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知識

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それは単に憶測にしか過ぎないが、現実になる可能性もある。
自分が叩きのめして気絶させた後輩たちが、そのような不埒なことを考えたり実行したりすることを考えたくもないが、アルベールはリオンとシーナからこの国やこの世界を模した『げーむ』とやらで視覚的経験をしていることを聞いていた。
その『げーむ』というのはシーナが貴族学園に途中入園するところから始まり、誕生日や聖人の祝日を共に過ごす『いべんと』というもので愛を育み、その度合いはシーナ自身がルエナやその取り巻きなどに理不尽な虐めを受け、それを誰がどう庇うかで判断するのだというが──
「それをマルチに……分け隔てなく行ったり、ひとりずつ恋仲になるルートを繰り返すことで、最終的にここに倒れている奴らと逃げたベレフォン、そしてリオンのすべてから愛されるという『逆ハーレムエンド』というのが発生するの。ほら……異国ではひとりの王が何人もの側妃や愛妃を正式な『婚姻者』として愛でるという『後宮制度』の女性版と言う意味」
「ああ……我が国ではかつて王が娶る妃に順位を付けたが、そうではなく一律の立場にあるという妃たちのことだったな……」
「ええ。あれは自国の有力者からだけでなく、いろいろな国から姫を娶ることで交流関係を保ち、なおかつ序列をつけないことでその妃の国を訪問する時に物事をいろいろ有利に進めるため……らしいわね。そういうのはゲームや小説では語られないのよ。もっぱら視点は恋愛に関してのみ。だから勉強するのが楽しいわ!」
「そっ……そうか……それならば、我が家の図書館にもいろいろと興味深いものがあるかもしれない。好事家が先祖にいて、諸外国の文献などを翻訳した本もあるらしいのだが、俺はあまり詳しくない……」
「わぁ!本当?!アタシ、実はこう見えても読書家なのよ?リオンには敵わないけど!」
貴族の子女であれば当たり前のように子供の頃から叩き込まれる近隣諸国の言葉や情報だが、シーナは貧民階級のためにそれらに触れることはなかっただろうし、前世ではそういった歴史的事実はその作り物の中では一切触れられないのだという。
だがそれを『楽しい』と笑うシーナに、アルベールは思わずクラリと理性を揺さぶられた。


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