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第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する
1:冷静に「悪役令嬢あるある」を分析し始める
しおりを挟む「うぅ・・・」
窓から差し込む朝日で目が覚める。
瞼をゆっくりと開けると、そこには知らない天井と天幕があった。
あら?
ってことは『私は悪役令嬢に転生した。』で、決まりね。
(→注意:早すぎます。もう少し冷静に行きましょう。)
「アティスお嬢さま・・・・!お嬢さまがお目覚めになりました!」
壁に控えていた侍女のエレーナが慌てて部屋から駆け出した。
何日か眠っていたのだろう、喉はカラカラだし、体がえらく重い。
でも、そんな自分に鞭打って確認しなければいけないことがあった。
それは夢にまで見た悪役令嬢もの恒例シーン、
『まさかの私が美少女転生?!』の儀式である。
のっそりと寝台から這いでると、期待を胸に鏡の前に立つ。
「おぅ・・・。」
日に当たれば星屑のように輝く、青味をおびた白銀の糸。
瞼を開閉するだけで風を切る長い睫毛。それに隠された少し目尻のつり上がった瞳は、まるでアメジストのようである。
紛れもない、テンプレ麗し美少女がそこにいた。
そうそう、感動しているところ失礼します。
私は”悪役令嬢もののおかげで覚えることができました”の一つに宝石の名前という項目があります。以前は、お高いものだと思い全く興味がなかったのですが、攻略対象たちのイケメン具合を把握するために、宝石の名前をいちいち調べ画像と想像とを行き来しておりましたところ知識として吸収するに至りました。
その際は悪役令嬢ものの作者の皆さま、ありがとうございました。
アメジスト、琥珀、トパーズは頻出ですよね!(キラーン)
さらに宝石も然りではありますが、
悪役令嬢ものは、華やかな単語が頻出します。読んでいるだけで気持ちが晴れやかになれる、そこも魅力と言えるでしょう。例えば、可愛らしいものだと花にハーブの名前、ドレスやフランス菓子のお話も忘れちゃいけませんね。そして恒例行事で必ず舞踏会があります。シャンデリアの映える会場に貴族が住む大きな洋館。
まあ、何よりもの想像の保養はイケメンたちですが!!
「おぉ!!アティス・・!!大丈夫なのか?」
「お嬢さま、そんなにすぐ起き上がれては体に障ります!」
私と同じ青みがかった白銀の糸を後ろで束ね、光を抑えた琥珀色の瞳を大きく見開く麗人。この方が、お父様こと、ハーベル公爵家党首ダリス・ハーベル氏。
どうやら、私に転生されて乗っ取られる前の”アティス”の記憶で見たところ、今までろくに会話してこなかった見たい。お父様が実は隠し攻略対象とか、お父様の溺愛が激しいすぎるのですが…と言うパターンもある程度の頻度で拝読しているけれど、今回は違ったみたいだわ。残念…
3日間風邪で寝こんでいたアティスは、意識を失っている間に、転生者の私へとすり替わっていた。これはいわゆる、二つの魂は少しずつ一つの魂へと融合されて行く・・とかなんかだと思う。現段階では、生きた時間が長い”私”の意識が色こく出てしまっているというありがち設定だと勝手に解釈していた。
その後、お父様は「これ以上心配をかけるな。」と一言吐き捨て部屋を出て行き、エレーナはそんなお父様の姿に呆れた表情をして見せた後、慣れた手つきで温かい紅茶を淹れてくれた。
相変わらずのお父様にはがっかりだが、反対にエレーナはとても優しい。
(→警告:従来の悪役令嬢ものは、自分の入り込んだ乙女ゲー世界について省みて絶望する時間です。)
おっと。
悪役令嬢ものの分析が好きすぎて、乙女ゲームのことをすっかり忘れていた。
このゲームは確か推理系乙女ゲーム”The Joker is next to you”略して“ジョカ横”だ。攻略対象4人の中から一人選ぶのだが話の選択肢によって、毎回ジョーカー役が変わり、ジョーカー役を選んでしまうと主人公でさえバッドエンドを迎えてしまうというババ抜き系乙女ゲーム。乙女なのか婆なのか・・・。
この乙女ゲームは推理が必要なため、分析大好き!な私としてはもってこいのゲームだった。でも、転生前にやり込んではいなかったことが悔やまれる…
まあ、ゲーム予備知識ない人でも無事悪役令嬢として生き延びた話は何本も聞いたことあるし、きっと大丈夫よ!
よし!!これから私の命をかけたババ抜きが始まるのね・・・!
(→警告:前世で死んでしまった理由を思い出し、ますます今世では死にたくないと意気込むところです。命をかけた・・などという挑戦的な態度はやめておきましょう。)
さっきから(→)さんがうるさいのですが、あなたなんなんですか…まあ悪役令嬢に転生できたこの際、どうでもいいか…
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