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6・師匠のお役にたてるでしょうか(後編)

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「お二人さん、おはよう。」
「「おはよう(ございます)」」
沢山の食材を持って、フランクさん(例にもれず熊さんみたいな大男)が訪ねてきた。

「わー!美味しそうな野菜がいっぱい。」
トマトや茄子、ジャガイモなどのお馴染みの野菜のほか、あまり見たことのない花や野菜、果物らしきものが並んでいて、うっとりと見つめた。
「この野菜はどうやって食べるんですか?」
「これはビートスといってゆでたり焼いたりすると甘さが出て美味しくなるんだ。」
「フランクさん、凄く瑞々しくて調理するのが勿体ない位ですねぇ。」
「嬉しい事を言ってくれるね?レナは本当に男の子なのか?うちの娘の方がよっぽど男らしく見えるなぁ。」
「娘さんは何人いるのですか?」
「22歳と20歳の2人だ。まだ花嫁修業中でな。」
「そうなんですね。これらを使ったお料理などが知りたいのですが、次に来て頂く時にレシピと材料を持ってきて貰う訳にはいかないでしょうか?」
「ああ、いいぞ。女3人、暇をもて余しているから丁度いい。」
    フランクさんは豪快に笑って言った。
「レナは異国育ちだから助かるよ。」
カイも助け舟を出してくれた。
「フランクさん、ありがとうございます。」
「ああ、こちらこそよろしく頼むな?」
フランクさんは、右手を出して握手を求めてきたので、レナは右手を握りぶんぶんと動かして握手を交わした。
「ひゃぁ、柔らかい手だな。ますます女の子みたいだな。じゃあ、また来週な。」
「はい、よろしくお願いしまーす。」

・・・

    何だかカイが少し不機嫌な顔をしているように見える。カイの為に美味しい料理を作ってあげたいと思い、色々なお願いしたのが悪かった…?でも、あの時は嬉しそうに見えたのに…。

「…師匠?具合でも悪いのですか?」
僕は、精一杯背伸びして、カイの額に手を伸ばして、熱がないか、確認しようとおでこに触れた。
    その時足元がグラッとしてしまい、カイの胸に抱きつく形になってしまった。すると、カイは何故か、うわっと声をもらし、片足を下げると、丁度後ろにあったソファに膝かっくんされたようになり、僕の腰に腕を回して抱き寄せながら僕ごと背中からソファに倒れ込んだ。
    僕の顔はカイの胸に、胸はカイの腰の辺りに押し付けるように、カイに覆い被さってしまった。そうだ、カイの具合は?と顔をあげると、やはり赤い気がした。
    ずりずりとはい上がり、顔をカイに寄せて、もう一度おでこに手を当ててみた。
「熱はなさそうです。師匠、良かったです。」
安心して力が抜けて、カイの胸の上で息をついた。
「くっ。」
    耳元でカイの声が聞こえたが、カイの身体の感触が心地よく、なんとなくこのままくっついていたくて少しの間目を閉じた。
「膨らみが…っ」カイも何やら呻いた後、ふぅ、と息をはいて、そのまま抱きしめていてくれた。カイの少し早い心臓の音すら、不思議と心地よく感じて、カイが出かける迄の少しの時間この初めての感情を楽しんだ。
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