その存在。

行枝ローザ

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ひとり。

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「友達、いないの?」
「友達作らないの?」
うっせーな。

人はいつだって、誰と誰がツルんでいるかということを気にするらしい。
小さい頃は、母親が勝手に答えてくれた。
「ごめんねぇ。この子、ちょ~っと恥ずかしがり屋さんで」
「うぅん。なんか人見知りが激しいらしいのよ」
「大丈夫。ひとり遊びが好きな子だから」
いいじゃん、別に誰とも仲良くなくたって。

半日は必ず集団生活に縛られる歳になると、『先生』が無理やり『友達』の枠を作りたがった。
「は~い!みんなちゃんと仲良くしてねぇ!」
「隣の人と手を繋いでぇ」
「じゃあ、悪いけど、グループに入れてあげてね」
悪いけど、って何。

だからといってひとりを辞めることはなかった。
辞めなきゃいけない理由があったわけでもなかったし。
誰かが『遊ぼう』と言えば遊んだし、勝手に『友達』の輪に組み入れられたって別に拒否する理由がなかっただけだし。

こっちからはアクションしなかっただけ。

だからそんな『友達』は、小学校、中学校、高校、大学、就職、アルバイト先、結婚、引っ越し、いろんな理由で、糸が切れたように関係がなくなった。
なくなっただけ。

「友達いらないんですか?」

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