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忌避
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考えてみればおかしい話だ。
現実のルエナとシーナではクラスも違うし、ゲームの中では選択制の授業の話などまったくなかったはずである。
あの場面では確かダンスの授業で王太子や他の攻略者の誰の手を取るかで好感度が変わるのだが、その相手が王太子だった場合には、「ダンスの相手にふさわしくない」とか言いがかりをつけてきたくせに、シーナを庇う王太子の態度にルエナと取り巻きたちがバタバタと倒れていく寸劇には思わず笑ってしまった。
「でも今はダンスの授業でもないし、そもそもアタシはそっちは取ってないし」
「そうなのか?しかし子爵令嬢といえど、夜会などに参加すればダンスの申し込みなどあったのではないのか?」
「え?ああ……伯父……じゃなくて、お父様がアタシを養女にしたことは周知していたけど、ほら……オイン子爵夫人はいないでしょ?」
「え……あ……そうか……オイン子爵現当主は独身か」
「ええ。それにアタシの父さんもね。ふたりとも女っ気ないんだから!そしてそんなふたりの婚姻相手を探すべきお祖母様は前当主であるお祖父様と共にどっか遠い保養地に引っ込んで、そのお祖父様は平民どころか貧民の娘と勝手に結婚したことに未だ激怒して『たったひとりの孫娘だろうが関わり合いになるつもりはない』って絶賛拒絶中。なので、アタシは社交界デビューも果たしていないはみ出し令嬢なので、こうやって学園には通えても社交界的お誘いは今のところひとっつもありませーん」
「なっ……」
本来なら五歳でプレデビューというべき昼の交流会に連れて行かれて王国の貴族の子供たちと顔見知りになる。
それから十歳から十二歳で女の子は母親と共に自分が所属すべき貴族の家に共に呼ばれ、そこで婚約者候補と出会えるように縁を繋ぐ。
そして十五歳になって初めて夜に開かれる大舞踏会に参加して、ようやく社交界デビューをした令嬢だとして、正式に求婚してよい女性だと認められるのだ。
しかしシーナが子爵令嬢になったのは学園に入れる年齢の直前で、また学園に入るにふさわしい学力を得るために勉強漬けになるということを言い訳に、特にダンスなど令嬢らしいことはほぼ避けてきたのである。
「だから踊れない……と思う。たぶん、アタシとリオ……殿下の知っているダンスは、きっと皆にはすごく変に見られると思うから、絶対に見せないけどね。社交ダンスは……スクエアステップぐらいならできるだろうけどなぁ……」
今や室内にいる令嬢はアルベールを憧れの目で見るよりも、シーナを恐れるように遠巻きにして、意味不明な言葉はたったひとり側にいるアルベールしか聞いていなかった。
現実のルエナとシーナではクラスも違うし、ゲームの中では選択制の授業の話などまったくなかったはずである。
あの場面では確かダンスの授業で王太子や他の攻略者の誰の手を取るかで好感度が変わるのだが、その相手が王太子だった場合には、「ダンスの相手にふさわしくない」とか言いがかりをつけてきたくせに、シーナを庇う王太子の態度にルエナと取り巻きたちがバタバタと倒れていく寸劇には思わず笑ってしまった。
「でも今はダンスの授業でもないし、そもそもアタシはそっちは取ってないし」
「そうなのか?しかし子爵令嬢といえど、夜会などに参加すればダンスの申し込みなどあったのではないのか?」
「え?ああ……伯父……じゃなくて、お父様がアタシを養女にしたことは周知していたけど、ほら……オイン子爵夫人はいないでしょ?」
「え……あ……そうか……オイン子爵現当主は独身か」
「ええ。それにアタシの父さんもね。ふたりとも女っ気ないんだから!そしてそんなふたりの婚姻相手を探すべきお祖母様は前当主であるお祖父様と共にどっか遠い保養地に引っ込んで、そのお祖父様は平民どころか貧民の娘と勝手に結婚したことに未だ激怒して『たったひとりの孫娘だろうが関わり合いになるつもりはない』って絶賛拒絶中。なので、アタシは社交界デビューも果たしていないはみ出し令嬢なので、こうやって学園には通えても社交界的お誘いは今のところひとっつもありませーん」
「なっ……」
本来なら五歳でプレデビューというべき昼の交流会に連れて行かれて王国の貴族の子供たちと顔見知りになる。
それから十歳から十二歳で女の子は母親と共に自分が所属すべき貴族の家に共に呼ばれ、そこで婚約者候補と出会えるように縁を繋ぐ。
そして十五歳になって初めて夜に開かれる大舞踏会に参加して、ようやく社交界デビューをした令嬢だとして、正式に求婚してよい女性だと認められるのだ。
しかしシーナが子爵令嬢になったのは学園に入れる年齢の直前で、また学園に入るにふさわしい学力を得るために勉強漬けになるということを言い訳に、特にダンスなど令嬢らしいことはほぼ避けてきたのである。
「だから踊れない……と思う。たぶん、アタシとリオ……殿下の知っているダンスは、きっと皆にはすごく変に見られると思うから、絶対に見せないけどね。社交ダンスは……スクエアステップぐらいならできるだろうけどなぁ……」
今や室内にいる令嬢はアルベールを憧れの目で見るよりも、シーナを恐れるように遠巻きにして、意味不明な言葉はたったひとり側にいるアルベールしか聞いていなかった。
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