執着系男子の6つの物語

栗原さとみ

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story.4「怪盗ルシアンと私立探偵マリーの攻防」

 「マリー、依頼だ。怪盗ルシアンから予告状が届いたそうだ。」

 呼ばれたマリーは、立ち上がり、腕を組んでボスに尋ねた。

「ボス、今度はどこの悪人に予告状が届いたんですか?取り戻すのは、脱税したお金?それとも違法に稼いだ闇金?あとは盗んだ宝石か騙し取った美術品か……?」

「まぁ、そんなとこだが、詳しく話すからここに座れ。」

 手招きして椅子を差し出すボス。

「やっぱりなのね。はぁぁ。依頼だから仕方ないけど。仕事とは言え、盗人の悪い奴が盗まれそうな盗品を護ってやるなんて、なんか腑に落ちないなー。」

「まぁ、そう言うなって。」

「だって、ボス。ルシアンは、悪い奴から盗んだものを正当な持ち主に返したり、慈善団体や施設に寄付したりしてるみたいじゃない?……依頼人より、よっぽどいい人間に思えるんだけど?逆に奪い返されていい気味って感じよね。」

「しかしな、我々は依頼を貰って、報酬を受け取って、仕事が成り立ってるんだからなぁ。」

 世の中には、悪い事を考えて金儲けをしたり、詐欺や脱税や搾取などで高価な金品を手に入れる輩が多く存在している。そういう、後ろ暗い金品は、たとえ盗まれたとしても警察には届けられない。そんな人達から依頼を受けて、盗まれないようにしたり、取り戻してやるのも私達私立探偵のお仕事だ……とボスから言われている。

 ここのところ頻繁に依頼があるのだが、必ず犯人は同じ人物で、必ず予告状を出してきて、必ず実行して成功させている。しかも、その犯人は、盗んだものをほとんど自分のものにしてはいないのだ。
 それが、私達の追っている怪盗ルシアンなのである。

 けれど、私達は私立探偵として、依頼を受けたら、働かないと報酬が受け取れない。ここ数回は、ルシアンを追いつめるところまでは来ているけど、もうちょっとのところで逃げられてばかり。近づいてはいるが、ルシアンは目元を仮面で覆っている為その顔すら見ていない有り様だ。
逃げられてしまうのは、ルシアンが長身なのに身のこなしが軽いからか。
マリーも身体は柔らかく脚には自信があるが、あの長い脚で逃げられてしまったらとても追いつけない。

 ……というか。マリーは、探偵業は素人で、入社した為、実践での仕事は、このルシアンの仕事が初仕事だった事もあり、一度も依頼内容をやり遂げたことはないのだが。

「10戦10敗……だったな?マリー、次は何か作戦を考えないと、またルシアンに逃げられるぞ?」

「ボス、わかってるわ。次は絶対にルシアンの顔を見てやる……じゃない、ルシアンに盗られたものを取り返してやるんだから。」

「マリー、その意気だ。頑張れ。」

「ラジャー」

 マリーは、取り澄ました顔(←ルシアンの表情はわからないがきっとそうだと思っている)で悠々と盗み去ってゆくルシアンを、慌てさせて、捕まえて。そして、捕まって悔しがる顔をじっくり見てやろうとニンマリした。

 ───────

 今度の怪盗ルシアンのお目当ては、「貴婦人の碧い涙」という宝石だ。

「さて、どうやってルシアンを慌てさせたらいいんだろ?あの男、なんかクールで、スかしてるのよね。」

 前回追い詰めた時は、仮面越しだがはっきりと顔がわかる距離まで近づいた。そして、声まで聞いた。

「お前、読みはなかなかいいけど、俺を捕まえるのは無理じゃないかな。もういい加減諦めて、探偵なんて辞めたら?」

 スラッとした長身。サラリとした黒髪、スッとした鼻。薄い唇から出るセクシーなイケボ。
 マリーは、ぶんぶんと頭を振った。
 (くっそー。私の事バカにして……!
 イイ男を装っているけど、仮面を外したら案外そうでもなかったりして。)

 (そう言えば、この前、私の服の袖が破れて、ルシアンが私の二の腕に触れた時、ちょっとビクッとしてたような気がするのよね?実は、仮面の下はブサイクで、全然女慣れしてなかったりとか?
 …はぁ、時間がないわ。なんかいい手は浮かばないかなぁ。)

 マリーは、ああでもない、こうでもないと考えをめぐらせた。

 ───────

 そんなこんなで、とうとうルシアンの予告した日がやってきた。

 どんなにセキュリティを完璧にしても、どうせルシアンにそれを破られて侵入され、目当てのものを奪われてしまうのは防ぎようがない為、奪われた後、また取り返すという方法をとる事にした。

 マリーは、侵入経路と逃走経路が一つしかない事は事前に確認していた。ルシアンが盗みを成功させて、逃走するまでは様子を見る。逃走途中のこの公園でマリーは待ち伏せし、ルシアンが近づいたら、マリーの罠により油断させた隙に拘束して取り返すという作戦だ。
 今まではこちらも変装して追っていたから顔はバレてない。一般人のふりをして接触しても問題はない。

 マリーの読みは大抵当たっている。今まで捕まえられなかったのは、ルシアンの逃げ足が早かっただけだ。

 もう少し先に分岐点があるので、きっとルシアンはこの公園あたりで仮面を取るはず。まさにこの遊具なんて、人が隠れるのにちょうどいい。怪しまれずに、長い時間隠れて待っていられる。
 マリーは、石製の大きな滑り台の中に入ってルシアンが現れるのを待つ事にした。

 ───────

 案の定、仕事を終えたルシアンらしき長身の男が悠然と歩いてくる姿が見え、マリーは深呼吸をしてから遊具を出て公園の出口へ向かった。

 ───────

「きゃっ、痛っ」
 公園の出口で、マリーは躓いて転んでしまった。勿論わざとだ。

「大丈夫ですか?」
 長身の男が、手をついてかがんでいる女性(マリー)に手を伸ばそうとすると、彼女の胸元が大きく開いて、ポロリと白く柔らかそうな膨らみが見えた。

 (どう?私の美乳。女慣れしてないブサイクなルシアンの慌てた顔を見てやろう。それで、この粘着テープで拘束して……)
 マリーは、テープを取り出して男の顔を確認しようとした。

 ……はずだった。

「……へ?」

 マリーは、なぜか一瞬のうちに後ろ手に縛られていた。
 自分が用意した粘着テープは奪われて、逆に自分が拘束されてしまっている。

「なんでぇ?」

 マリーは、顔を上げて目の前にいる男の顔を見た。
「…ルシアン?」

 仮面をしていない、精悍な顔立ちのすかした長身の男性がいた。

「ご名答」
 ルシアンは、フッと笑ってマリーを担ぎ、先ほどの遊具の中へと運んだ。

 (聞いてない、聞いてない!こんなイケメンなんて。)

 マリーは、慌てて胸元を整えようとしたが、両手はしっかりと拘束されていて動かせなかった。

「ル、ルシアン、外して!お願い」

「そんなお願い、聞くと思う?」

 ルシアンは、スルッとマリーの服を剥ぎ取り、指先でブラの肩ひもをずらした。

「ひぁん……」

 ルシアンの薄い唇が近づいたと思った途端、マリーの胸の尖端を口に含んだ。

「馬鹿だな。こんな美味しそうなもん見せられて、そのまま返す訳ないだろ」

 舌で転がすように散々味わってから、胸に顔を埋めて息を吸い込んだ。
「最高」

「ん、ん、んふぅぅ……」

「ほら、口開けて」

「ん…ん…」

 胸を堪能した後は甘いキスをいただきますとばかりに唇に吸い付き、舌を入れた。柔らかい胸を両手で楽しみながら。

「胸も口も最高」

「あ、ぁ、ぁ、」

 両頬をおさえつけていたルシアンの手が、いつの間にか離れて、下の方からくちゅくちゅと水音が聞こえてきた。

「ん、ん、あぁ、ぁ、ん…」

「エロいな」

 キスをされながら、密口に指を出し入れされ、マリーは喘ぐ事しかできない。

「まいったな」

「ルシアン…、やぁ、ぁ、ん…」

「胸舐めてお仕置きして解放しようと思ったけど。」

「あっ、あっ、ああん、ダメ、止まって…」

「挿れていい?」

「ダメ、挿れちゃ、ぁ、ぁん」

「ダメ?スゴい、トロトロだけど、」

 くちゅくちゅというより、ぐちゅぐちゅという耳を塞ぎたくなるような音が、しんとした公園の遊具内に響いている。
 マリーは、恥ずかしく思いながらも、ドストライクのイケメンの顔面をチラリと盗み見ていた。

 (誰よ、案外ブサイクかもなんて言ったのは。…私よね。ヤバい、好み過ぎる…。顔面偏差値高過ぎ…、こんなのダメ、感じちゃう…
 それに、この声。私の好きな人の声そっくり、声でもっと感じちゃう!
 それに、この香り。私の好きな香り、嗅いだことがあるような……やっぱり感じちゃうぅぅ)

「ごめん、やっぱ挿れる。胸舐めたら、止まれなくなった。ヤバい。無理。」

「ん…ダメ…ルシアン…」

「ホントにダメかな?ダメだったら本気で突き飛ばしてみて」

 ルシアンは自身を取り出すと、ぬるぬると割れ目に擦り始めた。擦れて気持ちがいい。マリーの心のどこかでルシアンのことを好きな気持ちがあったのかもしれない。
それにルシアンはなぜかよく知っている誰かに似ているような感じがして仕方がないのだ。

「く、気持ちいい」

「ん…ルシアン…ぁ、ぁん」

「スゴい濡れてる、挿入しちゃいそう」

「ダメ…ぁ、ぁ、ぁ、ぁん」

「責任は取る、本当に挿入っちゃいそう、くっ、挿れるよ」

「ん、んんーー、ぁん」

 ものスゴい質量が挿入されてきて、何度も何度も突き上げられた。
「俺を誘惑しようとするからこうなったんだよ?」
「マリー、ずっとこうしたかった。……気持ちいい」
「可愛いマリー」
「トロットロ」
「もうちょっといい?」
「マリーのここスゴい」
「良すぎて腰止まらない」
「マリーのこともう離せない」
「俺、マリーに告白された事あったよね。」
「3年待ったからね、もう充分でしょ?」
「たっぷり射精したからね、責任取るし問題ないよね」
 ルシアンの言った言葉の中にはよくわからないセリフもあったし、聞き取れない箇所もたくさんあったが、耳元でいろんな愛の言葉を言われていたような気がしていた。

 相手が、ずっと追っていた正義の味方の怪盗ルシアンだからなのか、単に好みのイケメンだからなのか、どこか知っているような落ち着くようなすがりつきたい頼もしい雰囲気があるからなのか。
 ────懐かしい香りのせいなのか。

 ただひたすら奥を突かれ、気持ちよくて、とろかされ、喘ぎまくり、イき続け……。

 かなりの時間、揺さぶられ続け、ドロドロのぐちゃぐちゃになった。

 気持ちよさの中、そんな記憶が、マリーの頭に残った。

 そして、最後に優しく抱かれた後、温かい毛布にくるまれて、深い眠りについた。

 ───────

 ───────

 ───────

「マリー、目が覚めた?」

 目が覚めたマリーは、ベッドに寝かされていた。脇に座ってため息をついているのは、なんとボス。

「なんでボスが?…ここは?」

「私の家だ。」

「ボスの家?!うそっ?!」

 キョロキョロと周りを見て、自分の着ている服に目を落とす。

「あの、この服は?ボスって奥様は?ご家族は?」

「妻なら、子どもが10歳のときに亡くなったよ。その服は私が用意した。マリーの為に。この部屋も元々用意してあった。馬鹿な子ほど可愛いってよく言うでしょ?はい、ホットミルク。飲みなさい。」

「?!」
 マリーは、ボスの家族の事や、部屋と服を用意してくれた事などに驚いて声が出なかった。

 (あれ?ルシアンに色々されたのは、もしかして夢!?……)

「ボス、私、確か昨日、ルシアンを……。あれは夢だったのかなぁ。」

 ガチャっとドアが開いて、長身のイケメンが入ってきた。

「夢にしちゃうなんて、ひどいな。あんなに愛し合ったのにさ。」

「ルシアン?!」「……ルシアン…」
 高い声をあげたのがマリー。
 低い声で呟いたのがボスだ。

「何言うの!ボスがいるのにぃ」
「恥ずかしい事を言うな、我慢のきかない馬鹿息子め。マリーもこんな息子を好きになってお馬鹿さんだが、ルシアンの馬鹿さはタチが悪い。親として申し訳ない。ルシアン、マリーにきちんと謝りなさい」
 またもや、マリーとボスの声がかぶり、マリーは更に高い声をあげる。

「む、む、息子ぉぉぉ?!ルシアンがボスのぉーー?」

「マリー、身体大丈夫?……親父、知ってるだろ?我慢ならずっとしてたさ。3年もね。3年も我慢していたのに、昨日はマリーが色っぽく誘惑してくるからさ、つい、ね。」

「ルシアンがボスの……息子……?だってルシアンは怪盗で……ええッ?」

 マリーは、ボスとルシアンを見比べた。見慣れたイケおじでダンディなボス。ルシアンにはその面影が確かにあった。親子……だと言うなら親子なのだろう。

 (頭を整理しなきゃ)

「私……、一度、家に帰ってお風呂に入って着替えてきます…!ん?んふぅ…、や、やだぁ」

 そう言って起き上がろうとすると、ドロドローっと、大量の精液が流れ出てきた。マリーの頬はりんごのように真っ赤に染まった。

「あぁ、急に動くから。注いだものが出てきたんだろ?」

 クスっと笑うルシアンに、更に茹でダコのように真っ赤になるマリー。

「だって…。……ぇえ?待って。…まだ、何か入ってる?何か…、スゴーく太ぉーいモノが挟まってるみたいだけど…?」

「……」
「……」

 頭を抱えるボスと、ちょっと恥ずかしそうな顔になるルシアン。

「…天然かよ。」

「マリー。もう何も入ってはいないだろうが、昨日は馬鹿息子がだいぶ無理をさせたようだ。悪かったね、謝るだけじゃ済まないが私にも責任がある。
 息子から連絡をもらって、疲れて眠ってしまったマリーを、私が車で迎えに行ったんだよ。だから今日はもう、何も考えずに、ここで安心してゆっくり休むといい。」

「ボスが…車で…迎えに?あの後?…ぃゃん」

 マリーは両手を頬に当てて恥ずかしがった。いや、でも、恥ずかしがってる場合ではない。

「って事は、ボスは最初からルシアンの正体を知ってたのね?」

「それも悪かったね。でも、今回でルシアンの仕事は最後のはずだったんだ。こんな事続けていられないからね。捕まえられずに終われると思っていたのに、馬鹿息子が自分から正体を明かすとはね。」

「そんな事……」

「俺だって、ほとぼりがさめたら、素の姿で、自然な形で知り合って付き合うつもりだった。マリー、覚えてる?昨日の夜言った事。」

「昨日の夜…?」

 (気持ちいい…とか言ってだけど、まさかそれじゃないわよね?なんだろ。全然わからないわ)

「マリー、俺と結婚して欲しい」

「け、け、結婚?結婚って、あの結婚?だって、私達、つき合ってもいないのに……!?」

「マリー。勤め始めてからずっと、一人の先生について、変装や尾行や基礎や護身術を学んでいたの、覚えてるよね?」

「そりゃもちろん覚えてるわよ。ヒゲで40代か50代位の優しいステキなおじ様の先生で、私の初恋だもの。
 めちゃめちゃ好きで好きで。3年間片思いして告って。結局玉砕しちゃったけどね。…でも、突然どうしたの?なんでルシアンが探偵の先生を知ってるの……?」


「種あかしの前に、ちょっとコーヒーを入れてくる」

 ──────

数分後


「コーヒーを入れてくる」と言って部屋を出たルシアンが、ガチャリとドアを開けて戻って来た。

 ……と思ったら、入ってきたのはルシアンではなくて、さっき噂をしていた、マリーの大好きな「探偵の先生」だった。
 先生は、持っていたコーヒーをテーブルに置いてこちらに歩いてくる。

 マリーは思わず叫んだ。

「先生っ!!」
 飛びついてきたマリーを抱きとめ、優しく頭を撫でる先生。
「マリー」
「せんせぃー」
 マリーは、長身の先生の広い胸に顔を埋めて、懐かしい大人の香りを吸い込んだ。
 (はぁ、懐かしい、セクシーな香り。
 これよ!これ。大好きな先生。私の初恋…、)

「え……?」

 (懐かしい……懐かしいんだけど……。)

「あれ…?」

 昨日、散々、夢中でしがみついていた胸と、全く同じだ。同じ身体、同じ香り、同じ声、同じ瞳…。

「……ルシアン?」

 先生は、マリーを受け止めながら、マリーの手を取り、マリーの手の甲に恭しくキスを落とした。

「そうだよ、マリー。」

 変装を取り、昨日の姿になるルシアン。

「うそっ?探偵事務所の先生がルシアンだったなんて……」

 唖然とするマリーに、更に追い打ちをかける声。

「マリー、そもそもうちは探偵事務所じゃないんだ。」

「?ボス?一体何、言ってるんですか。私、もう、3年も探偵として勤めてるじゃないですか。」

「ウチは、本当は、外国為替の取引から株の売買や投資などまで、手広く資金を運用し増やしている会社で、探偵事務所ではないんだ。私と息子の二人で充分儲けを出している、金融会社なんだよ。」

「なんでぇ?だってだって、面接に来て、ボスにどんな仕事がしたいかって聞かれて、今は何もできないけど、私…探偵になりたいって言って……」

「うん、うん、だから、探偵やってみるか?って聞いたら、やってみたいってマリーが言うから。ちょうど、息子はなかなかセンスが良かったので、探偵の先生役を頼んでみたんだが?うちは探偵事務所ではないし、……まぁ、同じビルの中の探偵事務所と間違って応募してきたのだろうとはなんとなく思っていたが、面白い娘だったからついつい……ね。」

 マリーは、あいた口がふさがらなかった。

 (…そもそも探偵事務所じゃなかった?)

「……3年も……全然…気がつかなかった…!確かに、研修ばかりで、実践で一度も成功報酬は貰えなかったけど、ボスはちゃんとお給料をくれて、3年間きっちり、私に探偵の先生をつけてくれてて、ぁぁぁぁぁ……」

「そこはごめん、マリーが一生懸命で、可愛くて、楽しくて、言い出せなくなって。マリーが探偵やってる姿をずっと見ていたくなっちゃったんだよね。」とボス。

「俺もごめん。マリーに告白して貰って凄く嬉しかったけど、あの時は探偵の先生に変装してただろう?だから、マリーが探偵としてやっぱり無理だって諦めた所で、本当の素の俺の姿で知り合ってから改めて付き合うつもりだったんだよね、予定では。ハハハ。」とルシアン。

 (なんてこと……!)

 (怪盗ルシアンがイケメンで…イケメンがボスの息子で…ボスの息子が探偵の先生で…探偵の先生が私の初恋の相手で…私の初恋の相手との初めてがなんと野外の公園………)

 呆然としているマリーに、ルシアンは更に続ける。

「3年我慢したのにな。俺もそこは反省してる。でも、マリーも悪いよ。俺以外の男に胸を見せて誘惑してるって思ったら、舐めたり揉んだりして懲らしめてやろうって思うだろ?それに、あんな美味しい胸舐めたりしたら、もっと色々したくなるだろ?そうしたら止まれなくなるじゃないか。だって3年も抱くのを我慢していた好きな子の中に入れたんだし。それに、マリーは俺の事が好きで告白してくれた訳だし。だから俺も愛してるって返事して、結婚を申し込んだんだよな。それで、マリー。プロポーズの返事をくれないか。」

 口をぽかんと開けているマリーに、ルシアンは真面目な顔でそう告げたのだった。






 ───────



 ──半年後

 ブラインド越しに太陽の光が射し込むオフィス。事務所のデスクを拭いているマリーに、声をかける人物。

「マリー、依頼だ。」

「はい、ボス!どんな依頼です?初報酬ゲットに向けて、私頑張ります!」

「その意気だ、頑張りなさい、マリー」

 ルシアンのプロポーズから半年、探偵としてこの会社に勤めるマリーは、まだ一度も依頼を成功させた事はなかった。というか、そもそも依頼を受けた事がなかった。

「立派な探偵になれたら結婚する」というマリーの意向を尊重し、ボスは、「金融会社」兼「探偵事務所」を立ち上げ始めた。
 
 信用も実績もない探偵事務所──。

 待てど暮らせど、依頼はなかなか来ず、立ち上げ半年後の今朝、やっと、最初の依頼が入った所だった。

 依頼が入り、ボスの目の端には、マリー以上に力の入っているルシアンが、うつった。

 結婚のかかった初めての依頼だ。

「はい、まかせて下さい!どんな手を使っても必ず成功させますから。」

「……『どんな手を使っても』?」

 ビクッとルシアンが肩を震わせる。

「はい、そのつもりですけど?」

 ボスとルシアンは顔を見合わせる。

「絶対駄目ーーーーー」
「絶対駄目ーーーーー」


 ボスとルシアンの魂の叫びが、室内にただむなしく響くのだった。





『完』
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