298 / 436
第二章 アーウェン少年期 領地編
義兄は王都で推測する ①
しおりを挟む
リグレ・キュアン・デュ・ターランドは、王都にある王立貴族学園の寄宿舎で、新しい弟とその従者となった少年の解術と回復についての報告を受けていた。
「……黒魔術?」
本来ならば未熟な学生であるにしか過ぎない年齢の少年であるが、魔法や魔術に関しては第一人者であり、後方支援魔法術師や隠密機動のできる警護兵を輩出する名門貴族の後継者として、リグレはある程度の機密事項を父の配下から知らせてもらえる立場にある。
その権力を存分に駆使して、定期的に家からの書簡を届けてもらっていた。
ずっと引っかかっていたのだ──サウラス男爵家における末弟の存在感の無さに。
自分で調べただけでも多くのことがわかったとは思うが、根本的な解決には至らずに、両親が弟妹を連れて領地に戻るという知らせを受けただけだった。
だがこうして勉学を修める身としては、学園内で何ら問題も起こさず引き籠る理由がない以上、きちんと結果を出して優秀な成績を取れるということを示さねばならない。
それに父が義弟を連れて王都を離れたという事実もまた、やはりあの子の背景に何かしらあると思わざるを得なかった。
しかもそれは案外的外れではなかったようで、あの憐れなまでに痩せ細った義弟がものすごい勢いで健康と知性を取り戻し、途中で雇用した家庭教師から基礎的な学習を行っているという──
「家庭教師?」
また父が何かしら事情のある者を引き取り領地へ同行させているのだろうが、また珍しい職の者を得たらしい。
父の計画をざっくりと理解したところでは、ターランド伯爵家は諜報活動や魔術関係に秀でてはいるものの、武力も併せ持つ血筋を取りいれたいと考えていた。
その方法としては他家からリグレの婚約者として迎え入れるのが最有力候補であったが、調べてみると血縁者であるサウラス男爵家が前衛騎士団を数多く輩出しているドレンティ侯爵家所縁で騎士爵を賜っているキャステ家の娘を迎え入れていた。
しかもサウラス男爵家には女児がなく、五人いる子供は全て男児──長男はすでに領村を修め、次男と三男はキャステ家の商会へ迎え入れられており、家に残っていたのは四男と五男ということだった。
しかし病弱ではあるがかなり博識だと父親が自慢する四男はともかく、五男はまったく話を聞くことがない。
むしろターランド伯爵家の調査の手が伸びなければ、教会に出生の記録しかない五男の存在は近隣の者も知らなかったという異常さ。
サウラス男爵はほとんど関わり合いがなかったために知らなかったのかもしれないが、その異常さこそが父の目を引いたのだろうと、今ならわかる。
「……黒魔術?」
本来ならば未熟な学生であるにしか過ぎない年齢の少年であるが、魔法や魔術に関しては第一人者であり、後方支援魔法術師や隠密機動のできる警護兵を輩出する名門貴族の後継者として、リグレはある程度の機密事項を父の配下から知らせてもらえる立場にある。
その権力を存分に駆使して、定期的に家からの書簡を届けてもらっていた。
ずっと引っかかっていたのだ──サウラス男爵家における末弟の存在感の無さに。
自分で調べただけでも多くのことがわかったとは思うが、根本的な解決には至らずに、両親が弟妹を連れて領地に戻るという知らせを受けただけだった。
だがこうして勉学を修める身としては、学園内で何ら問題も起こさず引き籠る理由がない以上、きちんと結果を出して優秀な成績を取れるということを示さねばならない。
それに父が義弟を連れて王都を離れたという事実もまた、やはりあの子の背景に何かしらあると思わざるを得なかった。
しかもそれは案外的外れではなかったようで、あの憐れなまでに痩せ細った義弟がものすごい勢いで健康と知性を取り戻し、途中で雇用した家庭教師から基礎的な学習を行っているという──
「家庭教師?」
また父が何かしら事情のある者を引き取り領地へ同行させているのだろうが、また珍しい職の者を得たらしい。
父の計画をざっくりと理解したところでは、ターランド伯爵家は諜報活動や魔術関係に秀でてはいるものの、武力も併せ持つ血筋を取りいれたいと考えていた。
その方法としては他家からリグレの婚約者として迎え入れるのが最有力候補であったが、調べてみると血縁者であるサウラス男爵家が前衛騎士団を数多く輩出しているドレンティ侯爵家所縁で騎士爵を賜っているキャステ家の娘を迎え入れていた。
しかもサウラス男爵家には女児がなく、五人いる子供は全て男児──長男はすでに領村を修め、次男と三男はキャステ家の商会へ迎え入れられており、家に残っていたのは四男と五男ということだった。
しかし病弱ではあるがかなり博識だと父親が自慢する四男はともかく、五男はまったく話を聞くことがない。
むしろターランド伯爵家の調査の手が伸びなければ、教会に出生の記録しかない五男の存在は近隣の者も知らなかったという異常さ。
サウラス男爵はほとんど関わり合いがなかったために知らなかったのかもしれないが、その異常さこそが父の目を引いたのだろうと、今ならわかる。
18
あなたにおすすめの小説
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
逆行転生って胎児から!?
章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。
そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。
そう、胎児にまで。
別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。
長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。
薬師だからってポイ捨てされました!2 ~俺って実は付与も出来るんだよね~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト=グリモワール=シルベスタは偉大な師匠(神様)とその脇侍の教えを胸に自領を治める為の経済学を学ぶ為に隣国に留学。逸れを終えて国(自領)に戻ろうとした所、異世界の『勇者召喚』に巻き込まれ、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
『異世界勇者巻き込まれ召喚』から数年、帰る事違わず、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居るようだが、倒されているのかいないのか、解らずとも世界はあいも変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様とその脇侍に薬師の業と、魔術とその他諸々とを仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話のパート2、ここに開幕!
【ご注意】
・このお話はロベルトの一人称で進行していきますので、セリフよりト書きと言う名のロベルトの呟きと、突っ込みだけで進行します。文字がびっしりなので、スカスカな文字列を期待している方は、回れ右を推奨します。
なるべく読みやすいようには致しますが。
・この物語には短編の1が存在します。出来れば其方を読んで頂き、作風が大丈夫でしたら此方へ来ていただければ幸いです。
勿論、此方だけでも読むに当たっての不都合は御座いません。
・所々挿し絵画像が入ります。
大丈夫でしたらそのままお進みください。
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる