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賢者、転生する。
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そうして半年後──私は19歳の誕生日を迎えた。
その日はリラだけでなく、見つけてくれた探索者たちと村長、村医師が私の家に集まり、翻訳し続けた冒険譚を祝ってくれた。
「ほ…ほぅ……なんと、心躍る……いや……魔物に立ち向かう勇者……」
「ああ、なんてすごい……挿絵がなくとも情景が目に浮かぶ……何とも素晴らしい作者だ。これを読み上げる朗読劇なんかあったら、子供たちも素晴らしい勇者の子孫だと信じられるだろう」
「いや、でもこれは国境を2つ越えた先の国だし……」
老いも若きもうっとりと私が訳した本を抱えているが、子孫?先祖?どういうことだろうと訝しく思う。
「あれ?先生は古代語に長けていらっしゃるのに、歴史には疎いのですか?うふふ~……あのですね?」
「元々、この国の国王陛下と、2つ先の国の王様は同じご先祖様なのさ。えぇと……確か、間にある国のお姫様が妖精姫、だったかな?仲の悪い兄弟だった2人の王子の仲を取り持つため、元はひとつの国だったのを3つに分けて、1つは兄王子に、1つは弟王子へ、そして真ん中の国には自分の眷属である魔法使いを住まわせて……」
「もう!私が言おうと思ったのに!……だから、3つの国は『ローシャル公国語』を共通語とするんですよ。ほら、名前だって『ローシャル・ダヴィッテ国』と『ローシャル・ルーフェル国』って、人の名前みたいでしょう?」
得意げに広げられた地図を見れば、確かに正式名称が綴られている。
私の前世たちは国の成り立ちを覚えるよりも生きることに必死だったり、今いる『ルーフェル国』からさらに先の国なんて地の果ても同じくらいの感覚だった。
「そう……ですよね?そうか……私はこの家に戻ることしか考えてなくて、言葉がちゃんと通じるかどうかすら忘れていましたよ!」
同じ国の中だけで転生していたわけではなく、どういう仕組みかわからないけれど、私は様々な国に産まれていたのだ。
「まあ!先生ってば!私よりずっと若いのに、何だかこのおうちの方に縁があるような言い方ですのね?」
「えっ……あっ……ああ!そう!そうなんです!!じ、実は、私の母方のその……お祖父さんのお兄さんがいろいろと難しいことを研究したいと家を出て、この家に住んでいたと……古代語の辞書とか珍しい本があるから、いつか訪ねてみるといいと言われていたんですよ~。あ、ははははは………」
苦し紛れとしか言いようのない言い訳だが、意外にも皆はあっさりと信じてくれた。
──というよりは。
「いやぁ……ある日突然、もう使われていない古道に小さい家が建っていると言われて……見たこともない少年が村に買い物に来て、後を付けたらこの家に入っていくのを見た者がおるが、どうしてもこの家に近付けん…と。なのに、ある日パッタリと村には来なくなるし、王様から探索者たちが派遣されてくるわ……」
「いやいや、本当に。上質な薬草を売りに来てくれて助かっていたのに、突然姿を消したかと思ったら、本を抱えたまま眠るというよりも意識のないお前さんが担ぎ込まれてくるんじゃもんなぁ」
村長と村医師が揃って頷く。
なるほど──うっかり家に入られては困ると思い、私は家自体の封印は解いたが、周囲の結界を消さずにいたので怪しく思われていたらしい。
「ま、それも私がいたから何とか解けて、先生を助けられたんですけどね!」
リラがふん!と胸を張るが、可愛らしいその姿はまるで妹のようであり、私の結界を破れるほどの大魔力持ちとはとうてい思えなかった。
その日はリラだけでなく、見つけてくれた探索者たちと村長、村医師が私の家に集まり、翻訳し続けた冒険譚を祝ってくれた。
「ほ…ほぅ……なんと、心躍る……いや……魔物に立ち向かう勇者……」
「ああ、なんてすごい……挿絵がなくとも情景が目に浮かぶ……何とも素晴らしい作者だ。これを読み上げる朗読劇なんかあったら、子供たちも素晴らしい勇者の子孫だと信じられるだろう」
「いや、でもこれは国境を2つ越えた先の国だし……」
老いも若きもうっとりと私が訳した本を抱えているが、子孫?先祖?どういうことだろうと訝しく思う。
「あれ?先生は古代語に長けていらっしゃるのに、歴史には疎いのですか?うふふ~……あのですね?」
「元々、この国の国王陛下と、2つ先の国の王様は同じご先祖様なのさ。えぇと……確か、間にある国のお姫様が妖精姫、だったかな?仲の悪い兄弟だった2人の王子の仲を取り持つため、元はひとつの国だったのを3つに分けて、1つは兄王子に、1つは弟王子へ、そして真ん中の国には自分の眷属である魔法使いを住まわせて……」
「もう!私が言おうと思ったのに!……だから、3つの国は『ローシャル公国語』を共通語とするんですよ。ほら、名前だって『ローシャル・ダヴィッテ国』と『ローシャル・ルーフェル国』って、人の名前みたいでしょう?」
得意げに広げられた地図を見れば、確かに正式名称が綴られている。
私の前世たちは国の成り立ちを覚えるよりも生きることに必死だったり、今いる『ルーフェル国』からさらに先の国なんて地の果ても同じくらいの感覚だった。
「そう……ですよね?そうか……私はこの家に戻ることしか考えてなくて、言葉がちゃんと通じるかどうかすら忘れていましたよ!」
同じ国の中だけで転生していたわけではなく、どういう仕組みかわからないけれど、私は様々な国に産まれていたのだ。
「まあ!先生ってば!私よりずっと若いのに、何だかこのおうちの方に縁があるような言い方ですのね?」
「えっ……あっ……ああ!そう!そうなんです!!じ、実は、私の母方のその……お祖父さんのお兄さんがいろいろと難しいことを研究したいと家を出て、この家に住んでいたと……古代語の辞書とか珍しい本があるから、いつか訪ねてみるといいと言われていたんですよ~。あ、ははははは………」
苦し紛れとしか言いようのない言い訳だが、意外にも皆はあっさりと信じてくれた。
──というよりは。
「いやぁ……ある日突然、もう使われていない古道に小さい家が建っていると言われて……見たこともない少年が村に買い物に来て、後を付けたらこの家に入っていくのを見た者がおるが、どうしてもこの家に近付けん…と。なのに、ある日パッタリと村には来なくなるし、王様から探索者たちが派遣されてくるわ……」
「いやいや、本当に。上質な薬草を売りに来てくれて助かっていたのに、突然姿を消したかと思ったら、本を抱えたまま眠るというよりも意識のないお前さんが担ぎ込まれてくるんじゃもんなぁ」
村長と村医師が揃って頷く。
なるほど──うっかり家に入られては困ると思い、私は家自体の封印は解いたが、周囲の結界を消さずにいたので怪しく思われていたらしい。
「ま、それも私がいたから何とか解けて、先生を助けられたんですけどね!」
リラがふん!と胸を張るが、可愛らしいその姿はまるで妹のようであり、私の結界を破れるほどの大魔力持ちとはとうてい思えなかった。
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