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17 貴方がいないと何もできない私と、私がいないと何もできない貴方
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ヴァンツァーは泣かない。
小さな頃から、転んでも、枝で脚を切っても、怒られても、絶対に泣かなかった。
きっと冒険者になってからも、泣かなかったのだろう。腕を肩から失くしても、歯を食いしばって生きてきたのだろう。
だけど、今は泣いている。私の背中に縋ったまま、ヴァンツァーは泣いている。
彼は自分のことでは泣かない。私との約束、私のこと、私に関わることで泣く。
「大丈夫よ、ヴァンツァー。泣かないで。……離れたりしないから」
右腕を、撫でる。彼はまだ顔を上げようとしない。泣き顔を見られるのが嫌なのだろう。泣き声もあげない。だから、返事はない。
宥めるように右腕をぽんぽんと叩いて、手を繋いで振り返らずにサロンに向かった。ここよりは、人目を気にしなくていいだろう。
ちょうどお茶の支度をした侍女が出てきたところだ。お礼を言って二人きりにしてもらって、サロンの中に落ち着いた。
お茶と少しの焼き菓子を前に、ヴァンツァーの方を見ないようにして並んで座る。手は、握ったままにした。
「ミーシャ、もう二度と、怖い目には合わせない」
「ダメよ、ヴァンツァー」
私は、やっと顔を上げた彼をまっすぐに見つめて、真剣な声で言った。
「私は確かにヴァンツァーが居ないと自分の身も守れないわ。でもね、ヴァンツァー。私と貴方が紆余曲折なく結婚できるようになった……つまり、貴方が貴族になった。領民と領地も大事にしなくちゃダメ。だから、その約束はしないで。私を優先してはダメなの」
ヴァンツァーの表情は動かないが、中々その言葉を承服するのに時間がかかったようだ。
私たちは黙ったまま見つめあって、ヴァンツァーは自分の中でやっと折り合いをつけて、息を吐いた。
「……分かった」
「じゃないと、私、また泣いちゃうから」
「それは、困る」
「私は貴方が居ないと何もできない。でも、貴方は私が自分でできるように待ってくれる。そんな所が好きなの。そして、これと決めたらやり遂げるところも」
私はほとんど保留にしているプロポーズへの返事のような話をしている。ヴァンツァーは、泣いたばかりだからまだそこまで頭が回らないようだ。
「でも、やり方はたくさんあるわ。お父様が今回、貴方のやり方を修正してくれたように、ちゃんとやり方があるの」
握った手を、指を絡めて握りなおす。薬指の指輪が仄かに温かい。
「ヴァンツァーがいないと私はとても困るの。貴方のためなら、勇気が出る。待っててくれるから、頑張れる。……ヴァンツァーは、私が居なくても困らないかもしれないけど……」
「それは違う」
私の話を遮って、彼は強く否定した。
「ミーシャが居ないと、ミーシャが必要としてくれないと、俺は何も為せない。どんなに力をつけるだけのチャンスがあっても、ミーシャが居なければ俺は何もしなかった」
ヴァンツァーの理由はいつも私だ。
「私たち、お互いがいないと何もできないのね」
「そういう、ことだ」
笑い混じりの言葉に、ヴァンツァーは、少し下手くそに笑って目を細めた。
この人のこの笑い方、私はとても、好き。
小さな頃から、転んでも、枝で脚を切っても、怒られても、絶対に泣かなかった。
きっと冒険者になってからも、泣かなかったのだろう。腕を肩から失くしても、歯を食いしばって生きてきたのだろう。
だけど、今は泣いている。私の背中に縋ったまま、ヴァンツァーは泣いている。
彼は自分のことでは泣かない。私との約束、私のこと、私に関わることで泣く。
「大丈夫よ、ヴァンツァー。泣かないで。……離れたりしないから」
右腕を、撫でる。彼はまだ顔を上げようとしない。泣き顔を見られるのが嫌なのだろう。泣き声もあげない。だから、返事はない。
宥めるように右腕をぽんぽんと叩いて、手を繋いで振り返らずにサロンに向かった。ここよりは、人目を気にしなくていいだろう。
ちょうどお茶の支度をした侍女が出てきたところだ。お礼を言って二人きりにしてもらって、サロンの中に落ち着いた。
お茶と少しの焼き菓子を前に、ヴァンツァーの方を見ないようにして並んで座る。手は、握ったままにした。
「ミーシャ、もう二度と、怖い目には合わせない」
「ダメよ、ヴァンツァー」
私は、やっと顔を上げた彼をまっすぐに見つめて、真剣な声で言った。
「私は確かにヴァンツァーが居ないと自分の身も守れないわ。でもね、ヴァンツァー。私と貴方が紆余曲折なく結婚できるようになった……つまり、貴方が貴族になった。領民と領地も大事にしなくちゃダメ。だから、その約束はしないで。私を優先してはダメなの」
ヴァンツァーの表情は動かないが、中々その言葉を承服するのに時間がかかったようだ。
私たちは黙ったまま見つめあって、ヴァンツァーは自分の中でやっと折り合いをつけて、息を吐いた。
「……分かった」
「じゃないと、私、また泣いちゃうから」
「それは、困る」
「私は貴方が居ないと何もできない。でも、貴方は私が自分でできるように待ってくれる。そんな所が好きなの。そして、これと決めたらやり遂げるところも」
私はほとんど保留にしているプロポーズへの返事のような話をしている。ヴァンツァーは、泣いたばかりだからまだそこまで頭が回らないようだ。
「でも、やり方はたくさんあるわ。お父様が今回、貴方のやり方を修正してくれたように、ちゃんとやり方があるの」
握った手を、指を絡めて握りなおす。薬指の指輪が仄かに温かい。
「ヴァンツァーがいないと私はとても困るの。貴方のためなら、勇気が出る。待っててくれるから、頑張れる。……ヴァンツァーは、私が居なくても困らないかもしれないけど……」
「それは違う」
私の話を遮って、彼は強く否定した。
「ミーシャが居ないと、ミーシャが必要としてくれないと、俺は何も為せない。どんなに力をつけるだけのチャンスがあっても、ミーシャが居なければ俺は何もしなかった」
ヴァンツァーの理由はいつも私だ。
「私たち、お互いがいないと何もできないのね」
「そういう、ことだ」
笑い混じりの言葉に、ヴァンツァーは、少し下手くそに笑って目を細めた。
この人のこの笑い方、私はとても、好き。
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