ナキ症候群

神様として、貴方がその手を汚すまでの話

Ｑ何故、貴方は私を救ってくれたんでしょうか？

　市街地からは少し離れ、それでも交通の便を捨てられなかったような場所に其処はある。
　少し歩けば売店がある主役の駅があるからか、それともこんな辺鄙な場所だからか。無人駅には今日も蝉の声だけが響いていた。

　私は、夏が好きだった。

　青々とした空に浮かぶ入道雲の圧倒的な存在感に心が引かれた。
　青々しい木々が蝉の嬌声の中で揺れるのが好きだった。
　静けさの中、水面がユラユラと靡く様子に没頭できた。

　私は、青い色が好きだった。
　昔から青い色は私を救ってくれた。どうしようもないとき、逃げたい時。私が絵を捨てたいと思った時も、青い色だけは捨てられなかった。

　それだけは輝いていて、私の心を放さなかったんだ。


　空は相変わらず青空が広がっていて。
　地平線には、水溜りがあって。
　木々は相変わらず青々としている。




　こんな辺鄙な場所でも電車は通る。
　時刻表を見れば、快速列車が通過するらしい。

　無人駅に足を止めるのは、二時間に一本あればいい方らしい。
　私がこんな事をするのに、きっと誰かのせいは無かったんだ。

　親のせいでも。
　ネットのせいでも。
　学校のせいでも。


　これから行う私の好意は、きっと私のせいだから。
　私は、真新しい点字ブロックを超え白線を超える。

　そして、私は自分の意思で線路へと踏み入れる。












　何かがぶつかったような痛みじゃなかった。
　でも、その意志は確かに私を引き留めた。


　その焼け痕が、私を救ってくれたんだ。































　厄を引き寄せる神様が悪辣であるとは限らない。
　その傷跡が、何よりも誰かを救う事がある。

　だけども、結局の所これは神様が人を殺す話だ。
　其処にどう紆余曲折があろうとこの結末が変わる事は無い。