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第1章:冷静に悪役令嬢アティスを分析する
15:冷静に軌道修正に取り掛かる
しおりを挟む衝撃的未来をクシュナに教えてもらった私は、速軌道修正に入ることにした。
翌朝、起きてすぐ自邸の図書室に向かう。
楕円形の部屋で、壁に沿って本がずらりと並べられている。
私は植物系の欄に移動し、薬草の本を片っ端からかき集め、広げた。
薬草辞典を開き、ときわすれの花を調べ始めた。
なにやらいろんな成分のことについて書かれているが、全くわからない。
物知りA I(転生前アティス)さーん。何か知りませんか?
(→忠告:私はあなたの前世でいうhey!〇〇とは違うのです。なんでも知っているわけではありません。)
そっか。ごめんごめん。
「うん?君、どうしたの?」
だ、誰だろう…この美人。
スラットした手足に、女性にしては高い身長。
その身には、真っ白な生地全体にそれまた真っ白な糸で刺繍が施された…こう、神官たちが着ていそうな衣装を纏っている。
首を傾げた彼女からは、星を散らしたように光豊かに輝く白銀の髪が流れ、
湖のそこのような澄んだ青色に吸い込まれそうになる。
人間を超越した容姿に心底震えた。きっとA Iも感心しているに違いない。
「あの、あなたはどちら様でしょうか」
「私は、ちょっとこの家にゆかりのある者でね。こうして時々図書室に隠れてきているんだ!アッ、私と会ったことは、秘密ね。それで、君はここで何か調べ物?なんか難しそうな顔してたけど?」
美女に顔を覗き込まれた。
それもじーっと私の顔そしてなにやら全体を見られている気がする…。
私、思考停止します…。
「うーん。どれどれ‥薬草について調べているのか。こんなに小さいのに偉いんだね、君は。感心感心!でも、こんな難しそうな単語わかっちゃうのかい??」
「いいえ。それが、私もなんの成分なのかよくわからなかったのです…この、ときわすれの花についてどうしても知りたくて…」
「それは私にもわからないな…あっ、そうだ!ドリスに聞いてみたらいいじゃないか!ドリスを紹介するよ!はい、手つないで!」
彼女がニコッと手を差し伸べた。
「へっ?」
すると視界がぐるっと回った。
これはきっと空間転移魔法に違いない。うっ気持ち悪い‥
***
気づくとなにやら石壁でできた塔のようなところにいた。
ちょうど目の前にある窓から外を見ると、なにやら見たことがある庭…ここ、もしかして子供のお茶会の時にきた王宮??
「で?ファイ。誰なんだそこにいる小娘は。」
「よお!ドリス久しぶり!紹介しよう!この子は‥??」
「アティスです。」
「そう!アティス!」
「お前、名前も知らないのに連れてきたのか?仕事の邪魔だ、帰ってくれ。」
ドリスさんというらしい方は、青い髪に青い瞳、そして片方に丸メガネをかけた研究員さんぽい人だった。
「待って待って。実はアティスがね、ときわすれの花について知りたいんだって!何か知っているなら教えてあげてくれないかな??」
「また妙なものに興味を持つものがいるのだな‥、
いいだろう…。
ときわすれの花は、別名:異界からの招待状という。
君みたいな幼な子は知らないかもしれないが、この花はよく精神病棟や療養所の近くに植えられている。
それは、その胞子が風に舞い患患者が自然とそれを吸い込むと、一時的に気持ちや症状が落ち着くからなんだ。
この花の胞子は,少量なら構わないが、多用すると幻覚症状を引き起こすと言われている。
まあ、胞子というのは空気中にすぐに舞うもの、一度に大量に吸いたくても吸うことはできないし、そんなこと試したことのあるものはいないだろう。
なんせ、胞子を発する時期は不特定で、季節に関係しない不思議な生態を持つ花だからな。」
意外と素直にドリスさんは教えてくれた、案外いい人なのかもしれない。
でも、聞けば聞くほど怪しげな花だ。是非とも妹から早く遠ざけてしまいたい。
(→提案:アンジュにこのドリスさんを紹介してみては?危険な研究にならないように監督させるのです。妹の研究をもし辞めてしまったら、未来彼女は自分の薬で救われるのにそれも無くなってしまうのでは?)
うーん。
まだこのドリスさんが、確実に信用に値する人かわからないけど…私もその方がいい気がしてきたな…。
「あれ?アティス!もしかしてドリスのこと信用してない??大丈夫だよ、ドリスは研究ばかだけど、ちゃんと人間らしい?分別の弁えた男だ!まともだ!それだけは私が保証する!!」
「ちょっ‥お、おい!」
ドリスさん、顔赤い。
まあ美女にそんなこと言われて背中ばしっって叩かれたらそういう態度にもなりますわ‥。
それにしても
なぜ、この美女ファイ様は、私がドリス様を疑っていることが判ったのでしょう。日頃のマナー訓練によって、表情に現れないようにしていたつもりだったのですけど‥。まあ、今そんなことはどうでもいい。
ドリス様に妹のことを打ち明けてみよう!
「あのう、ドリス様。
私が、その‘ときわすれの花’について興味を持ったのは、私の妹がそれについて実験を始めていたからです。
妹は療養所に長いことおりまして、その頃より‘ときわすれの花’に関心があったらしいのです。
しかし、ドリス様のお話を聞いて、確信が持てました。その花を研究して、それにたくさん触れることは危険だと思いました。
でも一方で、この花はよく分かっていない、謎の多い花です。
患者さん達にいい影響も与えるのもきっと事実なのでしょう、もっと研究したら、例えば、痛みのひどい怪我人に投与して痛みを抑えたり‥人の役にも立てる花なのではないでしょうか?」
ドリス様は私の話を聞いて呆気にとられている。それを横目で見てファイ様はニヤニヤ。
「いやぁ~アティスは立派だな!結構結構!!
ドリス、こんな小さい姉妹たちが、危険なときわすれの花の研究を始めようとしているのだぞ?
それも、それをいい薬として使えるって提案までされてしまった。
大の大人、それも研究者のドリス様が黙っていてもいいのだろうか?」
「わ、わかった。もともと私もときわすれの花について研究を始めようとしているところだった。君は幼な子だからと思って、研究のことは言わないようにしていたが、君は‥違ったようだ。よし、今度妹君を紹介してくれ。」
「ありがとうございます!!!」
これなら妹の危険な薬の研究も悪い方向には進まないだろう。
安心したのも束の間だった。
ドン!!と扉が勢いよく開いた。
「ファイ!!!!!よくぞ来てくれた!!!」
「おぉ、ジュノー!しばらく見ない間に大きくなったな!」
そこにいたのは攻略対象の一人、王子ジュノーだった。
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