執着系男子のオムニバス【R18】

栗原さとみ

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story.5「お見合いを回避しようと画策したら別の罠にはまりました」

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「さっき、青山寧々さんって言ってたよな?東山建設の社長の息子が気に入ったから紹介してくれっていうウチの女子社員の名前って。」

 ふと、耳に入ってきた「青山寧々」という自分の名前に気づいて立ち止まり耳を澄ますと、一緒に話していたらしいもう一人の男性の声が聴こえてきた。

「そうそう、青山寧々さん。年内にお見合いをセッティングして欲しいって話してたな。部長、青山さんに彼氏がいないか確認してから返事するって答えたみたいだったけど。」

「ああ、青山さんに彼氏がいるって噂は聞いた事ないけどさ、たからってそんな話、酒の席とかでもとても聞けないよな。コンプラとかセクハラとかに引っ掛かるから迂闊に聞けないし。ま、実際に相手がいたとしてもおかしくはないな。」

「部長、まさかお見合いって言わずに呼び出す気じゃないよな?いくら東山建設の社長直々のお見合い話だったとしても。」

「いや、やりかねないな。東山建設は大口だし、ウチみたいな会社の部長なら言いなりなんじゃね?」

「そうだな、青山さんかわいそ。」

「だな、あの息子って相当遊びまくってるって噂だしな。それでいて『結婚はちゃんとした女性としたい』なんて、相当ムシがいいよな。」

「しっ、もうやめとこうぜ、この話俺達が知ってるってバレたらマズい。」

 二人は急に声をひそめた為、最後の方は何て言っているのか分からなかったが、寧々に無理やりお見合いがセッティングされそうな事は理解できた。しかも、相手の男性はかなり女にだらしない遊び人のようだ。

(うげぇ、真っ平ごめんなさいの遊び人タイプか。マズイな。……ううん、事前にわかったからかえって良かったのかも。きっぱり断わればいいんだから。知らずにお見合いの席に行かないように理由を考えておかないとね。)

 噂の本人である青山寧々は、静かに後退りしてその場を離れエレベーターへと引き返した。今はさっきの二人と顔を合わせたくなかったので、階段の利用は諦めた。
 寧々はインドアなタイプで、積極的には動かない性格な為、運動不足解消に出来るだけ降りる時には階段を使うように心がけていた。その習慣のおかげで、自分にこれから来るであろう見合い話を事前に知ることができた。

(意に沿わぬ結婚は回避せねば……)

 名案を思いつかぬまま、約束の金曜日、寧々は、同期の友人斉藤由実とスパゲティを食べながら、先日聞いてしまった内容を相談していた。

「うーん、その日は予定がありますって断り文句だけはやめた方がいいね。結婚を考えている彼氏がいるって言わないと、寧々の事だから押しきられてしまいそう。」

「そうなんだけど、由実も知っての通り、2次元にしか興味のない彼氏いない私が言っても真実味がないかなって。実際、外食するのすら久しぶりだし。」

「確かに嘘ついても多分すぐバレるよね。寧々、なんか分かるんだよ、嘘って。」

「やっぱり一度お見合いしてみてから断わった方がいいのかな。」

「いや、それだけはやめた方がいい!絶対断われなくてそのまま気づいたら結婚させられてるパターンだよ。」

「……はぁぁ…、そうは言っても嘘はつけないし、由実、どうしよう。」

「その人とのお見合いが気が進まないなら、他の人ならどうなの?実際にお見合いした後なら、真実味が出るんじゃない?」

「うーん、他の人ともちょっとなぁ。その気もないのにいきなりお見合いしてありがとうございました、お断りします、では終わらないでしょう?」

「相手の方も結婚する気がなくて、お見合いだけしてあげますって言われたらどう?」

「そんな都合のいい人いないから!」

「いる!うちの兄!結婚する気ないし、彼女もずっといないし条件ピッタリだよ。」

「え?いくら由実のお兄さんでも、ただでお見合いだけして貰う訳には……、。そっか、報酬をお支払いして引き受けて貰えばいいのかな!?」

「いいよ、報酬なんて。ちょうど今、兄に貸しがあるから。できたからって言うか。今ちょっと兄にLINEしちゃうね。」

 そう言えば前から話に聞いていた由実のお兄さんは、休みの日は家でゲームか何かしていて休日は外出している様子がないんだとか。お兄さんにも私の事は話しているようだから、私と同じような考えの持ち主なのかも知れない。

 ─ピコン
「LINE来た、兄OKだって!」

「もう引き受けてくれたの?!───わかった、それじゃ、お兄さんには本当に申し訳ないけどよろしくお願いします!」

 目の前の由実はにっこり笑ってこう言った。
「いーえ!3人のグループ作ったから。お見合い済んだら2人のやり取り結果ちゃんと報告してよね。」

 スマホを開いて見てみると、既に由実のお兄さんが参加していて、寧々も続けて参加した。

「それじゃ、今日はこれでお開きにして、後は二人でお見合い頑張って!時々報告してくれればいいからね。さて、帰ろー」

「うん、由実ありがとう。」

 ──────

 家に帰ってからLINEを確認すると、由実の兄斉藤翔矢からメッセージが届いていた。
 一応お見合いだからとの事で、本人の釣書が添付され、お見合いの場所は帝都ホテルの喫茶店ともっと砕けた珈琲店のどちらがいいか決めて欲しいという内容だった。
 寧々は、由実の兄のきちんと釣書を準備して送ってくれる所、お見合い場所を寧々に選ばせてくれる所、その丁寧な文章などに好印象を持った。

 当日待っていた男性を見た寧々は驚いて言った。
「斉藤さん…!由実のお兄さんって斉藤さんだったんですね。」

「青山さん。青山さんが高校生の時以来ですね。改めまして、由実の兄の斉藤翔矢です。」

 寧々は高校生の時クイズ研究会に所属しており、外部との集まりで他校や社会人の団体の人と接する機会があった。
 その時に一度だけ会って話したのが目の前にいる斉藤翔矢だった。
 8年も前に、たった一度きり会っただけの翔矢を覚えているのは、その時彼に対して淡い恋心を抱いたせいだ。
 当時寧々はまだ高校生でこれから受験もあり、恋愛などは遥か先の話だと思っていた。それでもときめいてしまう位、翔矢は魅力に溢れていた。

(斉藤さんがお見合い相手……!嬉し過ぎてニヤける……。しかも斉藤さんも私を覚えててくれたって事だよね?)

(ん?───喜んでる場合じゃない、斉藤さんは結婚を考えてないって話だったわ…。そりゃそうか、急がなくても黙ってても周りの女が放っておく訳ないあのビジュアル…。頭は切れるし、優しいし、あの声…。)

 寧々の頭の中が妄想でフル回転していると、翔矢はいつの間にか椅子を引いて、寧々を座らせて微笑んでいた。

「覚えてる?青山さん、高校生の時も今みたいに「ぽや~ん」としてて俺にお世話されてたんだよ。」

「え?そんなはずないです。私周りの人には結構しっかりしてるって言われてて…多分…ですけど。」

「そう?まぁ、あの時はお世話したって言っても、青山さんがバラ撒いた筆記具を拾ってあげたとか、隣の人が青山さんの机の前に溢したお茶を拭いてあげたとか、他校の男子にナンパされそうになって困っていた青山さんを助け……」
 翔矢の口を慌てて遮り、「わぁもういいです、思い出しましたから」と小さく応えた。

 そうだった。思い出した。
 当時も寧々は、翔矢を前にすると何も考えられなくなってテンパってしまうらしく、そのイベントの日の事も実はよく覚えていないのだ。覚えているのは、やたらの顔の良い、人の思考力を奪う斉藤翔矢という年上の人物がいて言葉を交わしたという事だけ。ただ、もう会う機会もないだろうという事は分かっていたので早く忘れてしまおうと記憶を無理やり閉じ込めたのだ。


 お見合いを終え無事にミッションが済んだ為、翔矢は寧々を車で送ってくれると言い、少しドライブしながらお互いの今後について話を進める事になった。

「事情が事情だから、お見合いをした後は、しばらく交際を続行する必要があると思う。お見合いが失敗した事が分かったら、次の人を紹介されかねないからね。」

「うーん、それもそうですね。」

「毎週土曜日にデートしよう。少なくとも3ヶ月は。」

「斉藤さんはそれでもいいんですか?お願いしても?」

「ああ、いいよ。そのかわりに、最初のデートコースは任せてくれる?前の日迄にLINEで予定を送るから。」

「面倒でなければお願いします。」

「今はその話し方でいいけど、徐々に打ち解けてくれると嬉しいかな。」

「!わかり…ました。」

 由実のお兄さんが初恋の相手だった事。これからその相手と毎週デートする事。色々な想いが絡みあって心臓がバクバクとして、その日はなかなか寝付けなかった。

 ──────

 最初のデートは照れながら「ベタだけど」と翔矢が考えてくれた映画を見に行く事になった。二人の嗜好に共通するジャンルのスパイもののアクション映画を選んだ。
 見終わった頃には不思議と翔矢の顔面に惑わされる事もなくなり、急速に打ち解けていった。

「この近くにクイズのイベントで使った○和会館があるから寄って行こう。俺達の出会いの場所。」

「うん、8年前ね。あそこ、高校から結構近かったんだ。」

 あの時この小ホールで出会い言葉を交わした。翔矢は大学生、寧々は高校生だった。

「クイズ研究会は高校の時だけ?」
「うん、斉藤さんは?大学の時だけ?」
「うーん、なんか嫌だな。」
「クイズが嫌?」
「違う、俺の呼び方。呼び捨てにして。」
「えぇ?それじゃ翔矢さん…とかは?」
「なんかよそよそしくない?」
「えぇ?じゃあ翔君、」
「うん、まあ、それでいいか。俺は呼び捨てしてもいい?」
「いいけど」
「寧々」
 翔矢は寧々の手をとると指を絡めてから歩き始めた。

「大抵お見合いで顔合わせが終わったら、何回かデートを重ねて、結婚してもいいか見極めるんだ。こんな感じで。」

「そうですよね。何回かデートをしてお互いを知らないと、ですね。」

「そういう事。」

 最初のデートはあっという間に終わり、これから二人は順番に交互にデートコースを考えて、毎週必ず会う事になった。
 


─────



 毎週土曜日のデートは順調に進んでいた。
(順調なんだけど……)
 紳士でスマート過ぎる翔矢に、寧々はもどかしさを感じていた。
(でも、お見合いだし。そもそも嘘のお見合いだし。翔君は結婚する気がない……)

 もうすぐ約束の3ヶ月。
 3回目のデート以降、手を繋ぎ、──キスもした。

 軽く触れた翔矢の唇の感触を思い出しながら、寧々は自分の唇をなぞった。 

 今日は寧々がデートコースを考える日だったので、「翔君の家に行ってみたい」と伝えてある。これから迎えに来るのだが、由実やご家族はこの事についてどう思っているのやら、お見合いの日以降は終了まで何も報告していない。
 チャイムの音楽が聴こえ、用意したお茶菓子の袋を持って玄関に向かった。

「寧々、迎えに来たよ。」
「翔君ありがとう。この格好でいいかな?みんな家にいるの?」
「うん、3人とも今日も明日も家にいるってさ。行こう。」

 寧々は翔矢の助手席に座り、初めて行く翔矢の自宅へと発進した。由実から聞いていた地域とは方向が違うように感じたが、楽しい会話に夢中になっているうちに、いつの間にか車は駐車場に停められていた。

「どうぞ入って。」
 静かで、とてもご家族がいるようには思えなかったが、寧々は「お邪魔します」と挨拶をしてから家の中に入った。

「みんな出かけちゃったんですかね?」

「いや、家にいるよ。ちなみにここは俺一人の家。」

「一人暮らししてたんですか?知らなかった。」

「勝手に決めて悪かったけど、お見合いの次の日の日曜日に決めて先週から借りて住み始めたばかりなんだ。とりあえずウィークリーマンションだけど。」

「そうなの?でも、ここって実家からそれほど離れてないんじゃない?勿体なくない?」

「寧々は経済観念しっかりしてるよね、嬉しいよ。でも、実家にいたら泊まっていって貰えないだろう?」

 急に甘い雰囲気で抱きすくめられて、寧々は目をそらしてしまう。

「俺は寧々の『実家に行きたい』は俺との結婚を前向きに考えているって意味に捉えている。──寧々。俺と結婚してくれないか?」

「でも翔君、結婚したくないって思ってたんじゃ……」

「今までどう思ってたのかは関係ない。今の俺は寧々と家庭を築きたいと考えている。それより寧々は?俺とお見合いしてみてどう思った?俺との結婚は考えられない?今日は断るつもりでここへ来たの?」

「断るなんて!翔君のこと好きだし、離れたくない。」 
 寧々は翔矢の背中に手を回したまま、翔矢の目を見て応えた。

「良かった。それじゃ、返事は?」

「はい。私と結婚して下さ…」

 言質をとったとばかりに翔矢は寧々の唇を奪う。これまでの触れるだけのキスとは全く違うものだった。うっとりするような、それでいて貪るような長いキス。舌を絡ませたり、咥内を探るように舌でなぞったり、愛しそうな軽いキスに戻ったり。

「これ以上続けてしまうと、せっかくキレイにしてきた寧々の服をぐちゃぐちゃにしてしまいそうだな。先に実家に挨拶に行ってからここに戻って来ような。寧々。」

「はい……」濃厚なキスのせいで、「ここに戻ってから」の意味を考えられなくなっていた寧々だったが、なんとか返事をして翔矢の実家に向かった。

 ──────

 和やかな雰囲気でご両親への挨拶を済ませ、その三時間後、翔矢の両親と由実のいる実家を出て、また、ここ翔矢の一人暮らしの部屋に戻る事ができた。

(あんなキス初めてだったな)

 翔矢がケータリングを用意している間、先にお風呂に入らせて貰っている。湯船に浸かりながら、ここへ来て翔矢からされたキスを思い返していた。
 挨拶用の服じゃ寛げないだろうと言って渡してくれたのは○ニクロのルームウェアだ。下着も含めてどうしてサイズが分かったのかは不明だが、ジャストサイズだった。 

(私の事、ちゃんと女として見れるのかな。由実みたいにスタイルだって良くないし。初めてだし。)

 テーブルに並んだごちそうを食べ終わって、翔矢がお風呂から出た後、ソファーに並んで座った頃、時計の針は21時30分を指していた。

「寧々、愛してる」「私も……」

 深いキスは、初めてここへ来た時のともまた違って甘く蕩けそうになる。翔矢の右手は寧々の服の中に入り下着の上から胸をフニフニと揉んでいる。顔中、身体中にキスの雨を降らせていく。
 そのうちにブラを外され、翔矢の手が寧々の柔肌を這って撫で上げる。胸からだんだん下へ下りて内ももを擦り、指が寧々の敏感な箇所を掠めていく。お腹の真ん中が疼いて仕方ない。翔矢の手は胸先に戻り、先端をころころと弄ぶ。喘いで腰を揺らすと、もう片方の乳頭を口に含んで舌先を這わせる。指の腹で蜜穴の周りを撫でられ寧々の蜜穴からとろっと何かが流れ落ちる感覚がした。
 目も開けていられないほど、寧々ばかりが快感でおかしくなっている気がして、翔矢の胸板を押しやった。翔矢は気にもとめずに蜜口をなぞり、少しずつ襞を分け入り指をめり込ませていく。クチュクチュと水音をたて、今まで感じた事のない快楽に蜜穴から愛液が溢れて内腿を濡らす。

「あぁ、あぁん」「寧々…」

 寧々は喘ぎ声しか出なかったが、翔矢の口からは「愛してる」「綺麗だ」「寧々可愛い」という言葉の数々が溢れている。

 けれど、しばらくすると翔矢がポツリと呟いた。

「寧々。俺、今夜はソファーで寝るから、寧々はベッド使って。」

 寧々は不安になって翔矢に問うた。
「え、翔矢どうして?やっぱり私の事、高校生の時みたいに子どもにしか見れない?」

「その逆。抱きたくてたまらないの我慢してる。寧々、初めてだろ?このままじゃ俺途中でやめられる自信がない。止まれなくなったら欲望のままに寧々の事めちゃくちゃに抱いてしまう。」

「そんなのいや。やめちゃいや。どうして私の気持ちは聞いてくれないの?私は滅茶苦茶に抱いて欲しいって思ってるかも知れないじゃない。」

 翔矢と寧々は黙ってお互いの顔を見合わせた。

「……最後までしていい?かなり痛いと思うけど。」

 寧々がコクンと頷くと、翔矢は「ありがとう」と小さく呟いて、既に反り勃った雄杭に避妊具をつけて寧々に覆い被さった。

 翔矢は「できるだけ優しくするから」と言ってから素早くキスで寧々の口をふさいだ。蜜口にぬるぬると雄杭を擦りつけ、徐々に襞の中に押し進めていく。
(痛いっ、)
 翔矢は、己の勃立に押されてずり上がった愛しい寧々の身体を引き寄せると、屹立がずぶずぶっと半分位まで挿入っていき、翔矢は膣に締め付けられる感覚におそわれた。
「ー!」あまりの痛さに寧々は声にならない声をあげたが、その痛みは中に入ってくる時の一瞬だけだったようだ。

 翔矢が揺らすようにゆっくり浅く出し挿入れをすると痛みがかなり和らいできた。        ただ、圧迫感が半端ない。指すら初めて入った狭い場所に、あんなに太くて大きなものが埋まっているのだから。

(でも良かった。無事に翔君を受け入れられた…)

「寧々、大丈夫?」

「うん、ありがとう。すごく幸せ。翔君大好き。」

「はぁ……寧々。覚悟して。」

(覚悟?)

「動くよ。」

 翔矢が最奥を突き、寧々の意識が飛びかけた。「あぁん」抜くように引き戻す動きにも快感で口許がだらしなく開く。  

 翔矢の突き上げが始まった。

───寧々は、自分の言った言葉が原因で、この後、翔矢の屹立を本当の奥の奥まで何度も受け入れ、喘がされる事になるなど、知る由もないのだった。


──────


〈翔矢Side〉

 隣で横たわる寧々の寝息を感じながら、翔矢は手の甲で寧々の頬を撫でる。

 2年も前に、妹の由実から聞いていた、会社の同期の『寧々』という名前。
 よくある名前でもないが、もしかして、と思い、態度には出さないように気をつけながら、俺は由実から『寧々』の情報を聞き出していた。
 二人で飲みに行って声をかけられても応じない身持ちの固さも好ましい。会社では真面目で病欠も滅多になくしっかり者。でも慌てるとテンパってしまう所が可愛い。   そして高校の時クイズ研究会に入っていたらしい。
 そして、極めつけが半年前。スマホに入っていた写真を見て、俺は心の中で歓喜した。

『青山寧々』
 
 大学生だった当時、見た目の良さからそこそこモテていた俺。告白されて付き合ったり、若気の至りで関係を持った女も何人かいた。 
 それなのに、クイズサークルで行ったイベントで、一度会った高校生の女の子が何故か気になって仕方がなくなった。子ども相手にどうこうするつもりはない。実際、その他の女子高校生を見ても何も感じない。 
 そのうちに、インターン、就職活動、卒論、就職と半端ない忙しさが続くようになった。
 入社してからは、仕事も平日は目一杯の忙しさ、土日は出かけるのも面倒で恋愛にかまけている余裕はなかった。 
 
 忘れた頃に聞かされた名前『寧々』
 しかも、寧々はもう高校生ではなく大人の女性だ。

 そこへ3ヶ月前に来た妹からのLINE。

「寧々とお見合いさせてあげる」

 俺は精一杯隠していたつもりだったが、妹にはバレていた。まぁ、そうか。あれだけしつこく情報収集していたら当たり前か。
 
 速攻、OKのLINEを送る。

 妹に借りができたが、そんな事は大した問題ではない。寧々と会える。俺が全力で落としにいく。寧々が手に入ったも同然だ。ブランドの服だろうがバッグだろうが靴だろうが、なんだって買ってやる。 



「……もう離さないからな。」



《終わり》

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