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賢者、転生する。

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知識と魔力を取り戻した後遺症は、割れるような頭痛と不眠をもたらした。
気が付くまで私は嫌というほど寝ていられたのに!
なぜか今度は眠れない。
眠ろうとすると頭痛が激しくなってその痛みで数秒気を失うのだが、すぐ覚醒してしまってまったく体力は回復されず、私は常にふらふらと上体を揺らしているしかなかった。
「先生っ!駄目ですよぅ!」
眠れないのだからしょうがない。
そう思う私の世話を買って出てくれたのは、倒れた私を見つけてくれた探索者たちの1人で、王宮お抱えの魔術師のリラである。
幼い少女かと思ったけれど、実際は魔力を生み出し続ける性質のため、肉体の成長を止めているのだと教えてくれた。
何度も転生する自分もどうかとは思うが、このように魔力を放出し続けることを別の作用に向けるという発想を持つという彼女もまた稀代の存在ではないだろうか。
「……先生はやめてくださいぃ……私はまだ……今回はぁ……えぇと……何、歳……?」
「何歳って……もう……眠れないのなら、お薬でも魔術でも手段選ばずに寝てくださいよぉ!えぇと……ああ、冒険者カードには18歳って……えっ?!18っ?!先生ってば、見た目が若いだけかと思ってたら……本当に若い……ヤバい……私、お母さん年齢……」
「え………?」
眠気と頭痛の狭間であまりよく聞こえないが、何かしら後悔を滲ませた目で見られているのだけはわかる。
しかしそんな私の年齢を知っても、彼女の態度と『先生』呼びは変わらず、半年ほど眠れなかった私が衰弱死しないようにと世話をし続けてくれた。
その間にも私は古代語本の翻訳を続けたが、その一部を持って私が旅立った国の王の元に送られた結果、なぜか新しい古代語の本が持ち込まれるようになり、リラが顔をしかめる。
「まったく……先生は少しでも休んだ方がいいのに……」
「どうせ眠れないんだから、こうやっていた方がいいんです。それに『先生』は止めてください……リラさんの方がすごい魔術師さんではないですか!」
「えぇ~??だって、この家に掛けられている結界やら目くらましやらって、先生の魔力で作られているじゃないですか!倒れてしまったせいで構築を忘れてしまったなんて言われてますけど……ぜひ、思い出して私に伝授をっ!!」
伝授と言われても──と断ろうと思ったが、確かに彼女には並々ならぬ恩がある。
彼女が探索者一向に加わっていたのは、万が一にも私がよこしまな考えを持ってよからぬ研究でもしていた場合に、魔力を行使して拘束するためだと聞かされた。
実際は単なる物語の──私だけに『過去を取り戻す作用』があったが──翻訳だったため、衝撃で倒れて意識を失っていた私を見つけて村の診療所に連れて行ってくれたのである。
「……わかりました。この古代語の本の翻訳がすべて終わったら、誰にも口外しないという契約を結びましょう。その上でなら……」
「はいっ!!やった~~~~~!!」
少し早まった気がしないでもないが、でもまさかこんなところで、こんな時代に私の『弟子』的な人ができるとは思わなかったが、あんがい嬉しいと思ってしまう。

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