すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、転生する。

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『家族』が増えて平和に流れた5年もの月日──私の家以外には何もなかった古道はきちんと整備され、結界から歩いて15分ほどの距離に学び舎が建てられた。
そしてそれに伴う寄宿舎が建てられ、そこに住む生徒たちや使用人のための小さな商店が建ち、服屋が小さな店を構え、休日には料理を出してくれる小さな料理店が、寄宿舎に入っている生徒たちの親が会うための宿屋ができ、小さな集落ができた。
そこの初代集落長に任命する──という話は丁重に断り、私は代わりに双子を共同代表者として推薦したのである。
相談と指導役はリラ。
そして学び舎ではリラが校長、双子が副校長となり、新たに魔術や言語学、計算などを教える教師たちも雇うことができた。
「……さぁて!」
パンッと手を叩き、ある月の明るい晩、リラは私とローレンス、マーリウスと順に顔を見、ウンとひとつ頷いた。
「ローもマーもそれぞれ結婚し、子供も生まれ……私の息子もこちらに引っ越して来れました。もうこの集落は大丈夫です!」
「えっ…あっ?えぇと?はい……?」
「な・の・で!」
「師匠に、私たちからプレゼントです!!」
「これ作るのに3年もかかっちまった……」
ローレンスからは旅用のローブ、マーリウスからは綺麗な青水晶をはめ込んだ杖を手渡される。
「私からは……これを」
そう言ってリラが差し出してくれたのは、綺麗な新しい革を張ったけれど、下地は十分に使い込まれた腰に巻くタイプの鞄である。
「私の恋人が……遺髪と共に私の元に帰ってきたのが、これです。本当なら彼の髪を縫い込むべきなんですが……」
「ヒィッ!!それは怖いって!!死んだ人間の髪はヤバいって!!」
「わかってますよ!魔力の強い人間なら、死んでそんなに経ってなければ十分威力はありますけど、もうよんじゅ……ウゥンッ!と、とにかく、彼のは私にとって大切な遺品のひとつですから、そんなことに使っていません。代わりに、皮をなめすのにこの家の井戸を使い、庭に生えている木の皮で染め、葉から零れる陽の光を当て、家の中を吹き抜ける風で乾かしたんです。この家からの恵みがたっぷりと詰まった皮革を足して作った、新たな先生専用の亜空間収納鞄マジックバッグです!」
「そんな大切な物を……な、何故……?」
突然贈られた物は、どれもこれも私にとって嬉しい物ばかりだったが、それらをもらう理由がわからない。
そう思って私を見つめる3人を見つめ返すと──
「……だって。先生は、『魔王』に会いに行かれるのでしょう?会う約束をされているのでしょう?いいかげん、あちらも待ちくたびれてますよぅ」
「もうこの家も、学び舎も、集落も、私たちにお任せください!」
「おーぅ!絶対師匠の秘密は漏らしたりしないし、俺たちに引き継がれたものを再び見失うことなんかさせない!安心して行っていいんだぜ!」

ああ──私は、何度も生まれ変わり、何度も裏切られ、だけどもこうして素敵な人たちに会うこともできた。

初めと変わらない。
見た目は確かに皆5年分の歳を取ったかもしれないが、精神は、心は、出会った時のまま。
私はいつでもリラに救われた時の18歳に、そしてローレンスやマーリウスと出会った20歳になり、そして彼らもまたその時と同じ顔になり──私の旅立ちを、祝福して背中を押してくれたのだった。

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