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賢者、王都に旅立つ。
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「第一……?」
改めて私についた称号について、ティグリスが疑問の表情を浮かべる。
「あー……」
どういえばいいのかと逡巡するが、別の貴族がティグリスを制してくれた。
「賢者パトリックは『ローシャル・ダヴィッテ国』と『ローシャル・ルーフェル国』及び妖精国『シェリエム国』の3国からある専門的な問題を依頼されていましてね。先ほど彼が言った『機密』に当たるので口外できないのだが、その第一任者という立場であると共に、消去前には15歳から冒険者としてダヴィッテ国からこのルーフェル国まで横断した実力者であることは、間違いなく私が保証するよ」
「……あなたが?」
キッパリと言い切るその貴族の顔を見るが、記憶に掠ることもない。
「ええ。あなたがいくつもの商人の護衛を務めながら3国を渡っているのは有名でしたよ。あの頃は『見習い賢者』という称号でしたが、どうしてどうして……あなたのおかげで幻術の森も被害なく通り抜けられたと私のお抱え商会の者が話していたので、次にもお願いしようと思っていたら、届けてもらった町のギルド所属ではないと聞いてガッカリしていたんです。『もし町で見かけたら、必ず専属にならないかと声を掛けるように』と命じていたぐらいですから」
「は、はぁ……」
はっきり言って護衛を引き受けた数は10件を超え、しかも私のかつての家に辿り着いてからまた10年以上経っている。
いったいどこの町の商人だろう──
金儲けを大っぴらにするのは沽券に関わるという貴族も多いので、後ろ盾がどの家かということを明かさない商会であれば、仕事を請け負ってもギルドは教えてくれない。
「ま、ま、ま……それは我が商会も同様。領地も然り。しかし大賢者殿ともなれば、今後はもっと活躍されるでしょうから、ひとり占めはますます許されなくなりましょう」
取りなしてくれた貴族の縁者もどうやら私が手助けしたらしいが、本当に心当たりがありすぎて迂闊に返事はできない。
それにしても気になったのが、彼が言った『大賢者』という称号である。
「あの……私は『第一賢者』という称号で、『大賢者』ではないのですが……」
恐れ多い、というのではなく、『大賢者』というのはある意味幻のようなものだ。
よほどのことがなければ与えられることはない。
例えば──勇者パーティーで魔王討伐を果たすとか。
バッと私がミウとティグリスの方へ顔を向けると、今度こそハッキリとふたりは顔を逸らした。
「……す……すいません……仲間に手紙を送って、冒険者ギルドマスターからも王都冒険者ギルドに問い合わせも行った結果……その……パトリック様のことが判明して……その……」
モジモジとミウが言い訳のように話すのを、ティグリスが補足してくれる。
「こいつの『他の賢者あるいは錬金術師の採用は待ってほしい』の答えは『戻り次第、冒険者パーティー5人で王宮へ来るように』だ。そしてこの町を発つ目途がついたら、その時に『大賢者』の称号へ更新せよという王命までもらったぜ。この俺が!」
ビシィッとティグリスが自分の胸を指すと私の傍にいたリアムは純粋に感嘆の眼差しを向けたが、そこを突っ込むべきかどうかと一瞬だけ悩んだが、彼の『リアムと妹を養子にしたい』という希望を叶えるべくの見栄張りだと理解し、口を噤む方を選んだ。
少なくともリアムたちが本当の両親のもとに返されるのは無益で有害ですらあるというのは、私たちふたりの認識である。
そしてけっきょくのところ私の意思如何に関わらず、私とミウが出会ってしまったことで、私の進退は決まっていたも同然だったらしい。
改めて私についた称号について、ティグリスが疑問の表情を浮かべる。
「あー……」
どういえばいいのかと逡巡するが、別の貴族がティグリスを制してくれた。
「賢者パトリックは『ローシャル・ダヴィッテ国』と『ローシャル・ルーフェル国』及び妖精国『シェリエム国』の3国からある専門的な問題を依頼されていましてね。先ほど彼が言った『機密』に当たるので口外できないのだが、その第一任者という立場であると共に、消去前には15歳から冒険者としてダヴィッテ国からこのルーフェル国まで横断した実力者であることは、間違いなく私が保証するよ」
「……あなたが?」
キッパリと言い切るその貴族の顔を見るが、記憶に掠ることもない。
「ええ。あなたがいくつもの商人の護衛を務めながら3国を渡っているのは有名でしたよ。あの頃は『見習い賢者』という称号でしたが、どうしてどうして……あなたのおかげで幻術の森も被害なく通り抜けられたと私のお抱え商会の者が話していたので、次にもお願いしようと思っていたら、届けてもらった町のギルド所属ではないと聞いてガッカリしていたんです。『もし町で見かけたら、必ず専属にならないかと声を掛けるように』と命じていたぐらいですから」
「は、はぁ……」
はっきり言って護衛を引き受けた数は10件を超え、しかも私のかつての家に辿り着いてからまた10年以上経っている。
いったいどこの町の商人だろう──
金儲けを大っぴらにするのは沽券に関わるという貴族も多いので、後ろ盾がどの家かということを明かさない商会であれば、仕事を請け負ってもギルドは教えてくれない。
「ま、ま、ま……それは我が商会も同様。領地も然り。しかし大賢者殿ともなれば、今後はもっと活躍されるでしょうから、ひとり占めはますます許されなくなりましょう」
取りなしてくれた貴族の縁者もどうやら私が手助けしたらしいが、本当に心当たりがありすぎて迂闊に返事はできない。
それにしても気になったのが、彼が言った『大賢者』という称号である。
「あの……私は『第一賢者』という称号で、『大賢者』ではないのですが……」
恐れ多い、というのではなく、『大賢者』というのはある意味幻のようなものだ。
よほどのことがなければ与えられることはない。
例えば──勇者パーティーで魔王討伐を果たすとか。
バッと私がミウとティグリスの方へ顔を向けると、今度こそハッキリとふたりは顔を逸らした。
「……す……すいません……仲間に手紙を送って、冒険者ギルドマスターからも王都冒険者ギルドに問い合わせも行った結果……その……パトリック様のことが判明して……その……」
モジモジとミウが言い訳のように話すのを、ティグリスが補足してくれる。
「こいつの『他の賢者あるいは錬金術師の採用は待ってほしい』の答えは『戻り次第、冒険者パーティー5人で王宮へ来るように』だ。そしてこの町を発つ目途がついたら、その時に『大賢者』の称号へ更新せよという王命までもらったぜ。この俺が!」
ビシィッとティグリスが自分の胸を指すと私の傍にいたリアムは純粋に感嘆の眼差しを向けたが、そこを突っ込むべきかどうかと一瞬だけ悩んだが、彼の『リアムと妹を養子にしたい』という希望を叶えるべくの見栄張りだと理解し、口を噤む方を選んだ。
少なくともリアムたちが本当の両親のもとに返されるのは無益で有害ですらあるというのは、私たちふたりの認識である。
そしてけっきょくのところ私の意思如何に関わらず、私とミウが出会ってしまったことで、私の進退は決まっていたも同然だったらしい。
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