ナキ症候群

怪談話としては非情な方法 そのＢ

月刊Ｎに掲載された矢餓暮神社の事件

　令和８年8月10日。
　矢ヶ暮神社における事件は今も解決の糸口が見えない。死傷者は百名を超えたこの事件を、警察では同事案を”宗教に関連する集団自殺”として事件の捜査に踏み入っている。被害にあった人物たちは、その大多数が自身で地面に頭を打ち続けた末に起きた脳挫傷や、脳の一部が飛散する事による外傷などが多くの原因を占めている。
　目撃者の証言によると被害者の殆どは、”何かを叫びながら自身の頭を地面に叩きつけるという行為が共通して行われたとの事である。その際、被害者達は正座をしながら首を垂れるように奇行を行ったものが大半だが、その一部は壁に手を付き自身の頭部を叩き続けたとの証言もある。

　しかし、被害者の知人や親類からの話によれば、彼ら彼女らが宗教に傾倒していたという証言は無い。その日彼らは矢祭祭やまつりさいに参加していたが、十数名は祭りの管理を行う関係者であったもののその他は一般参列者であったという。
　警察の捜査は大規模な物となっているが、それでも調査は難航しているというのが現状だ。

　この事件のおける最大の疑念は、集団自殺者にはこれといった特徴は無く面識はなかったという所である。示し合わせたかのように行われたこの悲惨な結末は、どの様な予兆も見せずに行われた。

　筆者が調べた所、この辺りではナキ症候群という風土病が存在しており他にも怪談のような話がいくつも語られているそうだ。
　その一つに、印様という存在がある。
　印様は先に述べた神社である”矢ヶ暮神社”における主神であり、祟り神としての側面を持つ神様である。彼は大きな腕を有しており、頭はトンカチの様に平べったい。対象はその大きな腕に両腕を掴まれ、両手首に火傷後を残しつつ顔を粉砕されるそうだ。
　この惨状に対しての明確な回答とはなり得ないが。彼らが誰かに呪われた末ではなく、彼らが自分だ選んだわけでもなく。ただただ、理不尽に巻き込まれた事を祈るばかりである。