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霜が降る
霜が降る10
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その言葉を聞いた時、私は素直にもったいないと思えた。
夜。街灯と電灯の明かりで飾られた露店。
祭りの中核を担う傘を携えた急奈は主役の容姿の可憐さも相まって華やかに見える。本来雨乞いの意味を込めた儀式であった”それに”、何処か神秘的な何かを着色させたのは彼女の功績だと思える程、鮮やかで、幻想的で、魅力的な仕事をこなしていたから。
仕事を誇りに、楽しそうにこなしていた彼女にもったいないと思うのは、私のわがままだろうか?
「これで大分分かりやすくなったね」
「そうでしょうか?」
「そうだとも、簡単だ。ナカ婆が隠していた秘密というのは、所謂そう言う奴さ」
ナカさんはこの事象に対して霜が降るという名称を使用していた。という事は、彼女は少なくともこの異常性に対して思慮があることが伺得られる。
もしかしたら、季節によってその性質を変えるからこその矛盾なのだろうか?だからこそ、夏は上空へと舞い、冬にはその場に霜を宿す。”霜が降る”は、その性質を内包していたからこそ蔵に停滞していたのだろうか?
異常性について考察は無意味だとは分かっていてても、考えは尽きそうにない。
「霜が降ると似たような異常性を隠していた。……ってのは分かるんですけど、理由が思い浮かびませんね。天先生に怒られると思っていたんでしょうか?」
「天先生が?そんなのあり得る訳ないだろ?」
「冗談ですよ」
孫娘が閉じ込められる危険があったとしても、彼はナカさんを信じているだろう。
その上で叱る事もあるかもしれないが、ナカさんは思う以上に自由人のきらいがある。それに、隠し事が苦手そうだ。
「__いや、まあ当たらずとも遠からずだがね。そもそも、なぜ天先生が異常性を持つ物体に対して認知をしているか君は知っているか?」
「……知りませんね」
「その起源は、恐らく霜が降るに等しい何かだろう」
その等しい何かは、霜が降るの様に凍った”何か”だった。
彼はそれを知っていたうえで、私達に依頼をした。もちろんこれには矛盾はない。餅は餅屋に任せるべきだ。例え天先生がどれ程異常性に詳しかったとしても、専門的な手段を持つ我々とそうでない差は大きい。スズメバチに防護服を着ないで処理をする人間はいないだろう。__もちろん、例外は多々あるにしろ。
「__異常性を知っているというのに、依頼をしたと?」
「少なくとも、天先生は同系統の異常性を見た事があるはずだ。」
「何故?」
「君は、狐に化かされたらどうする?」
「その異常性を解明し、狐の正体を探ります」
そう言う職業という事を含めなくても、私ならそうするだろう。
私は異常性を持つ物の恐ろしさを知っている。ある程度の理由で構成されているとはいえ、それは魔法よりも質が悪い。知らなければ命を落とす事だって在るだろう。例えキツネの正体が枯れ尾花でも、”それ”を知る事は何よりも日常を守る。
「それは私達専門科としての答えだよ。普通の人間なら、常識を疑う事は無いだろう?」
「ですが天先生は異常性がある事を認知しているのでは?」
「それはそうだ。だが、彼は異常性に対して専門的ではない」
天先生は、専門家ではない。
__それはそうだ、しかしそれは一般人よりも知っている事に対して矛盾はしていない。
「__先代からの知り合いで、時折そういった話を持ってきてくださるのだから。専門家ではなくても、そういった事象には思慮深いのでは?」
「今までの其れは、自身が巻き込まれたものではないだろ?口にしたのは、街の多数が口にするような痕跡が少し残った程度の噂だ。それは実物じゃないんだよ。精々が茶の友だ。噂話を本気にすると思うか?それに」
それは所謂、百聞は一見に如かずと同意だろう。
「ですが、彼はこの事務所がそれを生業としている事を知って今回の事を依頼してきました。だから、分かってはいたのでは_?」
「彼は一度でも怪異を主体とした依頼をした事は無い。殆ど異常な事柄に無垢な一般人だ。だけど、彼は私達を専門家として認知している。助手君。それが矛盾しているとは言えないんだ。理解している上で、彼は私達を一般的な探偵として扱っていた。しかし、今回のは違う。今回のは、専門家としての依頼だ」
「__それが、最初の話とどう絡むのですか?」
探偵は付け加える。
今回の話は延長線なのだと。
天先生は同じような異常性。あるいは似たような異常性に対して面識があった。だからこの世に異常な現象がある事は知っているが、それ以上の経験が無いからこそ詳しくは知らない。我々とは違い、片鱗を知っている一般人に過ぎない。
おそらくはその事象は解決したのだろうが、霜が降ると似た”何か”は未だに終っていなかった。未知よりも怖いものは無い。彼はその事象に対して知っている訳ではない。だというのに、彼は自身の奥さんと孫娘がその異常性を利用している事に危機感を覚えた。
「天先生は灰猫俱楽部と関わりがあるのでしょ?」
「灰猫俱楽部の全てが、異常ではないよ。異常を知っているのは、私を含めたごく少数だ。それに、機密性の高い異常性の話は我々の様な業界ではデリケートな話題だ。例えば、彼が七井家の話をしたことがあるか?」
確かに。
例えば、この手の異常性の話題になれば七井家やその他関連団体の話が浮かんでも不思議じゃなかった。もし本当に彼がこちら側の人間だとしたら、その話があってもおかしくは無かった。噂話に偽物や本物が混ざっていたのも事実だ。私は勝手に、彼が何でも知っていると思っていたと思い込んでいたのだろうか?
天先生は思った以上に普通な人間だったのかもしれない。
「だから、彼は我々に頼んだのだろう。唯一頼れた、”専門的な”店なのだから」
でも、それは。
決して悪い言葉では無くて。
「猫さんが依頼を受けた事が無いというなら……」
「如何やら、私の父君が受けたようだね」
霜が降る。
それは雪のように振舞う異常ともいえないような異常。
それを口にしたナカさんは天先生以上にそれを知っているのだろうか?
真夏の暑さに逆らうように空へと舞い上がる雪を模した異常性は、その異常性の意思を受け継いでいるのだろうか?
どちらにしろ、それは私の後輩が言うように美しいものだろう事は容易に想像できる。
それはきっと儚くて、幻想的で。
心打たれる光景なのだろう。
夜。街灯と電灯の明かりで飾られた露店。
祭りの中核を担う傘を携えた急奈は主役の容姿の可憐さも相まって華やかに見える。本来雨乞いの意味を込めた儀式であった”それに”、何処か神秘的な何かを着色させたのは彼女の功績だと思える程、鮮やかで、幻想的で、魅力的な仕事をこなしていたから。
仕事を誇りに、楽しそうにこなしていた彼女にもったいないと思うのは、私のわがままだろうか?
「これで大分分かりやすくなったね」
「そうでしょうか?」
「そうだとも、簡単だ。ナカ婆が隠していた秘密というのは、所謂そう言う奴さ」
ナカさんはこの事象に対して霜が降るという名称を使用していた。という事は、彼女は少なくともこの異常性に対して思慮があることが伺得られる。
もしかしたら、季節によってその性質を変えるからこその矛盾なのだろうか?だからこそ、夏は上空へと舞い、冬にはその場に霜を宿す。”霜が降る”は、その性質を内包していたからこそ蔵に停滞していたのだろうか?
異常性について考察は無意味だとは分かっていてても、考えは尽きそうにない。
「霜が降ると似たような異常性を隠していた。……ってのは分かるんですけど、理由が思い浮かびませんね。天先生に怒られると思っていたんでしょうか?」
「天先生が?そんなのあり得る訳ないだろ?」
「冗談ですよ」
孫娘が閉じ込められる危険があったとしても、彼はナカさんを信じているだろう。
その上で叱る事もあるかもしれないが、ナカさんは思う以上に自由人のきらいがある。それに、隠し事が苦手そうだ。
「__いや、まあ当たらずとも遠からずだがね。そもそも、なぜ天先生が異常性を持つ物体に対して認知をしているか君は知っているか?」
「……知りませんね」
「その起源は、恐らく霜が降るに等しい何かだろう」
その等しい何かは、霜が降るの様に凍った”何か”だった。
彼はそれを知っていたうえで、私達に依頼をした。もちろんこれには矛盾はない。餅は餅屋に任せるべきだ。例え天先生がどれ程異常性に詳しかったとしても、専門的な手段を持つ我々とそうでない差は大きい。スズメバチに防護服を着ないで処理をする人間はいないだろう。__もちろん、例外は多々あるにしろ。
「__異常性を知っているというのに、依頼をしたと?」
「少なくとも、天先生は同系統の異常性を見た事があるはずだ。」
「何故?」
「君は、狐に化かされたらどうする?」
「その異常性を解明し、狐の正体を探ります」
そう言う職業という事を含めなくても、私ならそうするだろう。
私は異常性を持つ物の恐ろしさを知っている。ある程度の理由で構成されているとはいえ、それは魔法よりも質が悪い。知らなければ命を落とす事だって在るだろう。例えキツネの正体が枯れ尾花でも、”それ”を知る事は何よりも日常を守る。
「それは私達専門科としての答えだよ。普通の人間なら、常識を疑う事は無いだろう?」
「ですが天先生は異常性がある事を認知しているのでは?」
「それはそうだ。だが、彼は異常性に対して専門的ではない」
天先生は、専門家ではない。
__それはそうだ、しかしそれは一般人よりも知っている事に対して矛盾はしていない。
「__先代からの知り合いで、時折そういった話を持ってきてくださるのだから。専門家ではなくても、そういった事象には思慮深いのでは?」
「今までの其れは、自身が巻き込まれたものではないだろ?口にしたのは、街の多数が口にするような痕跡が少し残った程度の噂だ。それは実物じゃないんだよ。精々が茶の友だ。噂話を本気にすると思うか?それに」
それは所謂、百聞は一見に如かずと同意だろう。
「ですが、彼はこの事務所がそれを生業としている事を知って今回の事を依頼してきました。だから、分かってはいたのでは_?」
「彼は一度でも怪異を主体とした依頼をした事は無い。殆ど異常な事柄に無垢な一般人だ。だけど、彼は私達を専門家として認知している。助手君。それが矛盾しているとは言えないんだ。理解している上で、彼は私達を一般的な探偵として扱っていた。しかし、今回のは違う。今回のは、専門家としての依頼だ」
「__それが、最初の話とどう絡むのですか?」
探偵は付け加える。
今回の話は延長線なのだと。
天先生は同じような異常性。あるいは似たような異常性に対して面識があった。だからこの世に異常な現象がある事は知っているが、それ以上の経験が無いからこそ詳しくは知らない。我々とは違い、片鱗を知っている一般人に過ぎない。
おそらくはその事象は解決したのだろうが、霜が降ると似た”何か”は未だに終っていなかった。未知よりも怖いものは無い。彼はその事象に対して知っている訳ではない。だというのに、彼は自身の奥さんと孫娘がその異常性を利用している事に危機感を覚えた。
「天先生は灰猫俱楽部と関わりがあるのでしょ?」
「灰猫俱楽部の全てが、異常ではないよ。異常を知っているのは、私を含めたごく少数だ。それに、機密性の高い異常性の話は我々の様な業界ではデリケートな話題だ。例えば、彼が七井家の話をしたことがあるか?」
確かに。
例えば、この手の異常性の話題になれば七井家やその他関連団体の話が浮かんでも不思議じゃなかった。もし本当に彼がこちら側の人間だとしたら、その話があってもおかしくは無かった。噂話に偽物や本物が混ざっていたのも事実だ。私は勝手に、彼が何でも知っていると思っていたと思い込んでいたのだろうか?
天先生は思った以上に普通な人間だったのかもしれない。
「だから、彼は我々に頼んだのだろう。唯一頼れた、”専門的な”店なのだから」
でも、それは。
決して悪い言葉では無くて。
「猫さんが依頼を受けた事が無いというなら……」
「如何やら、私の父君が受けたようだね」
霜が降る。
それは雪のように振舞う異常ともいえないような異常。
それを口にしたナカさんは天先生以上にそれを知っているのだろうか?
真夏の暑さに逆らうように空へと舞い上がる雪を模した異常性は、その異常性の意思を受け継いでいるのだろうか?
どちらにしろ、それは私の後輩が言うように美しいものだろう事は容易に想像できる。
それはきっと儚くて、幻想的で。
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