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7・薬師兼治癒回復師を目指そうと思います

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    カイが仕事に出かけた後、僕は料理の下ごしらえに取りかかった。今のところ、僕に出来る事と言ったら料理位のものだ。
    葉ものは傷みやすいので、茹でて冷凍しておく事にした。それに、今日は果物も沢山あるので、デザートまで作れそうだ。元の世界では、老後まで独身であると想定していたため、自分が好きな料理には自信がある。
    カイはどんな料理が好きなのかな、甘いものは食べるのかな、とカイを思い浮かべながら料理を作っている自分の表情がどんなものだったのか、この時は全く自覚してなかったのだけど、後から思えばかなりピンク色だったんだと思う。

・・・

「今日の夕食も旨かった。ありがとうな。」
そう言って僕の頭を撫でたカイが、少しビックリする事を言い出した。

「レナの魔力が少しチャージされている。」
「本当ですか?!」
「ああ。実を言うと、朝出かける時には気付いていたんだが、ほんの少しだがチャージされていた。」
「朝?」
「ああ。フランクと握手をしてただろう?あの後ほんの僅かにチャージされているのに気付いた。」
「握手?!」
「その後俺と触れあっただろう?その後もチャージされていた。そして今、レナの頭に触れた後も。"誰かに触れられるとチャージされる"で間違いないと思う。」
「私、"触れられてチャージ"なんですか?」
「恐らくな。それで、今日は王立図書館で過去の歴史を調べてきたんだが、異世界からきた者がやはり治癒の魔法を持ち、"触れられてチャージ"、"触れて治癒"の魔法を操っていたそうだ。その者が魔法を使う時には、同時に薬を用いていたようなんだ。薬を塗り、もしくは服用し、触れて、治癒させるという施し方だったようだ。」

「僕も同じ可能性があるって事ですか…?」
「ああ。俺としてはレナが魔法を使えなくてもこのまま家に居て貰って構わないが、もし、薬師と治癒回復師を目指すなら、俺と一緒に王宮で学びながら勤める事も出来る。レナはどうする?」

「昼間も師匠と一緒に居られるという事ですよね?僕、薬師と治癒回復師になりたいです。」
「そうか。わかった。明日から一緒に仕事に行こう。それから、毎日チャージもしよう。握手でもいいし、顔や別の場所に触れる、でもいいんだが、どこに触れると一番効率良くチャージ出来るかはまだわからないな。」
「色々な場所に触れて貰って調べるという事でしょうか?」
「レナが嫌なら勿論触れないが?」
「嫌なんて事、ないです!」
「時々触れて確認しても?」
「はい、触って下さい!」
・・・今の痴女っぽくないか?僕…。

「じゃあ早速触れるぞ?」
    そう言って右手で僕の左頬に触れた。・・・チャージしてくれているのはわかるが、なんだろう、この気持ち…。
「さっき頭を撫でた時よりチャージの量が多いようだ。」
「ホントデスカ?」…なんだかカタコトになってしまった。
「もう一ヶ所触れるぞ?」
そう言って、今度は肩の辺りに触れた。
「頬に触れた時より少ないみたいだな。洋服を通しているからだと思う。」
「洋服を?」
「ああ。色々触って悪い。本当はもう一ヶ所触れてみたい所があるんだが、多分嫌だと思うから、暫くは頬に触れてチャージしよう。」
「はい、でも、触れてみたい所ってどこなんですか?」
「口の中だが?」
「口の中だと何故嫌がると思ったんですか?」
「何故って…嫌だろう?」
「嫌じゃないです。どうぞ触れてみて下さい」

そう言って僕は口を少しだけ開けた。カイは、中指を口の中に入れて、舌の先端に優しく触れた。すると、僕はお腹の奥が痺れたように感じて思わず口を閉じてしまった。カイの指を濡らしてしまったので、一応ちゅうちゅうと自分の涎を吸ってから離した。
「レナ…!」
少し慌てた様子だったが、すぐに元に戻り、言った。
「チャージ量が多い。"粘膜体液に触れると多くチャージされる"で間違いないと思う。」
「じゃあ、時々今みたいにすれば、いっぱいチャージ出来るんですね!」
「レナが嫌でなければだが。」
「嫌な筈ないです。師匠こそ嫌でなければ、よろしくお願いします。」
「ああ。俺だって嫌な筈がないだろう。」

    こうしてカイは、時々僕の頬を触ったり、口の中に指を入れたりする事になった。そして、明日からはカイと一緒に王宮へ仕事に出かける事に決まった。
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