24 / 55
第2章:冷静に竜人国へ駆け落ちする
24:冷静に観光する
しおりを挟む(→一応情報報告しておきます。私たちは、ファイ様に突然駆け落ちを宣言され、気づけば深い森へ空間転移させられ現在に至ります。現場からは以上です。)
「すまんすまん!!!ははっ!!うん?アティス何も持たずにここに来たのか。まあ、よいよい。あちらで買い揃えればよかろう!さぁ行こう!!霧月に!!」
いやいや、私に旅の醍醐味である荷物詰めの儀式をやらせる暇さえ与えなかったのは、ファイ様、あなたです!!
「ファイさまぁ~!!!会いたかったわぁ~!!!」
突然声が上から降ってきた。
見上げるとそこには紅色の綺麗な鳥が羽ばたいていた。
(→美琴!あの鳥です!あなたが倒れているときに月光浴をサポートしてくれていたのは!!)
「おう!シエル!元気だったか?」
「元気だったかじゃないわよ!飛行祭の後やっと帰ってきてくれたと思えばまたすぐ人間の国に行ってしまうなんて…!!置いてかれる身にもなってほしいわ!」
「すまんすまん…でもこうして帰ってきたぞ!それに数年ここにいようと思っている。またよろしく頼むぞ、シエル。」
「数年…それは大変!!!」
その赤い鳥は目をキラキラ輝かせた。
ようやく私が話し始めても良さそうなタイミングがやってきた…
「あのう、赤い鳥さん。私はアティスと言います。私が倒れているとき、あなたが月のエネルギーを私に分けに通ってくださったと聞きました。その時は助けていただきありがとうございました。」
「ああ、ファイ様が筋肉痛で動けないから代わりに行かされた時の‥あの子なのね。元気になったようでよかったわ。でもあなたなんでずっと人間の国にいたのかしら?」
「こらこら、シエル。人のプライベートを詮索しない!そして、私が筋肉痛のことは秘密って言ったろー!」
「飛行祭の翌朝には帰らないといけない理由が、竜の姿で長く飛びまわない竜人のほとんどが、翌日筋肉痛になって長い間帰れなくなるからってのは、何度聞いても間抜けな理由だわ~」
「こらこら、また機密情報喋らない、シエル…」
***
シエルさんがきてくれたおかげで、私たちは迷わず霧月国の門まで来れた。
深い森にこんな場所あったんだ‥
そこは大きな谷で岩肌がゴツゴツと剥き出し、巨大な岩が無数に乱挙していた。
その中を進むと、一際大きな岩肌の亀裂に赤い門を発見した。
「月明かりを灯すもの、ともに来たり」
ぎいーっと鈍い音を立てて門が開く。
なるほど、これが開ごまか。
門の向こうは別世界だった。
赤門ということで少しは予想していたのだが、どっこい。
ここは、完璧なる中華ファンタジーの世界だった!!!
悪役令嬢の生息領域は中世西洋風異世界のはずなのに…!!
中華に来てしまいました…完全に、悪役令嬢あるあるをフルリセットです…
門から見える商店街は人?竜人たちで賑わっていた。建築物は大体2,3階建の長屋造りで、丸瓦。屋根の先がものすごく反り上がった形をしている。街を行く人は、漢服のような服装をしているのだが、どの人も恐ろしいほどの美形だ…みんな攻略対象なんじゃないだろうかと錯覚してしまうくらい描き込みも細かい気がする…。髪の毛の色も極彩色だしここは、天人たちの国かな?
私たちが門を潜り、街の方に歩みを進めると、何やら街の人たちがチラチラ見ている気がする。
「ファイさま、あのう、私のような部外者が市中堂々歩いてもよろしいのでしょうか?」
「うん?気にすることないよ。それに君を見ているのは確かだけど、僕のことも見ているよ。僕たちみたいな白銀の髪はここでは珍しいんだ。」
「そうなのですか‥」
そういえば、私は荷造りをしてここに来なかったし、どのくらい滞在するのかまだ決めていない。ちょうどここにたくさん品物があるし、調達できるのでは…。
「あの、ファイ様。お金はあとで公爵家から私がお支払い致しますので、滞在するための、その服などを買いたいのですが‥」
「そうだね!!あ、そういうの私はよくわからないから、女性同士、シエルと行ってきたら?シエル、もう人間の姿に戻ってもいいんじゃない?」
すると、今まで赤い鳥だったシエルの姿がみるみると美しい女性に変わった。
赤くふさふさな髪は腰ほどまであり、瞳はタイガーアイのよう。その下にある泣きぼくろが実に色っぽい。とても女性的な体つきに、ぽってりとした唇。どこから見ても、妖艶で美しい大人の女性だった。
「わかったわよ。それで?あなたはどのくらい滞在するつもりなの?」
「え、ええーと、そうですね…1週間ほど滞在できれば…」
「あれれ?言ってなかったっけ?アティスは、魔法学園に入学する16歳までここで私と暮らすのだぞ?」
「シリマセンヨ!!!!そんなこと何も言ってないじゃないですか!どういうことですか!!」
「あらあら…もう、ファイさまったら、その思い立ったら一人で勝手に進行させてしまう癖、直した方がいいんじゃなくて??この子の目が飛び出て転がっていっちゃいそう。」
「すまんすまん!まあ、そういうことで、だ!よろしく頼む、シエル。」
「全く、世話を掛ける男ね。さあ行くわよ、アティスちゃん。」
(→美琴。私、アクエスという夫がいながら、それも竜人であるファイさまとこんなに長く住むなんて、そんな罪深いこと…できません!!)
うん、それ私もアクエスとか関係なく、衝撃受けてる…。
****
シエルさん御用達の服屋さんを私たちはかれこれ5軒ほどはしごしている。
「私があなたに似合う服を見繕ってあげるわ。あなたの、その人間がよく着るレースがついたフリフリしたものはここではあまり着ない方がいいわ。悪目立ちするもの。大丈夫!この私が、選んで差し上げるのよ。任せなさい。」
これ、とそれ。そして、あれ持ってきて。うん?違うわね、やっぱこれやめて。
を永遠に繰り返し、どの店でも洗濯機に入りきらない服を買っては、シエルさんの空間魔法のかかったポシェットがそれらをあっという間に吸い込んでいき…
(→これが噂に聞く爆買い…)
「これでよし!これくらいあればまずは大丈夫よ!また何かあったら言いなさい!ファイさまのつけでどっさどっさ、腹いせに買ってあげるわ!なははは」
そ、そのお金、私が払うんですけど‥
「あ!いたいた!!探したよ!二人とも。」
ファイ様が迎えに来てくれた、と思ったのも束の間、後ろにダンディーなおじさんと子供…?って、あれ?さっきまでいたシエルさまが消えてる‥?
「アティス!紹介するね。この人は、ダンテ。この子はショーン。私たちはこれから、ダンテの家でお世話になる。改めてよろしく頼むぞ、ダンテ、ショーン。」
「始めまして、アティスさま。あのう、ファイ様がご迷惑かけていないでしょうか?ファイ様が最近全然帰って来ないと思えば…。我が家は狭いですがご自分の家のようにくつろいでくださって構いませんから。」
「よろしくな!姉ちゃん!」
めっちゃいい人そう!!
やったね、エフィス!
(→まあとりあえず、二人きりでなくて安心しました…)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる