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驚愕

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そういえば、とアルベールは思い返す。
前世の記憶を思い出し、それを維持しているというリオンとシーナ。
それぞれ前世では凛音と詩音という男女の双子だったと言い、まるで口裏を合わせたようにぴったりと話す『過去』が一致するのを、幼いアルベールは呆然と眺めるしかなかった。
まるで答え合わせるかのように活き活きと『攻略対象』の話をし、その頃はまだ詳しく知り合ってもいない彼らの『将来の姿』と詩音──いや、『シーナ・ティア・オイン子爵令嬢』となった後のルエナ断罪劇救出作戦など、想像どころか単なる妄想話と聞き流していたが。
「しかしそれなら、最初からルエナにも事情を話していた方がよかったのでは……?」
「と、実はアタシも思っていたし、きっとリオンもそう考えていたと思うのよね……」
「……ああ、そうか……」
幼すぎるルエナを巻き込んだ長期的なディーファン家没落計画だと思われる企みは、すでに五歳のルエナに絡みつき、毒となるお茶を服用させることですでに発動していた。

まさかそんな昔から──?

「………な…んの……はなし……?」
ボンヤリとしたその声は、さすがというべきか鍛えていたイストフ・シュラー・エビフェールクスだ。
アルベールの当て身でしっかり気絶していたのは最初だけで、意識がはっきりしないまま話を聞いていたらしい。
「……お前には関係がない……と言いたいところだが」
「そうだねぇ……せっかくだから、こっち側に加担してもらおうか。アタシもひとりでも面倒な奴を減らしたい」
「めん…ど……」
おそらくリオンの側近の中ではまだまともな方だと自分で思っていたらしいが──事実そうではあるのだが──シーナの冷たい目付きに気付き、それが自分も含まれていることにイストフの目から濁りが消えていく。
「お…俺は……ひょっとして、君に…嫌われて、いたんだろうか……」
「え?やっと?」
確かにイストフだけがシーナの見た目以外の部分にも興味を持ってくれた男だとはいえ、ゲームや小説ではないこの現実世界でも、シーナのふんわりとした雰囲気とは真逆のルエナに対して『まるで心のないガラス作りのように冷たく、王太子にとって価値のない女』と常々言っていたのを許してはいない。
だからといってシーナがイストフやその他の側近たちに対して優しく話しかけたりしていたということはなく、むしろおかしなゲーム修正が入らないようにと当たり障りなく微笑んでいただけである。
「で…も……でぃーふぁ……閉じ込め……ゴホッ……」
さすがに動き出したとはいえ、強く剣で殴り飛ばされたダメージはまだ残っているらしくイストフは咳き込んだ。
「閉じ込められたんじゃなくって、リオン…殿下の手配で、ディーファン公爵夫妻に匿ってもらっていたのよ……私も身の危険があったから」
「………は?」
驚いた表情を浮かべたイストフはゆっくりと身体を起こし、「シーナ嬢を解放しろ!」と怒鳴りつけて打ち倒そうとして返り討ちしてきたアルベールに視線をやった。


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