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職業:無職になりました!
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「お前、クビなwww」
「え、どういうことですか?」
ある日の朝早く、会議室に呼び出されそこで突如として向けられた言葉にアイクは驚いた。
その言葉は自身の解雇を知らせるものだった。
心当たりは全くと言っていいほどない。
アイクは別に勤務態度が悪いというわけでもなくむしろ良い方で、なんなら誰よりも仕事をこなしていると自分の中では思っている。
史上最年少だとかちやほや宮廷魔道具師になったのだが、結局実力が足りなかったのだろうか。
などと考えているうちに、上司であるグリース・ヴァルツから再び言葉を向けられる。
「だから、クビだっつってんの! 一回で理解しろよ! 」
「私が仕事でなにかミスでもしましたか?」
疑問に思い、なぜかキレている上司に向かってアイクは言葉を返す。
返ってきた答えは驚くべきものだった。
「いや別に。ただお前はもう用済みだってことwww」
そう言ってグリースは、ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべる。
「はっ? 」
アイクは全く理解できなかった。脳が理解するのを拒んでいた。用済み? …一体なんの話をしているのだろうか。
「ついでに今までのお前の手柄、全部俺がもらっておいてやったぜ。だからクビってこと」
相変わらず言っていることは分からなかったが少しづつ理解が追い付いてきた。
要するにこいつはアイクに向かって搾り取れるだけ搾り取ったからもうどっか行けよと言っているのだ。一瞬だけ、ほんの少しだけ殺意が湧いたが、もう正直どうでもよかった。
前々から嫌われていると自覚はしていたがまさかこんな理由でクビにされるほどだとは思わなかった。
嫌われている云々のことをいえばアイク自身、グリースのことが大嫌いなのだが。
ため息をついて、ゴミカスクソ上司の顔を見る。そして、「今までありがとうございました」とマイナス百億の感謝を込めて最後の挨拶をし、会議室を出る。
「せいぜい元気でな~」 などと声が聞こえた気がしたので心の中で、黙れよゴミカスクソ上司、と言っておく。最後まで癇に触る奴だった。
クビにされてしまっては、もうここにいることはできない。さっさと荷物まとめて出ていこう、という考えだけが出てきてとりあえず出ていく準備をする。準備と言っても荷物はほとんどなく、一つのバッグに収まる程度だ。
私物をいれ終え、机の上に置いてあった仕事の書類を整理しているときにふと気がついた。アイクの今いる、そしてちょうど今から辞める職場では、国からの依頼で魔道具を開発、作成してるのだが、作成している魔道具の中にはアイクしか作り方を知らないものがあったなと。
(まあ、もう関係ないしいいでしょ)
それにあのゴミカスクソ上司はなにも言っていなかったので特に問題ないということだろう。ついでに仕事の引き継ぎも大丈夫だと信じたい。
そんなことを考えているうちに片付けと荷物の整理が終わった。
同僚は二十人ほどいるが、仲のいい同僚は一人もいないので、特に挨拶をすることも振り返ることもなく出ていく。堂々と出て行ったが誰からも声をかけられなかった。
その後行く宛もなく歩き続けていたが疲れて歩けなくなり、近くのベンチに座り込んだ。
そこでようやくこれからのことに頭が回り始める。
これからどうするべきだろうか。
実を言うとアイクには家がない。というのも、ほぼ毎日職場で寝泊まりしていて、家が必要なかったのである。むしろ家賃がもったいないので邪魔なくらいだ。
家がなく仕事もない。まず衣食住を整える必要があるだろう。
とりあえず、寝るところを探すかという結論に至ったアイクは、近くの宿屋に入る。築数十年はありそうな貫禄のある宿屋だ。
幸いなことに空いている部屋があったので、お金を払いすぐに部屋に向かう。
入ると意外にも広々とした空間が広がっていて驚いた。
5000エンというお手頃価格にもかかわらず、朝昼夜の三食つく上に、この広さはかなりお得だろう。
心身ともに疲弊していたので、とりあえずベッドにダイブする。
これからどうすべきだろうか、と本日二度目の自問自答をする。
(そう言えば昔、大人になったらお店を開く~とか言ってたなあ)
と幼少期の頃の夢を思い返す。あの頃は働かずに生きていられて今思うと最高の生活だった。…多少貧しくはあったが。
宮廷魔道具師なんて職に就いてしまったのが間違いだった。国のために働きたいなんて思想は持たずにおとなしく店でもやってればよかったのに。
そこで思った。じゃあ実際にやってみるかと。ちょうど職を失ったところだし、タイミング的にもよさげな感じだ。
店を開くのには土地、施設、人などいろいろなものが必要だが、そのほとんどは金で解決できる。
アイクは子供の時に本気で店を開きたいと考えていたがお金が無さすぎて結局断念したのだ。そして宮廷魔道具師になってしまった。
しかし幸運?にも、アイクには巨額の貯蓄がある。宮廷魔道具師だった頃は休日などなく、お金を使う機会がない上に、給料だけは無駄に高かったためだ。
幼少期からの夢を叶えられる状況にしてくれたという点では、あのゴミカスクソ上司に感謝すべきかもしれない。…いや、さすがにないな。
かつての上司に感謝することなく今後の予定を立て始める。
まずは自分の家兼魔道具店となるにふさわしい物件を探す必要があるだろう。それに従業員の募集や魔道具作成時の材料の購入などやるべきことはたくさんある。
久しぶりにワクワクしながら考えていたものの眠くなってきてしまったので、今日はもう寝ることにした。
数年ぶりに手に入れた自由を実感しつつ、昼の十二時に寝るという極楽、極悪ムーブをアイクはかました。
「え、どういうことですか?」
ある日の朝早く、会議室に呼び出されそこで突如として向けられた言葉にアイクは驚いた。
その言葉は自身の解雇を知らせるものだった。
心当たりは全くと言っていいほどない。
アイクは別に勤務態度が悪いというわけでもなくむしろ良い方で、なんなら誰よりも仕事をこなしていると自分の中では思っている。
史上最年少だとかちやほや宮廷魔道具師になったのだが、結局実力が足りなかったのだろうか。
などと考えているうちに、上司であるグリース・ヴァルツから再び言葉を向けられる。
「だから、クビだっつってんの! 一回で理解しろよ! 」
「私が仕事でなにかミスでもしましたか?」
疑問に思い、なぜかキレている上司に向かってアイクは言葉を返す。
返ってきた答えは驚くべきものだった。
「いや別に。ただお前はもう用済みだってことwww」
そう言ってグリースは、ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべる。
「はっ? 」
アイクは全く理解できなかった。脳が理解するのを拒んでいた。用済み? …一体なんの話をしているのだろうか。
「ついでに今までのお前の手柄、全部俺がもらっておいてやったぜ。だからクビってこと」
相変わらず言っていることは分からなかったが少しづつ理解が追い付いてきた。
要するにこいつはアイクに向かって搾り取れるだけ搾り取ったからもうどっか行けよと言っているのだ。一瞬だけ、ほんの少しだけ殺意が湧いたが、もう正直どうでもよかった。
前々から嫌われていると自覚はしていたがまさかこんな理由でクビにされるほどだとは思わなかった。
嫌われている云々のことをいえばアイク自身、グリースのことが大嫌いなのだが。
ため息をついて、ゴミカスクソ上司の顔を見る。そして、「今までありがとうございました」とマイナス百億の感謝を込めて最後の挨拶をし、会議室を出る。
「せいぜい元気でな~」 などと声が聞こえた気がしたので心の中で、黙れよゴミカスクソ上司、と言っておく。最後まで癇に触る奴だった。
クビにされてしまっては、もうここにいることはできない。さっさと荷物まとめて出ていこう、という考えだけが出てきてとりあえず出ていく準備をする。準備と言っても荷物はほとんどなく、一つのバッグに収まる程度だ。
私物をいれ終え、机の上に置いてあった仕事の書類を整理しているときにふと気がついた。アイクの今いる、そしてちょうど今から辞める職場では、国からの依頼で魔道具を開発、作成してるのだが、作成している魔道具の中にはアイクしか作り方を知らないものがあったなと。
(まあ、もう関係ないしいいでしょ)
それにあのゴミカスクソ上司はなにも言っていなかったので特に問題ないということだろう。ついでに仕事の引き継ぎも大丈夫だと信じたい。
そんなことを考えているうちに片付けと荷物の整理が終わった。
同僚は二十人ほどいるが、仲のいい同僚は一人もいないので、特に挨拶をすることも振り返ることもなく出ていく。堂々と出て行ったが誰からも声をかけられなかった。
その後行く宛もなく歩き続けていたが疲れて歩けなくなり、近くのベンチに座り込んだ。
そこでようやくこれからのことに頭が回り始める。
これからどうするべきだろうか。
実を言うとアイクには家がない。というのも、ほぼ毎日職場で寝泊まりしていて、家が必要なかったのである。むしろ家賃がもったいないので邪魔なくらいだ。
家がなく仕事もない。まず衣食住を整える必要があるだろう。
とりあえず、寝るところを探すかという結論に至ったアイクは、近くの宿屋に入る。築数十年はありそうな貫禄のある宿屋だ。
幸いなことに空いている部屋があったので、お金を払いすぐに部屋に向かう。
入ると意外にも広々とした空間が広がっていて驚いた。
5000エンというお手頃価格にもかかわらず、朝昼夜の三食つく上に、この広さはかなりお得だろう。
心身ともに疲弊していたので、とりあえずベッドにダイブする。
これからどうすべきだろうか、と本日二度目の自問自答をする。
(そう言えば昔、大人になったらお店を開く~とか言ってたなあ)
と幼少期の頃の夢を思い返す。あの頃は働かずに生きていられて今思うと最高の生活だった。…多少貧しくはあったが。
宮廷魔道具師なんて職に就いてしまったのが間違いだった。国のために働きたいなんて思想は持たずにおとなしく店でもやってればよかったのに。
そこで思った。じゃあ実際にやってみるかと。ちょうど職を失ったところだし、タイミング的にもよさげな感じだ。
店を開くのには土地、施設、人などいろいろなものが必要だが、そのほとんどは金で解決できる。
アイクは子供の時に本気で店を開きたいと考えていたがお金が無さすぎて結局断念したのだ。そして宮廷魔道具師になってしまった。
しかし幸運?にも、アイクには巨額の貯蓄がある。宮廷魔道具師だった頃は休日などなく、お金を使う機会がない上に、給料だけは無駄に高かったためだ。
幼少期からの夢を叶えられる状況にしてくれたという点では、あのゴミカスクソ上司に感謝すべきかもしれない。…いや、さすがにないな。
かつての上司に感謝することなく今後の予定を立て始める。
まずは自分の家兼魔道具店となるにふさわしい物件を探す必要があるだろう。それに従業員の募集や魔道具作成時の材料の購入などやるべきことはたくさんある。
久しぶりにワクワクしながら考えていたものの眠くなってきてしまったので、今日はもう寝ることにした。
数年ぶりに手に入れた自由を実感しつつ、昼の十二時に寝るという極楽、極悪ムーブをアイクはかました。
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