【序章完結】魔力が無いと言われた青年、世界唯一の地脈使いでした〜攻撃・支援・回復なんでもこなす最強の傭兵は王にのみ忠誠を誓う〜

葉桜鹿乃

文字の大きさ
13 / 14

13 『勧誘はご遠慮ください』

しおりを挟む
 外は、やはり多重支援を掛けていても、量も多くレベルの高い魔物に苦戦していたようだった。

 聖属性をかけていても、飛ぶのだ。タンク役の挑発を連発して引きつけて叩く。もしくは魔法で倒す。炎系の魔法は攻撃魔法が使える人間なら基本として扱うし、死霊系の魔物にもよく効く。

 みんなクタクタになって地面に座り込んでいた。表情が満足気なのは、死霊系の魔物のドロップ品は貴重だからだろう。

 ギルドマスターへ報告に行く前に、ダンジョンコアを僧侶に返す。

「あの……! 言いませんし、訴えません。たくさん、ありがとうございました」

 重たいダンジョンコアを抱えた彼女が頭を下げるので、ノアは笑ってその頭を撫でた。つい、というのが正しいが、彼女は顔を赤くしてギルドマスターの方へ向かった。

 首を傾げてノアもギルドマスターの元に向かう。ダンジョンクリアの報告は皆がしてくれているので、負傷者の確認だ。

「大怪我した方や、動けない方はいますか?」

「あぁ、乱戦になったからな。何人か馬車の中で休んでいる」

「回復してきます。そして、私は報酬が要らないので、私の報酬は皆さんの酒代にでもしてください。回復したら帰ります」

「はぁ?! お、おい、ノア!」

 ぺこ、と頭を下げてノアは馬車に向かった。地形や味方の攻撃の流れ弾で負傷した人たちを、まとめて回復させる。

 回復魔法は難しい。大雑把にやると、負傷部分が自己治癒力が活性化しすぎて逆に衰えたり傷が増えたりする。

 一人一人に丁寧に回復魔法をかけると、ノアは言った通り集団から離れた。

 人気のない場所で地脈を掴み、ゴーシュの街の側に出る。

 ゴーシュの街の大通りを見て回る。ここは特に鳥の串焼きと、牛を叩いてミンチにした物に香辛料を混ぜて炒めて薄焼のパンに詰めた物が人気なようだ。甘い物はあんまりない。

 他にも、エナメルの細工が綺麗だった。本物の宝石のように輝き透けるエナメルを、銀で線を引いた細工に流して作る工芸品が美しい。

 豪奢な物ならレイは幾らでも持っているだろう。けれど、ノアから見ても新鮮だと思うような美しい工芸品は、逆算して考える手間の割には安い。

 緑の蔓草に白い花をモチーフにした丸いペンダントを一つ、お土産に買った。

 あとは戻って先ほど見た串焼きやパンをいくつか買い込んで、城に戻るだけだ。

(レイは飽きないのだろうか……いつも似たような事ばかり報告してる気がするけど)

 それでも、やった事を聞いてもらえるのは嬉しい。一緒にお土産を食べながらレイと話すのを楽しみにして、もう少し街を見てこようと思った。

 美味しい酒があるなら、レイはそれも喜ぶからだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!

碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!? 「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。 そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ! 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...