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8・まずは薬のお勉強からです

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    翌朝、僕は起きるとすぐに顔を洗って、念入りに歯磨きをした。カイの指を汚す訳にはいかないし。

「レナ、おはよう」
    起きてきたカイは、そう言いながら、両手で僕の頬を包みこんだ。
「っ!…おはようございます。」
    左手を頬に置いたまま、人差し指で唇をなぞり始めた。
「し、ししょ…」
師匠、と言おうと口を開くとカイの指が入ってきた。やっぱり、お腹の奥が変な感じがしてしまい、またちゅうちゅうとカイの指を吸ってしまう。唾液が止まらず、口を離したら糸を引いてしまいそうで、夢中でカイの指を舐めてしまった。
「っ、レナは子ども…レナは子ども…」
カイが何か呟いているのを遠い意識でぼんやり聞きながら、指をしゃぶっていると、今度ははっきりとした口調でカイが言った。
「レナ、そろそろ飯食って仕事へ行く準備をしないと。」
「あ、そうですね。おかしいな、僕、どうしちゃったんだろう。ボーッとしてきて…。師匠、ご飯食べましょう。」

・・・

    王宮に着くと、すぐにカイの執務室に行った。
「はぁ、すごいですねぇ。師匠はいつもここでお仕事をしているんですね。」
「ああ。俺は治癒回復の魔術は使えないが、薬師の資格はある。まずは薬についての勉強から始めよう。」

    大学に行く時に、僕が本当に行きたかったのは実は薬学部だった。ただ、高1の秋、文系にしか選択肢がなかった。数学がズタぼろだったからだ。薬剤師は諦めるしかなかったけど、登録販売者の資格位は取れるかと、薬の勉強をする位には薬に興味があった。だから、今回薬の勉強ができて、単純に嬉しい。

    薬の勉強は、好きな分野だけに、かなりすんなり頭に入ってきた。薬の配合も、お菓子作りと似ていて、きちんと計量用のスプーンやカップ、秤を使って行う。そう言えば、家にあった調理道具は、ここにあるものと同じだ。教えて貰いながら、何種類かの薬を配合した。
    時々チャージも兼ねて、カイは「えらいぞ」と言いながら、イイコイイコと頭を撫でる。気持ちいいし、嬉しいけど、罪悪感もある。いつかは本当の年齢を打ち明けないと…と思っていると、ノックの音が聞こえた。

「レオンだ。入るぞ?」
「ああ。どうぞ。」
「お、その子が例の子だな?成る程可愛い子だな。」
    僕は騎士風の若い男の出現に、三歩後ずさりした。
「はじめまして、僕、レナです。」
「恐がらなくていいって。俺は女の子が大好きだから、男の子は襲ったりしないよ?」

「レオン、子どもをからかうのはやめろよ。」
「ごめんごめん、恐がらせるつもりじゃなかったのにな。今日から弟子の男の子が来ているって聞いたから挨拶に来ただけなんだ。騎士団は何かと世話になるかも知れないからな。」

「レオンさんは騎士団の方なんですね?僕、早く一人前になってお役にたてるように頑張りますので、よろしくお願いします。」
「おう、心強いな。ところで、カイ、また家に遊びに来てくれよ。カイ様カイ様って妹がうるさいから。」
「いや、悪いがそんな気はないから。」
…師匠はやっぱり女の人にモテるのね。

「そうかぁ?残念だな。妹、巨乳なのに。まあいいや、それとは関係なしに二人で来れば?それじゃあ、もう行くからな、またな?」

「…きょ、巨乳…?」
「どうした?変な顔して。…レナ?」

    考えてなかった…!僕の胸は多少膨らんでいる程度で、お世辞にもナイスバディとは言えない。
「し、師匠はどんな女性が好きなんですか?」
「なんだ?突然。…そうだな、何にでも一生懸命な子とか、か?」
「そうなんですねぇ、一生懸命…。」
    僕は少しホッとした。…ん?ホッとしたってどうしてだろ?僕は邪念を振り払うように、ぶんぶんと頭を振って言った。
「師匠、次の授業お願いします!」
    取り敢えず、一生懸命勉強する事にした。

    詰め込むように、色々な薬の成分、配合、効能などを学んだ。勿論覚えられたのは僅か一部分だけだけど、この執務室には本や乾燥薬草の粉、抽出した液体、と様々なものが用意されていた。そして、その都度足りないものを取りに行くのも仕事の一つのようだ。
    今日学んだのは、ほんの入り口部分かも知れないが、将来、怪我や病気で苦しんでいる人達の助けになると思うと、俄然やる気が湧いてくるのだった。
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