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昼食・3

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上位貴族と下位貴族──何という開きがあるのか。

アルベールとイストフは、目の前で真剣に就職先を悩む下位貴族家の三人がああだこうだと将来を語り合うのに参加できず、シーナが作ってくれたサンドイッチをゆっくりと味わうしかないのがもどかしかった。
確かに没落して生活レベルを落とさざるを得なくなったり爵位自体が下位へと落とされることはままあれど、少なくとも公爵や辺境侯爵家に関しては、よほどのことがなければ己の食い扶持を稼ぐための就職先など心配する必要はない。
あるとすれば一族郎党断頭台の露となる事態が発生した時だ。
その時心配するのは残される使用人たち自身の働き口だが、主人一家は爵位どころか領地も取り上げられて幼子に至るまで断罪されるのだから、『働かなければ生きていけない』などという心配以前の問題となる。
シーナに関しては裕福な前世からの転生で、天地の差がある過酷な貧民街育ちではあるが、隠れ天才画家として生活レベルも財産レベルも上がってきているのに、その感覚はブレずに庶民的なままだ。
「……君、は……」
「ん?」
サンドイッチには使わなかったブロッコリーやニンジンなどの茹で野菜を残ったマヨネーズソースにディップしながら頬張るシーナが、イストフの声にキョトンと視線を向ける。
モゴモゴと左右に膨らむ頬や顎の動きが止まってゴクンと飲み込むのを見計らい、イストフは顔を赤らめつつ確認の言葉を続けた。
「君は……王太子や俺たちとの婚姻を……いや、今はそんなことを考えているとは思っていないが……だが、その……こ、婚約……とか……」
「う~ん……ん~~????」
目がキョロキョロと落ち着かなく動き、ゆっくりと顔色が上気していくが、明確には答えない。

否──今は、こたえられない。

「んんっ…んぐっ……あむん……むふぅ~……ん~……と、とりあえずは……え~……」
恥ずかしくて言えないが、やっぱり女の子だもん。
攻略対象のひとりであるリオン王太子はその縁から絶対的範疇外だが、眼福極まりないほどキラッキラなイケメンたちが身の回りにいるのだから、前世では願えなかった真っ当な恋愛と結婚を望んでもいいのではないだろうか──それに絡む悍ましい記憶に身が竦もうとも。


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