり合ってないっていうか……二人のジャンルが違うんだよねー。女の子に爆モテそうな奏斗くんと、クラスの一軍女子からさん付けで呼ばれてそうな莉衣ちゃんって感じ」
ズキン、と胸が痛んだ。
おかしいな。学校で女の子たちに言われたときには何も感じなかったのに……。
「あはは、傍から見るとそう見えてるんだ……」
渇いた笑いしか出て来ない。
「黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって」
「え……奏斗くん?」
「似合ってねぇ、とか周りの評価なんて関係ねぇんだよ。こっちにしたらよ。聞き飽きてんだよ、そういうくだらねぇ言葉」
「わ!」
隣に座っていた奏斗くんに、突然肩を抱き寄せられた。
ち、近い!
「俺が莉衣に惚れてんだ。だから頑張って莉衣に振り向いてもらおうとしてんだよ。今日こうしてダブルデートに来たのだって、俺が純粋に莉衣とデートしたいって下心があったからだ」
「へー。バレたらそう言えって言われたの? 偽彼氏くん、莉衣からいくらもらったんだよ?」
馬鹿にしたような態度の瑞希に、わたしは珍しく怒りが湧いた。
「瑞希、さっきも言ったでしょ。奏斗くんのことを悪く言わないで。奏斗くんは困っているわたしを助けてくれただけで、報酬目当てなんかじゃないんだから」
むしろお金のやり取りで言うなら、メイドとして雇われてるわたしの方がもらってるくらい。
「つーか、莉衣が嘘吐いてたって分かったうえで聞きたいことがそんなことなのかよ」
ゾッとするほど冷たい声音。
こんな言い方する奏斗くんは初めて見た。本気で怒ってるんだ。
当然だよね。
奏斗くんに嫌な思いさせちゃったんだ。
「どういう意味だよ?」
「莉衣が見栄張るために彼氏がいるって嘘吐くやつだと、本気で思ってんのか? だとしたらおまえの目はとんだ節穴だな」
「なんだと……!」
「ちょ……奏斗くん!」
瑞希が今にも殴りかかりそうで、慌てて止めに入る。
「莉衣が嘘吐くしかなかったのは、おまえのせいだろ」
「奏斗くん!」
何を言うつもりなの。
「莉衣はおまえを気遣って言わないでいたけどな……おまえがまだ自分を好きなんじゃないかって心配してたんだよ。だから彼氏がいないって伝えるのをためらった。……見栄なんかで嘘を吐くはずがないだろ。おまえは今までいったい莉衣の何を見てきたんだ」
「な……っ!」
瑞希が強く拳を握る。
けれど、それが奏斗くんに向けられることはなかった。
瑞希はプライドが高いけど馬鹿なわけじゃない。奏斗くんに言葉にされて、自分の感情を自覚できたんだと思う。
わたしも誤解してたけど、瑞希は無自覚だったんだ。
今日の瑞希の態度から考えれば、わたしに彼氏がいるのを不満に思ってたのは明らか。そしてそれは瑞希がわたしのことを好きだから。これは自惚れじゃない。
でもそれは瑞希自身、自覚していなかった感情らしい。今の瑞希の動揺した表情を見れば分かる。
「……俺は! 別に莉衣のことなんか好きじゃねぇよ!」
強い口調で瑞希は言った。
「そもそも昔から鈍くさいヤツだったし! 面倒みてやってただけだつーの! 勘違いしてんじゃねーよ!」
「え……あ、うん。そう、なんだ……」
つい、いつものように瑞希の言葉を肯定する。
頭の中では分かってるのに。これが自身のプライドを守るための瑞希の強がりだって。
「帰るぞ、春姫。こんなやつらと一緒にいるのなんて時間の無駄だし」
「え……? もっと詳しく話……」
「いいから帰るぞ!」
瑞希が春姫ちゃんの手を強引に引く。
大丈夫? と、春姫ちゃんに目で心配すると、彼女は小さく頷いてそのまま瑞希に引っ張られていった。
「瑞希……怒ってたな」
「仕方ねぇだろ。あとはあいつの問題だ」
「うん……そうだね」
わたしが瑞希の気持ちに応える気がない以上、遅かれ早かれこうなっていたはずだ。
「……あいつだって、こんな風に莉衣と気まずくなりたかったわけじゃないはずだから、しばらくしてから連絡してやれば?」
「意外だね。奏斗くん、瑞希のこと嫌ってたから、てっきり『もう連絡しない方がいい』って言いそうなのに」
奏斗くんがちょっと苦しそうに笑った。
「そりゃあな。だって俺、あいつの気持ちすげぇ分かっちまうからさ」
でもきっとそう思われても仕方がない。
「そういうことなら納得だわ。この偽彼氏くん、全然莉衣に似合ってねぇし」
「あ、それは私もちょっと思ってた。つり合ってないっていうか……二人のジャンルが違うんだよねー。女の子に爆モテそうな奏斗くんと、クラスの一軍女子からさん付けで呼ばれてそうな莉衣ちゃんって感じ」
ズキン、と胸が痛んだ。
おかしいな。学校で女の子たちに言われたときには何も感じなかったのに……。
「あはは、傍から見るとそう見えてるんだ……」
渇いた笑いしか出て来ない。
「黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって」
「え……奏斗くん?」
「似合ってねぇ、とか周りの評価なんて関係ねぇんだよ。こっちにしたらよ。聞き飽きてんだよ、そういうくだらねぇ言葉」
「わ!」
隣に座っていた奏斗くんに、突然肩を抱き寄せられた。
ち、近い!
「俺が莉衣に惚れてんだ。だから頑張って莉衣に振り向いてもらおうとしてんだよ。今日こうしてダブルデートに来たのだって、俺が純粋に莉衣とデートしたいって下心があったからだ」
「へー。バレたらそう言えって言われたの? 偽彼氏くん、莉衣からいくらもらったんだよ?」
馬鹿にしたような態度の瑞希に、わたしは珍しく怒りが湧いた。
「瑞希、さっきも言ったでしょ。奏斗くんのことを悪く言わないで。奏斗くんは困っているわたしを助けてくれただけで、報酬目当てなんかじゃないんだから」
むしろお金のやり取りで言うなら、メイドとして雇われてるわたしの方がもらってるくらい。
「つーか、莉衣が嘘吐いてたって分かったうえで聞きたいことがそんなことなのかよ」
ゾッとするほど冷たい声音。
こんな言い方する奏斗くんは初めて見た。本気で怒ってるんだ。
当然だよね。
奏斗くんに嫌な思いさせちゃったんだ。
「どういう意味だよ?」
「莉衣が見栄張るために彼氏がいるって嘘吐くやつだと、本気で思ってんのか? だとしたらおまえの目はとんだ節穴だな」
「なんだと……!」
「ちょ……奏斗くん!」
瑞希が今にも殴りかかりそうで、慌てて止めに入る。
「莉衣が嘘吐くしかなかったのは、おまえのせいだろ」
「奏斗くん!」
何を言うつもりなの。
「莉衣はおまえを気遣って言わないでいたけどな……おまえがまだ自分を好きなんじゃないかって心配してたんだよ。だから彼氏がいないって伝えるのをためらった。……見栄なんかで嘘を吐くはずがないだろ。おまえは今までいったい莉衣の何を見てきたんだ」
「な……っ!」
瑞希が強く拳を握る。
けれど、それが奏斗くんに向けられることはなかった。
瑞希はプライドが高いけど馬鹿なわけじゃない。奏斗くんに言葉にされて、自分の感情を自覚できたんだと思う。
わたしも誤解してたけど、瑞希は無自覚だったんだ。
今日の瑞希の態度から考えれば、わたしに彼氏がいるのを不満に思ってたのは明らか。そしてそれは瑞希がわたしのことを好きだから。これは自惚れじゃない。
でもそれは瑞希自身、自覚していなかった感情らしい。今の瑞希の動揺した表情を見れば分かる。
「……俺は! 別に莉衣のことなんか好きじゃねぇよ!」
強い口調で瑞希は言った。
「そもそも昔から鈍くさいヤツだったし! 面倒みてやってただけだつーの! 勘違いしてんじゃねーよ!」
「え……あ、うん。そう、なんだ……」
つい、いつものように瑞希の言葉を肯定する。
頭の中では分かってるのに。これが自身のプライドを守るための瑞希の強がりだって。
「帰るぞ、春姫。こんなやつらと一緒にいるのなんて時間の無駄だし」
「え……? もっと詳しく話……」
「いいから帰るぞ!」
瑞希が春姫ちゃんの手を強引に引く。
大丈夫? と、春姫ちゃんに目で心配すると、彼女は小さく頷いてそのまま瑞希に引っ張られていった。
「瑞希……怒ってたな」
「仕方ねぇだろ。あとはあいつの問題だ」
「うん……そうだね」
わたしが瑞希の気持ちに応える気がない以上、遅かれ早かれこうなっていたはずだ。
「……あいつだって、こんな風に莉衣と気まずくなりたかったわけじゃないはずだから、しばらくしてから連絡してやれば?」
「意外だね。奏斗くん、瑞希のこと嫌ってたから、てっきり『もう連絡しない方がいい』って言いそうなのに」
奏斗くんがちょっと苦しそうに笑った。
「そりゃあな。だって俺、あいつの気持ちすげぇ分かっちまうからさ」
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