死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ

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4.いきなりのお泊まり…?

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俺は今、嫌いな上司である瀧本樹の住むマンションの前まで来ていた。

居酒屋を出てから瀧本の家に着くまでの間、さっきの続きかのように、瀧本が質問攻め。俺は答えるだけ。それを繰り返しながらここまで来た。

(どんだけ俺の事を聞きたいんだこいつは。でも、居酒屋での発言を考えると‥‥)

質問攻めに納得は出来てしまう。

「着いたよ。あがって。」

「お邪魔しまーす!」

玄関を開けると、大量のスニーカーが並んでいた。各メーカーごとに、きちんと並んでいる。見たかったレアスニーカーもたくさん。俺、テンション爆上がり。

「うおお!すげえ! あーこれ、プレ値ついててもう手に入らないやつじゃないすか!! こっちは伝説のコラボスニーカー!あーこれ、もう再販しないやつだ!」

「好きなだけ見ていいよ。今お茶出すから。」

「あーすみません、瀧本さんお構いなく!! おっ、これもだ! あーこの配色、もう手に入らないやつじゃん!」

レアスニーカーにテンション爆上がり中の俺だが、ふと冷静になって考えてみた。初めてのサシ飲みで、全然仲良くない上司からいきなり、お前が好きだと言われて、しかもそいつは男で、今その上司の家にいる。

(うーん‥‥‥これってどういう状況!?)

「皆川、まだ軽く何か食べられそう?」

「えっ、あぁ、食べられますね! なんかあるんすか?」

「簡単なつまみでも作ろうかと。ビールも冷蔵庫にあるから。」

「マジっすか! まだちょっと腹が減ってるんで、食べたいっす! ビールもいただきます!」

俺は話しかけることもせず、瀧本の料理している姿をただずっと見ながら待っていた。
そして、ふと部屋を見渡すと、きれいに掃除されている。家具やインテリアの配置も完璧。

(さすが瀧本。イメージ通りだわ。モデルルームみたいだな。瀧本らしいや。)

「出来た。はい。」

「えっ、オムレツやんけ! これはまた美味しそうな…!」

居酒屋で好きな食べ物を聞かれ、オムレツが大好物だと答えていた。チーズ入りだとなお素晴らしいと言ったが。

「おお、チーズも入ってる!! やったぜ! 大好物!!」

「どう、美味しい?」

「うまいっすよ瀧本さん! マジでうんま!!」

味覚は正直だった。めっちゃ美味しい。嫌いなやつが作ったというフィルターを通しても、これは美味しい。

「瀧本さん、料理も上手いんすね! 普通に店とかで出してもいいレベルのオムレツですよ!」

オムレツが美味しくてビールも進んでしまう俺。

「他には何が好きなの?」

「カレーですかね! でも、ドライカレーの方っすよ! ドライカレーにチーズオムレツを乗せて食べると、これがまた美味しいんですわ!」

「ドライカレーにオムレツね。じゃあ次はそれを作ってみようか。」

「マジっすか! うわぁ、瀧本さんの作るやつならうまそうだなぁ… 是非お願いします!」

酔ってるからなのか、オムレツの美味しさに胃袋を捕まれたからなのか、俺はこいつの事が嫌いだということを忘れている。

ーーーーーーーーー

「皆川はどんなところで遊ぶのが好きなの?」

「昔野球やってたんで、バッティングセンターとか好きですよ!」

「じゃあ、今度バッティングセンターも行こうか。その後、オムレツ入りのドライカレーを家で食べよう。」

「いいっすね!!」

ーーーーーーーーー

「23時過ぎたけど、今日は泊まっていく? 今から帰るのもめんどくさいだろうしね。」

「あぁ、泊まるのもありっすねぇ~、瀧本さんが良いなら泊めさせてもらおうかなぁ~」

気付いたらまた質問攻めに戻っていた。23時を過ぎている。今日は酒を飲み過ぎた。完全に酔いが回っている。正常な判断力はすでにない。

(まぁ、帰るのも面倒くさいし、いっか! 泊まっちゃえ!!)

「じゃ、泊めさせてもらっていいっすかぁ~!!」

「いいよ。着替え用意しとくから、とりあえずシャワー入りなよ。」

「あいっす!!」

こうして俺は、嫌いな上司の家に泊まることになった……
(いやいやいや、やっぱりこれ、どういう状況…!?)

シャワーを浴びていると、少しだけ正常な判断力が戻る。

「何してんだ俺? なんか瀧本の家に泊まる流れになったけど、えっ、マジでどうしてこうなった!? 俺はお持ち帰りされたみたいな…そういう感じか……!?」

シャワーを浴びながら、思わず声に出して言ってしまう。瀧本に聞こえていたらどうするんだ。

シャワーから上がると、瀧本がテレビを見ながらくつろいでいる。
なんでリラックスしていられるんだこいつは。自分の家だからか。すると、瀧本が口を開く。

「風呂上がりの姿、男前だな。」

「はい…? あ、あぁ、そうですか……」

(褒められた…のか? 本当になんなんだこいつは……でも、嫌じゃないな。なんか気分がいいぞ。)
男前と言われて、満更でもなかった。

「皆川、そろそろ寝るか。」

「あぁ、そうっすね。風呂も入ったし、酔いも回って、今日はぐっすり眠れそうですわぁ!!」

「なら良かった。寝室はこっち。」

寝室を見ると、大きめのダブルベッドだった。

(ダブルベッドだと……こいつ、こんな感じでも付き合ってる女がいたりするのか…?マジかよ…)

「あの、瀧本さん、俺はどこで寝ればいい?」

「どこって、ベッドだけど。ダブルベッドだから、狭くはないはず。」

「はぁ!? 一緒に寝るんすか!? いやいやいや、おかしいおかしい!!」

(マジで言ってんのこの人!?……)

「俺ソファーとかでいいっすよ!!マジで!!あれ、でもリビングにソファー…なかったような…」

「イスがあれば生活には困らないからね。嫌なら床で寝てもいいけど、身体痛くなるよ。」

「くぅ…確かに… 床寝はきつい……じゃあベッドっすか…?」

「そうなるね。じゃあそろそろ寝よう。」

「瀧本さんは何の躊躇いもないんすね!?!?」

この人の思考回路は、何を考えているのかさっぱり分からないが、床で寝るの厳しいので、俺は恐る恐る瀧本のダブルベッドに入るのであった……
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