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1章 いざ、異世界生活

4 ゼドラ町の冒険者ギルド

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「王都・ニシルまでは隣町から10日ほどかかるからきちんと路銀と非常食用意しておきなさいよ~。」



 次の日の早朝。朝食を食べ、荷物をまとめて隣町へ行くための準備を進めた。


 準備をしていると隣町まで一応長いからと宿屋の奥さんに干し肉と黒パンを差し入れてもらってしまった。この国のパンはもちもちふわふわパンではなく硬くてあまり美味しくない、スープに浸さないと食べれない…正直貰ってもそうしようもないが人の好意を無下にできないため、鞄に入れる。


 早朝に宿から出たのにはきちんと理由があった。バイクで移動するため人目がある程度避けられる時間帯を選んだ。馬車でも行ってよかったが、いかせんお尻の耐久性を考えるとかなり辛い。サイレント式バイクを乗ると少しみんなが通る場所から少し外れたところだが、まだ走りやすい道を通って隣町・ゼドラ町へ向かう。魔物対策用に一応ポーションもかけているため、魔物とは出くわさずすんだ。


 風に吹かれ長い髪が揺れる。ちょうど良い気温に気持ち良い風、時々こういう時に家族のことを考えてしまう。精神的にきつくなって自害を考えて飛び降りた先が異世界で、しかも両方の世界を救う?と言ってもわからないが結果的に行き来して救うとなるとは思わなかった。


 あの女神はどうして私を選んだのだろうか。特に危険なことはしなくていい、好きなことをしてほしい、あの女神からは魔物を倒して国とか救ってほしいとかは無かった。どちらかというと安全かつ人生を満喫してほしいという願いを感じた。


 女神のあの視線…どこかで感じたことがある気がする。


 隣町の近くに到着すればアイテムボックスにバイクをしまう。町に入るには門を通らなければならないが門番が一人一人身分証を確認していた。アイテムボックスの中には身分証は入ってないため、田舎から出てきて今からギルドへ行って身分証作るつもりだと答えればいいだろうか…。



 「お嬢ちゃん、身分証はあるかい?」



 声を掛けてきたのは老兵であった。とても優しそうな気さくな方。



 「すみません…田舎から出てきたばかりで…。」


 「なら身分証発行するから手数料として銀貨5枚くれるかな?1週間しか期限がないから、どの国でも手数料が無料になるどっかのギルドの身分証を発行してもらうと良いぞ。」


 「ありがとうございます…!」


 「ギルドは冒険者ギルド、商業ギルド、職人ギルド、治癒師ギルドの4種類ある。一番簡単ですぐ身分証が手に入るのは冒険者ギルドだからそっちをお勧めするよ!この道をまっすぐ行って、あの噴水の右方向に行くとすぐ冒険者ギルドに着く。もし今日中に身分証作るなら銀貨返金できるから早くな!」



 老兵はそういうと小町を見送った。



🌸🌸🌸🌸



 冒険者ギルド。登録制の冒険者がおり国に属さない自由を売りにする冒険家業が多い。登録はどの年代も可能であるが小さい年齢だと荷物持ちや薬草採取などの簡単な仕事しか受けれない決まりがある。


 ランクは下からEランク~Sランクがあり、依頼を一定数または実技試験でランクが上がっていく。登録するには国籍や種族はもちろん関係ないので住所がなくても登録ができ、身分証が持ててしまうが何かしら違反を起こした場合罰はかなり大きい為、最悪犯罪奴隷に堕ちることもあるそうだ。


 冒険者ギルドは国単位や国際的な組織でかなり世界的に見てもかなり重要な存在。国に関すること…魔物が大量に発生した場合など(戦争以外)であれば国との協力関係になるしそれに見合った報酬を国はギルドに支払う。誰も損をしない関係なので2つが衝突することはまずない。


 ギルドカードには基本的な身分証の役割があり名前・種族・性別が書かれその他には冒険者としてのランクが表示される。初回の発行は無料だが再発行には銀貨3枚必要なため絶対になくしてはならないし、小さい村や町だと冒険者ギルドがないことがあるので身分証なくした場合は身分証が必要な地域なら手数料を支払わなければいけないのだ。



 「Eランクは街中の依頼内容が多いので依頼数6個をクリアして来てください。それが終わったらDランクに昇格になり討伐や薬草採取などの依頼が受けれるようになります!」



 受付嬢のアリスは人懐っこい表情を浮かべていた。


 彼女から見れば歳が離れている妹に見えるのか1から10までの冒険者ギルドに関して話してくれていた。依頼も比較的簡単で街中のペットの散歩だとか荷物持ちとかをおすすめしてくれた。


 「別に依頼受けなくても大丈夫ですが一定期間依頼受けないと冒険者としての地位を奪われるので注意です!ああ、もし別のギルド行きたい場合はそのままで大丈夫です…。」アリスはショボーンという効果音が似合いそうなほど落ち込む。どうやら比較的に身分証が作りやすい冒険者ギルドはそのためだけに使われることが多いそうで、登録者と辞める人はほとんど数字が変わらないみたいだ。



 「もしポーションとかつくれたり治癒魔法できるなら治癒師ギルドのほうがいいですよー。あっちの依頼達成金は高額ですし貴重な人材なので…。」


 「え、貴重なんですか?」


 「ですです~この前なんか下級ポーション買うのに銀貨1枚取られました。王都だといっぱい下級ポーション作れる治癒師多いしあまり品質良くないから安いけど、ここらへんの田舎はそんなに人数もいないし入荷も遅いから高額になっていくんですよね。」



 アリスは泣きべそかきながら教えてくれた。治癒師と冒険者は正直言って仲は悪い。怪我する者と治す者、金銭も絡むため仲間に一時的になってもらうにも金貨は普通にかかる。なのに戦えない、治療はありがたいが戦闘になると尻込みして逃亡、しかし金は払えと。そんな人間が多いなら仲が悪いのは当然。


 でも商業ギルドとは仲が良い。そりゃいい商品と高額な金貨が入ってくるから仲良くして損はないからね。


 アイテムもそうだがポーションも冒険者ギルドでは買い取ってもらうことは可能のようだし、しばらくは依頼をこなしながら今後なにしようか考えようと思う…。



🌸🌸🌸🌸



 この町に来て数日。


 村と違って色んなお店もあるしそこにはなかった冒険者としての必須アイテムたちが勢ぞろいしていた。防具屋、武器屋、ポーション屋、薬屋等々。ポーション屋と薬屋は全くの別物らしい。ポーション屋は所謂、魔力を用いて身体を癒すための液体状のものが小瓶に入っているモノを売っている店だが、薬屋は薬局のような役割で魔力を用いずに身体を癒すもの(固形・粉・液体問わず)が売っているという。



 小町は街中の依頼をこなして冒険ランクをDランクまで上げることができた。Dランクまで昇格すると町外の依頼も増える。安全そうな薬草採取の依頼を多めに受け、自分でも使うためについでに採取してアイテムボックスに入れた。


 「今日の依頼完了ありがとうございます!こちらが報酬の銀貨2枚になります!品質も良いのでちょっと多めにしておきました。」アリスは報酬が入った銀貨の袋を小町に手渡した。



 「コマチちゃんのおかげで最近の町外の簡単な依頼が消費されていくわ~…みんな報酬の良い討伐ばかりで、こういうのは受けてくれないのよね…。」


 「まあ…冒険者は魔物と闘う者という印象が強いですしみんなそれに憧れてるっていうのもあるんでしょうね。」


 「はぁ~報酬をまた上げないといけない依頼もあるし、また依頼人からどうにかならんのかと怒られちゃう~!!」



 冒険者ギルドの職員はブラックに嘆いていた。


 小町と小さい子供の冒険者以外は比較的安全な薬草採取やその他の街中の依頼には一切手を付けない冒険者が多い。やはりどの世界にも冒険者は強い魔物と戦って成り上がるみたいな、そういう考えの人や憧れを持っている人が多い為、どうしても討伐の依頼を受ける人のほうが比較的多いのだ。


 ならば小さい冒険者にやらせようにも体格、体力、なによりも年齢を考慮するとさすがにそれは無理である。いくら比較的安全でも絶対に安全とは限らない。冒険者ギルドの受付嬢及び職員は若い芽を摘まないように特に子供たちには目を光らせているのだ。


 「…コマチちゃん…しばらくこの町にいる??」アリスは不安げな表情をしながら小町に問う。



 「う~ん…しばらくは、ですかね…。」



 そろそろ王都に行ってみたいとも言えず小町は深いため息をつく。


 いろんな意味で人手不足な…冒険者にアリスたちは頭を抱えていたのだった。

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