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急襲

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リオンが滂沱の涙にくれている頃──シーナの足元ではリオン王太子の学園側の側近たちが這いつくばっていた。
「ひぃ…ふぅ、みぃ……アレ?ひとり足りない」
まるで皿屋敷であるが、ディディエ・ファーケン・ムスタフ、ルイフェン・クウェンティ・ダンビューラ、ジェラウス・クーラン・クリシュア、そしてディディエよりも剣の腕がたつはずの剣士希望であるイストフ・シュラー・エビフェールクス辺境侯爵令息が、アルベールの剣により倒れ伏している。
何を思ったのか全員でアルベールに襲い掛かり、シーナを確保すればリオンからの覚えがめでたくなるかと思ったらしい。
いや──それとも、そのままシーナを攫ってどこかに閉じ込めようと考えていたのかもしれない。
「いや、監禁逆ハーレムなんて十八禁モノ的展開はお断りだけど……ベレフォンがいないわね?」
「さっき何故だかこいつらの後ろ……どころか、あの柱の陰に立っていたが。イストフが倒れた瞬間に逃げていった」
「は?」
ゲーム内でリオン王太子よりベレフォン・ジュスト・ダンビューラを選ぶと、ラストは確か軟禁状態で素敵な花園のある屋敷・・・・・・・・・・で一生仲良く暮らしました…的なものだった。
「ああ……あのヤンデレ兄め……血の気の多い弟見捨てて逃げやがったのか……とんでもねぇな……」
「シオ……そのまた『やんでれ』というのは後で説明してもらいたいが……確かに兄が弟を見捨てるというのは、ちょっと……かなり見苦しいな……しかも殿下の不在に荒事を起こそうなどと……」
「……ていうか。ルエナ様がやっと登園されて、しかもアルが学園にいるじゃない?だから多勢に無勢って数を頼って、アタシを攫う……いや、救出?するつもりだったとか。サイアク、アタシをどこかに閉じ込めて、それをアルのせいにするつもりで打ちかかってきたとか。考えたくもないけど」
「シオ…いや、シーナを救出……というのは見かたの問題でそう言われることもあるかもしれないが……閉じ込めるというのはないのではないのか?勘違いとはいえ、シーナは今現在リオン王太子殿下の庇護のもとにあるというのが一般認識なのだから」
「普通はね……でもこいつら、絶対リオンのためじゃなくて、自分がアタシの彼氏になれたらいいって思って動いているんだもん」
「カレシ?」
「それもまた後で……でも利害が一致するなら、『アタシ自身をリオンの手の届かないところに閉じ込める』と『ルエナ様に命令されてアタシをどうにかしようとしていたアルベール・ラダ・ディーファンを打ち倒した』が成立するの。その上で、アタシは行方不明。アルを殺害。王太子の側近を殺害するなんて処刑モノだろうけど、それをやったのが学園側の側近。つまり学生……そんな未熟者に倒される輩など王太子にとって害にしかならない……ってね」
「……で、『行方不明のシーナ』を巡って、今度はこいつらが同士討ちするのか?」
「それもあるかもしれないけど、ここに倒れている奴らと逃げたベレフォンがどこかに家にアタシを閉じ込めて好き勝手……アタシにとっては地獄よ、マジで」
どんなに顔がイイ男であろうと、前世の記憶がシーナにとってトラウマであり、ソレを強いる奴らは恐怖の対象としかなり得ない。


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