すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、転生する。

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もういくつ名前を変え、生を受け、死を迎えたのか、定かではない。

始まりは違和感だった。

(……これ、見たことがある?)
それは景色だったり、匂いだったり、音だったり、書物だったり──
時には畑を耕す桑を握った時。
時には赤ん坊を沐浴させた時。
時には学園で木々を見上げていた時。
時には凍えそうな雪山で眠りにつこうという時。
時には戦士であり、百姓であり、薬師であり、教師であり、王族だった時もあった。
記憶は重なり、思い出す量もだんだんと増え、自分が何度も違う人生を生きてきたことを理解したのは何度目かの『魔王』との邂逅の時。


「……なんだ、お前、またいたのか」
「また?」
「自覚がないのか。前に『またな』と言ったくせに」
やけに人間臭い表情をする魔王と対峙したのは、仲間が次々と倒れ、最後の1人になった時だった。
「……?お前なんかに会うのは、これが初めてだが?」
「ああ……まったく、人間というのは面倒だ。簡単に死ぬし、簡単に生き返る。しかもその器に魂の記録を貯めておくことすらできんと見える。お前と会うのはこれで……4度目か?5度目か?初めはなぜか犬を庇って、俺の気を喰らってすぐに死んだ。人間の年齢でいえば5歳か?次は……確か女騎士で、守っていたはずの王女に『お前が犠牲になれ』とか言われて前に押し出された瞬間、俺の乗っていたドラゴンに喰われた。ついこの間はようやく『冒険者』とかいう自由の身になったくせに何の力も持たず、討伐軍に射られて死んでしまったなぁ……何度も俺の前に現れる奴なんて珍しいから、『魂』を覚えていたんだ」
「た…たましい……?おぼえて……?」
『魔王』と名乗るそいつは、おかしいことをほざく。
その時の私は『勇者』の露払いのような役目を負ったただの索敵者で、こんなところで魔王なんぞと出会うつもりはなかったのだ。
「まあ……今ここで死んでも、またきっと会うだろう。なぜかは知らんが、俺たちはこうやって出会う運命らしい。次はどんな人生で会えるか楽しみにしてるぞ!」
そう言われた瞬間、私は魔王にすんなりと斬られて絶命したのである。

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