7 / 55
第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する
7:[閑話]〜竜人とお姫様のものがたり〜
しおりを挟むあれからお母さまとのレッスンは続いている。
今日はお母さまが“恋のレッスン”ということで恋話の本を渡してきた。
これでも読んで心を潤せと。
あー、これお母さまの大好きな…
(→解説:これより、ファンタジー大好きお母さま一押しのものがたりが始まります。)
+++++
深い森に囲まれたとある小さな王国にそれは美しく、冷徹なお姫様がいました。
お姫様は、幼い頃から恐ろしいほど聡明で、子供とは思えない性格の持ち主でした。
一方、彼女の父であり王である人は、感情の起伏が激しく、政にはあまり向かないと評判の人でした。そこで、彼女は、自分を嫁がせないことを条件に幼い頃から父の手助けをしていました。例えば、手の凝ったとんでもなく美味しいお菓子を特産品として貿易したり、清潔剤を売ったりして国の生活水準も底上げされていきました。
もしもーし…姫は、転生者さんですか?
子供と思えない性格、便利品ポンポン思いついちゃう方~
っていうか、婚約したくなかったって、絶対、姫に転生したから自由なライフを送らせておくれって意思表示・・・笑
(→注意:話の邪魔です。黙ってください。)
しかし、殊更に美しく有能な彼女を世の男性が放って置くわけもありません。彼女は父に裏切られ無理やり他国の王子と婚約させられてしまったのです。彼女はそんな現実に戸惑い、亡命をしようと試みます。
この国は深い森に覆われており、そこを抜けなければ他国には行けません。彼女は少量の荷物を鞄に詰め込むと城をあとにしました。
森を進むにつれ現れる凶暴な魔物に、チート魔法で抵抗しましたが、あまりの数に耐えきれず、とうとう魔力の限界に達した姫は、あまりにも疲れていたのか、湖のほとりで眠ってしまいました。
何刻経ったでしょう。突然、水面が大きく揺れる音で、目を覚ました彼女は、思わず息を飲み込みました。
なんとそこには、月明かりで鱗をきらめかせた、真っ白なドラゴンがいたのです。ドラゴンは目を細めて満月を見つめています。彼女は、美しいと感じるのと同時にとてつもない恐怖に駆られていました。
---いままでの魔物たちとは比べものにならない、
私はここで最期を迎えるのか。---
彼女はそう覚悟を決め意識を手放しました。
+++
「お嬢さん!大丈夫ですか?」
私が意識を取り戻すと、そこには美しい男性がいた。
彼は、とても優しく親切なのに、少し怖いような気がしてしまう、不思議な人だった。
彼は表情が豊かで、愛嬌があって、ユニークで、私の足りなかった心の隙間を埋めてくれる存在だった。
自分が国を出たいこと、これから何もあてがないことだけを最小限に伝え、別れようとすると出会ったばかりの関係なのに、私と共に来てくれることになった。
私は、理由もなくうれしかった。
+++++
こうして、姫と心優しい男性は他国に渡るたびに新しい品物を開発し広め、彼女たちが過ぎた後の町は必ず栄えていきました。
+++++
+
+
+
ある夜、彼が倒れた。
ここ最近忙しく徹夜続きで、「ブラック○○だー」と意味のわからないことをほざいてしまうほどに二人であくせくしていたからだろうか。彼を布団に寝かせ、差し込む月明かりが彼の頬を強く照り返した。よく見ると彼はだいぶ痩せこけていて、最近彼を気にかけていなかったことに反省していた。
すると、みるみる彼の体は小さく、そしてしなやかな鱗で覆われていき、最後には綺麗なドラゴンが横たわってい流ではないか。
私は、この光景に驚き、そしていつしか見たあの竜が彼であることを悟った。
はじめは優しい人間だと思っていた彼にさえ恐怖を覚えていたのに、今の私は。
本当の彼の姿を知ってもなお、彼と離れたくない。
次の日、ドラゴン姿の彼は、私が目の前にいるのを見て目が飛び出そうなほど驚いていたが、そのあとの私たちはもっと…お互いに素直になれた気がする。
+++++
次々と廃れた町に息吹を吹き込む、二人ずれの噂は、とうとう姫と竜人が旅をしているという真実へと辿り着き、王国、貴族、商人たちの取り合いに発展した。
そんな様子に辟易した二人は大陸を横断し、海を越え、新しい土地に降り立つ。
その場所は、二人が出会った深い森に似た森に覆われた場所だった。
二人はそこで結ばれ、小さな王国を作った。
その国の名は「ラティス」という。
-THE END-
もしもし、それこの王国の名前じゃないですか!
なに?
これ建国史だったの?
こ、こここここれが?!!!!
(→サイレントボイス:こんなのが…)
それにお母様、冷静に言わせていただきますが全然恋愛のレッスンに向いている内容とは思えません。まず、彼氏ポジションの人の疲れ、やつれに倒れるまで気づかないって…それでもヒロインいいのかい?!!それにドラゴンに体力で勝っちゃうって…。まあ、ヒロインはブラック就職済み者だから経験値が違うか…。
お母様、恋愛の足しには全くなりませんでしたが、転生者が過去にいたことは収穫でした。
安心してください、お母様。
こんなスローで鈍感ヒロインの恋愛の進め方なんて、私は致しませんよ。
(→警告:冷静に分析するという目的を失わないでください。)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる