悪役令嬢の冷静分析録〜ババ抜き系乙女ゲームの世界で〜

にんじんうまい

文字の大きさ
9 / 55
第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する

9:冷静に新メンバーにお目通りする

しおりを挟む


例のお茶会が、あと三日に迫ったある日。
私の家に新しい家族がやってきた。

車椅子に乗った清楚な少女。
中庭をどこか遠い目で見つめる彼女の体をそよ風がそっと撫でる。
お母様も乙女的見た目をしているが、この少女は、か弱そうで、誰しもが守ってあげたいと自然に思ってしまうような乙女だった。

私が少女に見惚れいていると、はっとこちらに気づいた彼女は、私に向かってペコっとお辞儀をした。彼女からさらりと美しい白銀の髪が流れる。

ひょいとあげた顔は、薄ら痩せこけていて、私を覗くルビーのような瞳は…なぜか焦っているようにも見える。



「お、おおお姉さま。お、お初にお目にかかります、妹のアンジュにご、ございます。」



(→挨拶:はじめまして。あなたの姉アティスです。どうぞよろしく。)



ちょうどいいところにA I(転生前アティス)!!
アンジュの情報ファイルをくださいな!


[情報ファイル]


名前:アンジュ
年齢:8歳
ルックス:白銀の髪にルビーの瞳
ステイタス:ヒロインサポーター枠
好きなもの:寝ること
嫌いなもの:療養所
  ・
  ・


アンジュは一つ違いの妹で、生まれた時から体が弱く、すぐに公爵家から療養所にうつされ、この家では数えるほどしか見かけていない。しかも毎回会う前に彼女は就寝してしまうので、今回私はアンジュの姿を初めて見たと言ってもいいだろう。ちなみに彼女がやって来たその療養施設は、我が公爵家が管理している最先端技術を備えた場所だそうだ。


「あ、ああああのう…」


そういえばA Iが勝手に脳内挨拶してくれてたから忘れてたけど、ちゃんと生身の状態で挨拶してないんだった…と思っているところに、お父様とジェイがアンジュを迎えにやってきた。



**



二人は私とアンジュを交互に見た。
突然、お父様が急に睨みをきかせてくる。


「アティス、アンジュに何かしていないだろうな」


そんなわけないじゃん!!ひどい、お父様!
悪役令嬢?の補正なのかわからないけどすぐアティスは誤解されちゃうのね。
大丈夫そんなことしないから!




「いいえ、なにも。それよりアンジュ、挨拶遅くなり大変申し訳ありませんでした。こんなにも私の妹は美しいのかと少し見惚れてしまっていましたのよ。あなたとは長い間共に過ごせなかった分、これからは姉として力になりたいと思っているわ。何かあったらなんでも私に言ってちょうだい。そして、どうぞ、よろしく。」




アンジュは口をぽかんと開けたまま私を見上げ固まっている。
少しお間抜けさんな妹の表情がまた可愛い。
お父様もジェイも一瞬驚いていたようだけど、お父様は場が悪いと思ったのか、


「さあ、行くぞ。セバス、アンジュをまず応接間に通せ。」

「かしこまりました。」


と言ってその場を去っていった。




そうそう、だいたい筆頭執事の名前は「セバス」で決まりよね。




ジェイもその後に続くが、その間際に

「お父様に勘違いされるところは…相変わらずですね。」

と嫌味を耳打ちされるのだった。



***




応接間に移動すると、お父様、お母様、そしてジェイが、既に打ち解けたのかアンジュと親しげに談笑していた。
はたから見ると、私よりアンジュといる時の方が本当の家族みたいに見えるんじゃないだろうか…そう、一人でしょんぼりしていると、


(→警告:冷静になりましょう。アンジェはずっと家族と離れて生活していました。寂しい思いをしていたことは、この私でさえわかります。両親が優しく接してあげたいと思うのは当然です。)



A I…私の心のフォローまでしてくれるなんて…大好き!


(→!?!)




「アティスちゃん!これで家族全員揃ったのね!夢みたいだわ!やっと我が家の本スタートが切れるのよ!!」



その後、家族水いらずでお茶会をすることになった。
お父様は普段家にはいない時間帯だが、今日は特別らしい。
意外に家族思いなところあるじゃん。
基本、アンジュが中心になるようにお母様が話題を振り、会話が進む。
さすが社交界の華と呼ばれたお母様…!!

どうやらアンジュの話を聞いていると、療養所に年近い子はおらず、一人で毎日中庭を眺めるか、読書をするか、寝るか、という生活を送っていたらしい。



「あら!読書が好きなのね!!私もそうなのよ~!!どんな本を読んでいたの?」


「そうですね…竜人様とお姫様の…」


「偶然!!私もそのお話が大好きなのよ!娘と気が合いそうだわ!!体が軽い時にぜひ私のお部屋にいらっしゃい!!あなたの好きそうな本がたくさんあるから!!」


「ぜ、ぜひ!!!うれしい…!お母様!!」




そ、それそんなに面白い話かな…。あの話、正確に、そして現代風に名前つけるなら、



(→タイトル:転生したら私がお姫様?!
~えっ?まさかの婚約??そんなの聞いてないんですけど…気づいたら竜人と気ままに建国してた~)


そ、それ!そんな感じ!よくわかっていますね、A Iは。





「ところで、アティスちゃん!あなた、3日後のお茶会に参加するんですって?あんなに断っていたのに…あなたが成長してくれてお母様は嬉しいわ!!そこでね、アティスちゃんも初めてだし、アンジュちゃんも初めてってことで、二人で参加してほしいのよ!!」



えっ?
私には、ヒロインとお近づきになる作戦があるのに…大丈夫かな。


私が、少し驚いた顔をしていたのを見られてしまったのか、急にアンジュがショボンとした。



「あ、あのう…私のようなものと一緒にお茶会に参加されては…お姉さまに失礼ではありませんか…」


「なに?私のようなもの…やはり、アンジュに何か言ったのか?」


「あなたは少し冷静になってくださいまし!アティスちゃんは見かけは少し怖いかもしれませんが中身はとてもいい子なのですよ!!」



お母様、私を庇ってくれてありがとう、そして見た目は怖いに若干傷ついています…。


(→警告:感傷に浸っている場合ではありません。早く返事をしてください。)



「もちろんですとも。私は見た目はたとえ悪役にしか見えなかろうと、こんな可愛い妹に嫌がらせをするような令嬢ではありませんわ!お茶会はぜひとも二人で参加いたしましょう!!」



言っちゃったー!!勢いに任せて…。
なんとか計画成功できるように頑張ります。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...