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賢者、魔王と再会する。

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だが目を瞬かせたその瞬間に魔王の姿は、まるでそこにいたのが嘘のように消えていた。
「なっ……」
私たちは円になり互いに向き合うように武器を構えているだけで、そこに『誰か』がいたという証拠は『人為らざる』魔力のみである。
「ア、ア、ア、ア………」
カタカタと歯を鳴らし震えているのはミウだけでなく、短剣を構えているラダも同じく、歯を食いしばっているデューンは何とか恐怖に負けそうになるのを堪えている。
ただひとり──私だけが正常で、平常で、そして異様だった。


「……これを聞いては、いけない…のだろうか……」
いつになく真面目な言葉遣いでケヴィンが私の方を窺いつつ、皆が聞きたいことを聞いてくる。

私は──

「私はあの『魔王』と呼ばれるモノと、互いを認識し合う仲……ですよ」
「そっ…それはっ……」
バッと距離を取り、剣を構えるその速さはさすが『勇者』である。
だが、私自身は人間の敵では──少なくとも、彼らの敵ではない。
自然死ももちろんあったが、私が生を終えた多くは、若年のうちに魔王と対峙した際にあっさりと切り捨てられたり、同族であるはずの人間から与えられたもの。
そうなった私は今頃『ヒト』を恨んで、幽鬼アンデッドとして現世を彷徨う者になっていてもおかしくはなかろう。
だが私はいまだ人のままで、何故か魔王は姿かたちの変わる私を追いかけるように現れるのだが、それをどう説明していいものか。
「だが私自身は魔族と通じ合う者ではないですよ」
「そっ…それを信じろとっ……」
「ええ。何故かアレに付きまとわれているのですが、理由まではわかりません。そしてまたアレが何故私に危害を加えようとしないのかも、またわからない……だが……」
「まるで、アレは……あの、『魔王』は……人間に危害を……?」
「どうでしょうね。たまたま私を何か『面白いモノ』と認識しているために生かしてはいるが、他の人間に対してそこまで興味があるのか……」

『いいかげん、魔族になれ』

アレはどういう意味だったのか──


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