機械の神と救世主

ローランシア

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第三章 亡国の姫と王国の剣

034 救世主と協力体制

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ガーベラをレティシアに着替えさせてもらった後、レティシアにもある程度事情を説明し、色々と伏せてもらう事になった
元破滅の王の軍勢に所属していた者同士、そのあたりは理解をしてくれて助かった

エルト王城 第一会議室

陛下にガーベラの事情を話しガーベラの部屋をどうするかという話し合いをしていた

「ガーベラ様のお部屋ですが、救世主様のお部屋の右隣でよろしいでしょうか?」
「はい。構いません、ありがとうございます。陛下」
「いいえ。お父様」
「ソフィア?どうしたのじゃ?」
「レティシアさんのお部屋の向かいのお部屋も空いておりますわ。そちらにしましょう」
「ええと、そちらでよろしいですかな?ガーベラ様」
「は、はい……」
「はい、ありがとうございます。陛下」

ガーベラは人見知りするらしく俺の影にずっと隠れて服の端をずっと掴んでいた

「ほっほっほ!とんでもありません。救世主様……ああ、東条様……。
三人目の救世主様が我が国に協力いただけるのです。こんなに喜ばしい事はありませんよ。
ガーベラ様?気兼ねなく我がエルトで過ごしてください。……おい?すぐにお部屋を用意して差し上げろ」
「ハッ……」

「あ。ありがとう、ございます……」

陛下が滅茶苦茶上機嫌だな。今日。いつにもましてニコニコしてるぞ
≪ただでさえ戦力が不足しているこの国ならなおさらありがたいでしょうね≫

「司様……?随分、可愛らしい女の子ですね?」

ソ、ソフィア!?目だけが笑ってないよ!?
顔だけニコニコしながら俺の服を掴むガーベラの手にガンつけるのやめよう!?
ガーベラがさらに縮こまっちゃうから!

「ソフィア……?今君が考えてる事は誤解だよ?」
「ええ、ええ。わかっていますとも。司様は「私が一番」ですものね?」
「うん、そうだよ」

ソフィアがわざわざ「私が一番」の部分を誇張し話しながらガーベラを見ながら言う

「あっ……えっと、あの……わっ、私は……うぅ……と、東条ぉ……?」

言ってガーベラが俺の後ろに隠れて、さらにギュっと服の端を掴む

え、ちょっと!?ガーベラさん!?ウッソだろお前!?もしかしてコミュ症なの!?
人の体に8本も矢突き刺すコミュ障とか聞いた事ないぞ!もっと頑張って弁明してくれよ!?
自分と俺はそういう関係じゃないってハッキリと言ってくれよ!?

≪マスターやレイザーさんは初対面の時が敵対関係だったから大丈夫だったんじゃ……≫
そんなカテゴリ分けってある!?

え、そのコミュニケーションって

普通だと……

「こんにちは、今日はいい天気ですね」
「こんにちは。そうですね、今日は暑いくらいです」

これが

無言で弓で矢を放つ
(意訳・こんにちは、今日はいい天気ですね)


相手に矢が突き刺さる
ザクザクザクザクザクザクザクッ……!
「カハッ!?」
(意訳・こんにちは、そうですね。今日は暑いくらいです)

こうだろ?

異文化コミュニケーションにも程があるだろ!

「あ、あの……!」

おっ!?そうだ!頑張れガーベラ!ソフィアに俺らはそんな関係じゃないとガツンと言ってくれ!

「……はい?なんでしょう?ガーベラさん……」
「あの、私と東条の事を疑ってるのなら勘違いだ……です」
「……へぇ?じゃあ、どのような関係なのかお聞きしても?」
「えっと、東条は私が忠誠を誓った主だ……!です」
「……忠誠?主?」
「そっ!そうです……」
「司様?どういう事でしょう?忠誠とは……主とは……」

ソフィアがゆっくりと俺の方を向き見据える

「あ~……えっとね?助けた時にすごい恩を感じちゃったらしくって、なんか忠誠を誓うとか言い出してね」
「……なるほど」

「はっ!?そっ、そうだ!?」
「「え?」」
「東条は私のご主人様だ!」

ガーベラあああああ!?レティシアの真似しなくていいんだよ!
ただでさえ今のお前は超絶美少女なんだぞ!?余計な誤解を招くような事すんじゃねーよ!!
何ちょっとドヤ顔で「私いい事言ったでしょ?褒めて?」みたいな視線送って来てんだよ!褒めねーよ!

「……司様?あとで二人でお話ししたい事があります」
「う、うん!話そう!ちゃんと説明するから!」
「……ユーカリナ?」

ソフィアが傍にいる侍女さんに声をかける
侍女さんが足早にソフィアに寄り手を前で組み答える

「はい。姫様……」
「司様の右隣のお部屋に私に合うメイド服を数着持って来てもらえるかしら?」
「かしこまりました。すぐにご用意いたします。皆様、退室失礼致します……」

侍女さんがドアの前で一礼し、部屋を出ていく

ソフィア!?君なんで「ご主人様」のワードに対抗しようとしてんの!?

ソフィアの笑顔が「司様は「ご主人様」と呼ばれるのがお好きなんですよね?」と言っているような気がしてならない

「ああ、それと……。お父様?私今日から司様の右隣のお部屋に模様替えしますわ」

ええ!?君お姫様だよね!?客室を自室にするの!?

「ほっほっほ!ソフィア?頑張るんじゃぞ?」
「はいっ!」
「ふふふっ。以前から考えてましたの。これで司様のお部屋に行きやすくなりますわ……」

≪愛されてますね。マスター≫
……俺が世界を平和にした後、元の世界に帰るって言ったらどんな顔するだろう。ソフィア……
≪……えっ!?嘘ぉっ!?マスター!?先の事考えてなかったんですか!?≫
……考えてなかったわけじゃないさ。俺が元の世界に帰る時、ソフィアに元の世界に着いて来て欲しいなって思ってたけど
≪……うーん。大国の王女の立場を捨ててただの学生のお嫁に……。うーん……、あ、まずい。CPUが焼け付きそう……≫
あっ!?そう言えばそうだよね!現実の世界戻ったら俺ってただの学生だよね!?職歴に「救世主」なんて書けないよね!?
≪えっ!?そうですよ!?履歴書のどこにも「救世主」なんて書く欄ないですよ!?もしかして職歴に「救世主」って書くつもりだったんですか!?≫

……やっぱそーだよね!?人生において重要な事を完全に見落としてたよ!俺!!

履歴書をもし嘘偽りなく今書いたら……


東条 司 XX年11月11日(17) 

埼玉県さいたま市大宮区西川端字1-1-12 

学歴・XY年     光ヶ丘高等学校 商業科二年2組 在学中 
職歴・XX年~XY年 異世界で「救世主」として従事 異世界を救った為退職

特技等・殺人・暴行・傷害・死体遺棄・器物破損・隠蔽・捏造

免許・技能 

機神 デウス・エクス・マキナ 召喚
フェザーステップ 修得
サイザール短剣術 受け流し術 修得
サイザール短剣術 剣舞壱の型 修得
サイザール短剣術 剣舞弐の型 修得
サイザール短剣術 剣舞参の型 修得
サイザール短剣術 奥義 斬空剣 修得
サイザール短剣術・奥義 斬葬 修得
サイザール短剣術 全過程   修了
フューチャービジョン(3秒) 修得 
魔法による武器創造 修得
魔法による足場創造 修得
魔法力放出系魔法 魔砲 修得

趣味等・読書

志望動機
私はこれまで一貫して殺人から死体遺棄まで殺人に関する経験を積んできました。
これまで培ってきたノウハウを生かしていくことで、
グローバルな事業展開を推進している貴社のお力になれると思い志望いたしました
特技の殺人と死体遺棄、隠蔽と捏造を生かし貴社のグローバル展開をさらに円滑に勧められるよう、事業を牽引していきたいです。

本人希望記入欄
特技である殺人・死体遺棄・隠蔽・捏造を生かせる職場を希望します。

……俺って元の世界戻ったらただのヤバい奴じゃん!?
ブラックジョークで済まされないってコレ!

≪担当者が履歴書見た瞬間に不採用にされて警察に即通報するでしょうねー……≫
ですよねー!?仮に面接までたどり着いたとしてもだよ?きっとこんなんだぜ?


「光ヶ丘大学の東条 司です!本日は面接どうぞよろしくお願いします!」
「……よろしくお願いします。どうぞ」
「はいっ!失礼します!」

俺が椅子に座る

面接官がペラっと俺のプロフィールシートを見る

「……ほう、これは……。……君は変わった特技を持っているね……。この経歴と特技でどうして我が社を?」
「はいっ!私はこれまで殺人と死体遺棄、そしてその後の事後処理として隠蔽と捏造の経験を積んできました。
私なら御社の成長の妨げになる会社を排除し、スムーズな成長を促進させる事ができると判断し志望しました!」
「ほう。それは興味深い具体的に教えてくれますか?」
「はい!私なら御社のライバル企業の役員を全て暗殺し、死体を自殺として偽装する事が可能です」
「それは、警察に捕まるんじゃないのかね?」
「いえ!私は絶対に証拠が出ない方法を持っています!
不可能な犯罪を可能にする事で、証明不可能にすれば事件を立証できません。
証明できない事件は事件として扱われませんから逮捕される事はありません」
「……しかし絶対に証拠がでない方法など存在するわけがないでしょう?」

面接担当者がそんな事はあり得ないと馬鹿にしたようなニヤけた顔で見てくる

「よろしければ体験されてみますか?」

魔法で短剣を出現させる

「……面接は終了します。どうぞ、お帰りください。本日はご応募ありがとうございました」
「はい。ありがとうございました」
「おい、すぐ警察に電話しろ!」

やっぱダメじゃん!?

≪あっ?でも殺し屋さんなら就職口あるはずですよっ≫
やだよ!そんなアウトローな業界!そもそも殺し屋ってそんな求人職業安定所に絶対ないからね!?
≪じゃ、じゃあ開業です!マスターならすぐ「まちの殺し屋さん」で開業できますよ!≫
だからなんで殺し屋前提なの!?もっと普通の業界への道はないの!?世の中にはもっと色々仕事ってあるじゃん!
≪じゃ、じゃあ軍人として軍に所属すればいいんですよっ!それなら私もお手伝いできますし!≫
どうしてそう物騒な業界しかないの!
≪物騒な技能と経験しかないからですよ!≫
……あああーーーーっ!?しかもこのままズルズルと無断欠席増やしていったら留年確定じゃん!?むしろ退学まであるぞコレ!?
しかも就職の面接の時に留年の理由聞かれたら「救世主として異世界を救ってました」とか説明するハメになるぞ!!
この世界救っても元の世界に戻った俺の人生に救いがないんだけど!?
≪……仮に履歴書がまともだったとしても、言った瞬間に面接終了でしょうねー……≫
やっぱり救世主なんてろくでもねえええ!!!

……あっ!?で、でも一度は元の世界戻らないとガーベラとの約束が……
≪そうですねぇ……。これで元の世界帰らないとか言ったら間違いなく刺されますよね……≫
やめて!?リアルに想像しちゃうからやめて!?
≪だっ、大丈夫ですよ!マスターが私の力を100%引き出す事が出来ればガーベラさんだけを元の世界に戻せますし!≫
ホント!?手があるの!?
≪はいっ≫
さすがマキナちゃん!頼りになるぜ!
≪ふふふっ≫

「つ、司様?どうかされました?お顔が硬直しっぱなしですわ……」
「……いや。君との将来の事を考えていたんだ……」
「まあ……!司様ったら……!うふふふっ……!」
「……陛下?破滅の軍勢に関しお伝えしたい事があります。貴族の皆さんを集めていただきたいのですが」
「おぉ。何か進展がありましたか!東条様!」
「ええ。先日のセレスティアの一件ではっきりしたことがありまして、
ぜひ事態を早急に収束させるために皆さんにご協力いただきたいのです」

翌日俺はセレスティアの一連の事件で得た情報の報告の為、謁見の間に陛下とソフィア貴族達を集まってもらった

「お待たせしました。陛下」
「おぉ。救世主様!謁見の間へご足労感謝いたします!」

このいつものやり取りの後話、話を切り出される

「救世主様!陛下から聞きましたぞ!セレスティア王を処刑なさったとか!」
「陛下や貴族の皆さん。報告が遅くなり申し訳ありません。
セレスティア王から有益な情報が引き出せたため調査を優先させていました」
「有益な情報ですと……?」
「……まずはセレスティアで起こった一件の詳細をご説明しますね。マキナ?モニター頼む」
≪はいっ≫

────────
セレスティアでの一連の動画を再生し、見てもらいながら、
簡潔にセレスティアで起こっていた事を陛下やソフィア、貴族の皆さんに説明する

「なんと恐ろしい事を考えるものだ……」
「召喚されて間もない救世主様をサイクロプスと戦わせ、あつまさえ凌辱など言語道断……!
国を治める者としてあるまじき行為ですな……!」
「……東条様のような救世主様がいてくださって本当に救われますわね、あなた……」
「ああ……。今までの救世主様なら、面倒事を嫌ってみて見ぬふりをしていたかもしれない……」
「ですわね……。今回のセレスティアの一件……、今までの救世主様ならそうしていたでしょうね……」
「……どれだけ儂らが憤ろうと「救世主」様が見過ごす以上は何も言えんからな……」

……そうか……。「救世主」が事件を見逃したという事は、救世主が赦したという事になるのか……
≪これだけ救世主に依存している現状もどうかと思いますが、
それだけこの世界の人達にとって「救世主」が大きな存在と言う事ですね≫

「情報をまとめるのに時間がかかってしまい、報告するのが遅くなりました。皆さん申し訳ありません」

「いっ!いえ!滅相もない!もちろん救世主様にお任せしますのでお気になさらず!し、して。有益な情報とはどのような……」
「破滅の王の軍勢が各地の街や村を襲っている理由が分かったのが最も大きな情報でしょうか」
「なんと……!?早くもそんな事まで突き止められましたか……!」
「……!破滅の王の軍勢の目的がわかったのですか!?救世主様!」
「さすがは救世主様!早くも敵の目的を突き止められましたか……!」

陛下が騒がしくなり過ぎたと感じたのか手を上げ鎮める

「破滅の王の軍勢は邪魔になるものを全て排除して新しい世界を作り出すことが目的のようです。
そして、その新しい世界の王が破滅の王だと……」

俺の言葉に一同絶句する

「……は?……全て……?全てと申されますと……、あの……皆殺しにするという事でしょうか……!?」
「……そういう意味だと思われます。少しお待ちを、その会話をしている映像があります。こちらをごらんください」
マキナ?いつものモニターより大きなモニターで見せられるか
≪はいっ≫
レティシアの神器を他の人達も目にしていたという可能性も考慮し、隠蔽工作を手伝ってもらった
マキナ?確認だけどレティシアに関しての情報隠蔽大丈夫だよな?
≪はい、完了してます、確認されますか?≫
ああ。一応確認する。────よし。これでバレないだろ。映像出してくれ
≪はいっ≫

ブォン……!
マキナがいつものモニターより大きいサイズのモニター(60インチ程)を出現させ映像を再生する
マキナに映像を加工してもらい、色々と俺に都合のいい映像だけを流してもらう

≪……世の中知らない方がいい事ってありますからねー≫
そういう事だな
≪レティシアさんが破滅の王の軍勢に過去加担してた事があるってわかったら、
この国の人たちは間違いなくレティシアさんを糾弾した後処刑しようとするでしょうしね……≫
正直ソフィアや陛下に心苦しい気持ちはあるけどな。そこは俺が背負うべきところだ。
≪もし、バレたらマスターも危うい立場になるのでは……≫
俺はハナっから「救世主」なんて綺麗事だけでやっていけると思ってねーから問題ない
「救世主」なんて悪党やる以上は何かの形で泥をかぶるだろ。
どっちにしろ救世主なんてただの大罪人だからな。そこに一つや二つ悪名が増えるだけだ
≪マスターがそんな風に自分を卑下する必要はっ……≫
俺のやってる事自体は間違いなく悪い事だという自覚はあるからな。もちろんこの隠蔽に対し「必要悪」なんて言葉は使うつもりはない
たとえ泥をかぶる事になっても本気でこの国を守るのならレティシアを殺させるわけにいかねえさ。
≪……そうですね。私やマスターは前線で闘う事が主ですし、後衛で負傷した兵士を治せる人は必須ですね≫
マキナも治癒はできるけど、万人単位でいる兵士相手では絶対手が回るわけがないのは目に見えてるからな
≪はい……。これから戦いが激しくなれば一人でも多く癒し手は必要になるでしょう≫
今この国で治癒の力を持ってるのってマキナとレティシアだけだろ?
≪はい。負傷者が出た時治癒の力を持つレティシアさんが治癒する以外では一般的なの怪我の治療法が行われてますね≫
……やっぱりか、それだと治療を施してる間に死ぬ人も大勢いるだろうな
≪はい。治療が間に合わず死ぬ人は多数います。文明がそこまで進化していないという事もありますが≫
やっぱりどう考えてもレティシアがいないとこの国が生き残れる未来が想像できないよなぁ
≪ですねー……。大分追い込まれてますからね……≫
むしろ足りてないまであるよな……
≪ぶっちゃけると全然足りないです。癒し手も兵力も……。
あの件を隠蔽してでも、レティシアさんを生存させる道を選んだマスターの判断は英断だと思います≫

現実は厳しい。漫画やアニメみたいに一人が強くて何でも全て解決なんてできるわけがない

これは漫画やアニメの世界じゃない、現実だ。現実で人が死ねば生き返らない。
ゲームや漫画やアニメであるような死んだ人が生き返るなんてご都合主義は起こらない……!
何か間違えば人が死ぬかもしれないんだ……!

人質が捕まっていた洞窟内で殺された人達と殺されたシスターの遺体がフラッシュバックする

俺はそのイメージをギュっと拳を握りしめ押し込める

────

「……占領という形も取らずとは……なんと恐ろしい」
「これは……余りの事に言葉が出ませんな」
「騎士団長のお気持ちはわかりますよ。私も意味を理解するのに少々時間がかかってしまいました……」
「文字通り、世界の「破滅」を目論んでいたという事か……」
「世界を全て滅ぼして、自分が新世界の王の座に座るなど……なんと恐ろしい事を考えるのか」
「……ゾッとしますね。これは。しかも冗談ではないですな、この様子だと……」
「しっ!しかし、こちらには救世主様がいる!救世主様のお力なら!」

おいおい、何でもかんでも「救世主様」つって任せっぱなしにしてきたから今のこの惨状でしょうよ

「ええ、もちろん私も最善は尽くすつもりです。
ですが、以前もお伝えした通りここにいる皆さん、そして国民の皆さん。
いえ、最終的には全ての国の皆さんにご協力を願う必要があります」

「そ、それは、破滅の王を相手にするのは救世主様でも厳しいという意味でしょうか……?」
「……いえ。勝てるように修行は日々積んでおりますのでそこはご安心を。
しかし、私一人の力ではどうしても手が回り切りません。
ですから皆さんにもご協力を願いたいのです。私に出来ない事を皆さんにお願いしたいんです」
「救世主様に、出来ない事……ですか」
「ええ、私は魔物や破滅の王達と戦う事はできます。しかし、ここにいらっしゃる皆さんのように人を動かしたり、人員を増やしたり、
他国へ協力を求めたり……政治的な事は私にはできません」
「……なるほど、適材適所というやつですな……」
「そうです。……こちらをご覧ください」

マキナ?映像頼む
≪はいっ≫


アーレスが神器を出現させるシーンをマキナに流してもらう

────
「あれは……!まさか……」

会議室がざわめきだす

「そうです。皆さんお気づきの通り神器です。
破滅の王の軍勢の魔物以外の人間はこの黒マントと仮面をつけている人物は神器所有者……「救世主」である事は間違いありません」
「なんと、救世主が反旗を翻したというのか……!」

反旗というのじゃないと思うけどな……
俺もアルテミスの気持ちがわからないではないし……
ま、そこは立ち位置が違うからそう思わないだけだろうけど

「この男「アーレス」と呼ばれていた人物は交戦時に倒しました。
このアーレスという人物を調査した所十二年ほど前にマーキス国で救世主として召喚され、三年ほど前から行方不明になっていた「カルロス・レガリア」だと言う事が判明しています」
「全部で何人の元救世主が「破滅の王の軍勢」に属しているのか現在調査中です。
行方不明になっている救世主に心当たりのある方がおられましたら報告お願いします」

「わかりました。領地に戻り次第、領民に聞いて情報を集めてみますわ。救世主様……」
「今日さっそくうちの領地の村の連中にも聞いてみます」
「ぜひお願いします」

「皆さんにご協力をお願いする前にご理解いただきたい事があります」
「この「神器」と言うものは、一般的な剣や斧等の武器に比べて非常に高い殺傷能力を有している……いわば大量殺戮兵器です。
そのため一般的な兵士や騎士の方が戦いを挑んだ場合、甚大な被害が出ると考えられます」

「……存じておりますとも。これまでの救世主様達のお力で我々は何度も助けられてきたのですから……」
「理解しております……」
「……なるほど、そうでしたね。それを踏まえて……マキナ?」

≪はいっ≫

ブォン……!
マキナが次元の狭間から「禍の者」と「破滅の王」の写真を印刷した紙の束を取り出す

「この2枚の紙に「禍の者」「破滅の王」の姿を印刷しました。
「マキナ?配るの手伝ってくれ。俺はこっち側の皆さんに配る」
≪はいっ≫
「司様っ!お手伝いしますっ」
「ありがとう、ソフィア。じゃあ、これ頼むよ」
「はいっ」

マキナとソフィアと俺は破滅の王の印刷された紙を配って回る

紙を配り終わりその場の全員がその紙に描かれた「破滅の王」を見据える

「この紙に描かれた者が「破滅の王」……破滅の王の軍勢のトップです。
そして先ほどお話したこの「禍の者」……魔物を操る力を持つ者もご覧のように仮面に黒いマントを着用しています」
「詳しい詳細はまだわかりませんが、「破滅の王」そして「禍の者」……この黒マント仮面の者達が世界を混乱させている事は間違いありません」

「この黒マント仮面達を他の国と協力して世界中で指名手配していただきたいんです。
現在どこに潜伏しているかすらわからない状態ですが、世界中の人達の目があれば見つけ出す事は可能だと考えてます」

「なるほど、先ほど国に、世界に協力をしてほしいとおっしゃった意味が解りました」
「はい。どうしても一人で調査をするには限界があります。発見が早ければ早い程それだけ被害の拡大を防げると考えてます」
「それなら、有力な情報をもたらせた人には賞金をかけてはどうでしょう?救世主様」
「それは素晴らしい案だと思います。陛下」
「ほっほっほ!賞金は国庫から用意させます」
「それなら賞金を目当てに賞金首を専門にする冒険者やバウンティハンターからも情報が集まってくる可能性もありますな!さすがは陛下!」
「フフフ、お金で解決する問題で私を忘れて貰っては困りますよ?陛下」
「ほっほっほ!アルザード公爵も一枚噛むかね?」
「ええ、もちろんです。救世主様のお願いなら喜んで協力させていただきますよ。我がアルザード商会がスポンサーになりますよ、その提案」
「陛下!私、各国の新聞社にツテがありますので、この破滅の王の絵を賞金首として新聞に記事書いてもらいますよ!
「黒マント仮面についての情報を求む、有力な情報提供者へ賞金あり」と書いておけば他の黒マントについての有力な情報が集まるはずです!」
「それは助かります!ぜひお願いします!」
「ええ!任せてください!」

「この指名手配が世界に広がれば、世界中から多くの目撃情報が集まって来るはずです。
目撃情報が集まって来れば破滅の王たちがどこで潜伏しているのかおおよその検討がつけられるはずです」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおっ!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「素敵ですっ!司様っ!」
ソフィアが手を胸の上で合わせ笑顔で言う

「そっ、そうか!相手の居所が解れば手の打ちようもありますな!」
「なにやら希望が見えてきた気がしますよ!私!」
「ええ!私もです!」
「うふふ……。私ちょっと楽しくなってきたわ」
「ふふ……。儂もだよ、シルヴィア」

「これなら……、いける!我々にもできる事があるぞ!」
「ええ!これならきっとうまくいくはずです!破滅の王の軍勢に目にもの見せてやりましょうぞ!」
「ありがとうございます。陛下。どうかよろしくお願いします」
「ハハハ!お任せください!救世主様!必ずやこの光明広げてみますぞ」

「陛下のおっしゃる通りだ!まさに暗雲に光明が差したようです!」
「まさか我らが破滅の王を追いかける側に回れるなんて思いもしなかった!」

「ふっ……!面白い!今まで受けた屈辱をやつらに叩き返してやりましょうぞ!!」

「ふふふっ!今回の救世主様は私達が想像もしないような事をする方のようね?あなた……」
「……シルヴィア、儂はあの日の怒りがまた湧き出てきたよ。……儂はこの方に賭けてみたい」
「ええ、私もよ。あなた……。うちも救世主様に協力してお義父様とお義母様の仇を取りましょう……!」
「ああ!そうだな……!やられっぱなしでいられるか!」

「ふふ、期待しちゃうわ、私」
「ああ、儂もだ。この救世主様なら領地の村を焼いた破滅の王の鼻っ柱を折ってくれるはずだ……」
「救世主様!儂の、儂らの息子を!儂の宝を奪った奴らを倒してください!うちはどんな協力も惜しみませんぞ!」
「ええ。お約束します」

……ここにいる人達は国を動かす人達だ。
この人達が協力して動いてくれれば、いずれ世界中の国が動くはずだ

「ええ。────こいつらに見せてやりましょうよ。この国、この世界の強さを……!」

ニッと自信の表情を作り、俺は拳を掲げながら力強く宣言する

「「「「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおっ」」」」」」」」」」」」

その場にいる全員が立ち上がり拳を振り上げ歓声を上げていた


俺はその様子に思わずニッっと口角を上げる
俺は謁見の間の窓から空を睨みつけ、破滅の王と禍の者へ宣戦布告する


────おい、見てるか?
お前らがこの世界を壊そうってんなら、この世界のみんなで相手になるぞ────────

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三矢さくら
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

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