すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、転生する。

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私自身の秘密を知ること──それと、この家で知る知識は、別物だと何故かずっと思っていた。
おそらくその判断が間違いだしたのは、私自身の過去を引き継いだ魔力を吸収できる本を触っても、彼らに影響がなかったからである。
だがそれとは別に、私が何度も繰り返してきた人生を──文字に残された物だけだとしても──触れた人によっては知られてしまうのかもしれない。
それはとてつもない恐怖で、思わず私は呆然とした。

知られることが怖い──いや、恥ずかしさもあったが、知ったことでどうなるのかわからないことが怖い。
まさかと思うが、何らかの『呪い』のようなものが発動してしまうのかもしれない。
あの『魔王』に限ってそんなつまらない真似をするとも思えないが、「魔王に付きまとう人間を排除するために、関わりのある者までも排除する」と考える魔族もいるかもしれない。

「……いや、それは……ない、かも……」

何故か魔王が現れる時はいつでも単独で、私も仲間も敵わなかった。
それだけ圧倒的な強さの差があったのである。
むろん魔族に使役されている魔物や魔獣など、言語的に会話の成り立たない者たちに対しては問答無用で戦いになってしまっていたが──逆にそれを魔王が割って入って止めることはなかった。

でも──だとしたら──なぜ───

『お前に関わって、お前のことを覚えておきたい……そんな奇特な人間がいたら、俺が選別してやる』
「は?」
「先生?」
「師匠?!」
空耳か?
私は空を見つめていた視線を元に戻す。
私の傍にいるのは、リラ、ローレンス、マーリウス。だけ。

奇特な人間。

「あは………」
ポツリ、と小さな破裂音がした。
あは…あはは……ははははは………ありがとう……
「……どう、いたしまして」
「私とマーリウスにとって『我が家』はここと決めています」
「というか、どうせ俺たち天涯孤独ってやつ?祖父様、祖母様、二親とももういないし、『双子は』と勝手に親戚から縁切られてるし」
「え?本当?あなたたち、親御さんいないの?!恋人は?」
「え……あ、いや、いません……少なくとも、マーリウスには『薄茶色の髪が陽に透けると金色に輝いて綺麗』と言ってくれるような女性が幾人もいましたけど……私はこのとおりこげ茶の髪が辛気臭いとかで」
「嘘つけぇ!お前が気が付いてないだけなんだって!『まるで小さい子供が持つクマちゃん人形みたいで可愛いの!どうして気付いてくれないのぉ~』って悶えてる生徒もいたんだぜ?」
「……生徒って、13歳か14歳の女の子だろう?それはモテるとは言わない……」
私にはそのやり取りがおかしくて、ボロボロと泣きながら笑ってしまうという器用なことを無意識にやってしまい、何故か本を訳すよりも、全員で泣いたり笑ったりと忙しい日になってしまった。

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