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14 隕石と酸素
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天文ファンの霊に連れられ、月の裏側から4~50光年先の惑星を感知する女霊。
まさに宇宙人と会えることを期待する。
(じゃ、いくよ)
(はい、お願いします)
彼に従い、4次元的移動に付いて行く。それはどうにも言葉に出来ない感覚だった。霊の身としては生身の感覚とは違うのだが、建物の透過などとはまた違う感覚。大きな蛇に飲み込まれながらも、その内臓をめくって出るような……入りつつ出るような不思議な世界。
しかし感覚としてもはやその世界も、3次元空間と同じく自分の在りし世界として感知していた。生きているときは不可逆だった時の流れを遡りつつ宇宙を旅すると、たしかにあっという間に目的の地に到着したらしい。
(ほら、着いた。ここだよ)
(はい、うわあ~、地球そっくりな青い星ですね!)
(水と大気があると、まあ大体青くなるからね~。けど大陸の形はだいぶ違うでしょ?)
(本当ですねえ、なんていう星なんですか?)
(まだここの住人たちは、星に名前を付けてる段階じゃないんだよ。大地としか認識してない。僕らは天秤星って呼んでるけどね)
(え?天秤星?)
(この星、公転がほぼ円で公転周期が31日なんだけど、二つ月を持ってて天秤みたいなんだよね。だから天秤星。内側に大きな太陽系でいうところの木星くらいの惑星があってね、その星の公転軌道が天秤星とちょっと似てて恒星の光を微妙に遮るんだよ。結構隠す蝕はひと月くらいかな。結果公転12回で、地球みたいな寒い時期とあったかい時期がくるんだ。)
(え~?、結局1年が31日ですか?)
(季節が巡るのが12か月だから1年はだいたい地球と同じ期間と認識されてるね。)
(はあ~、なるほど。)
(うんそう、それでこの星、一番進んでる文明で中世後期とか近世前期程度かなあ)
(そうなんですか?太陽からみるとちょっと古い星みたいですけど……)
その惑星の主星の恒星は、太陽より極すこし赤っぽいのである。これは古い星の特徴だろう。
(そうなんだけどね、天秤星は地球みたいに大きな隕石がぶつかって無いから、大絶滅の時期が遅くなってね。恐竜時代がちょっと長かったんだよ)
(あれ?恐竜が進化した人類じゃない?巨大隕石衝突の恐竜大絶滅が無くても、哺乳類が高等人類として進化したんですか?)
(もともと、恐竜は滅びつつあったんだ。巨大隕石衝突が滅びを一気に加速しただけでね。こちらは衝突が無くてゆっくり恐竜が滅びた星なんだ。結果人類発生も遅くなったんだよ。太陽系より古い星だから、生命の発生は地球より早かったみたいだけどね)
恐竜の絶滅には諸説あるが、最も有名なのは巨大隕石衝突説だろう。
巨大隕石の衝突により、粉塵が舞い上がり長い冬が起こり、それで恐竜が絶滅したというものである。
最近の研究では隕石衝突はただのきっかけで、真の理由は火山活動だったという説もある。
隕石の影響は3年ほどで解消され、大打撃は受けたものの、絶滅するほどでは無かった。
しかし、衝突した影響で世界中の火山が活発化、インドではデカン高原ができるほどの大噴火となったと言われている。
その活動は数百年から数千年続き、気候が激変した結果、絶滅というものだ。
だが、衝突から何万年も恐竜は生き残ってる証拠もある。
ニューメキシコ州サンフアン盆地の地層は暁新世のもので、白亜紀/第三紀境界(K-T境界)の大量絶滅後50万年後の時代にあたる。
この地層の砂岩層で、ハドロサウルス、ティラノサウルス、アンキロサウルスなどの骨が一緒に見つかった。彼らは隕石衝突から50万年も生き延びたことになる。
よって隕石衝突が原因でもあるが、それが無くても、恐竜は滅んでいたという説もある。それは酸素濃度の変化によるものであるというのだ、絶滅も進化も酸素濃度が決めたとピーター・D・ウォードは唱える。
大量絶滅は低酸素環境か急速な酸素濃度低下にほぼ一致している。恐竜の絶滅が隕石衝突が切っ掛けによることは確実だが、他の大量絶滅もそうだと思うのは早計だ。
地球の歴史では全生物種の70~85%が死滅する大絶滅が5度起こっている。最後の一度は隕石が原因の事もあったとしても、残りには関係ない。
石炭紀・ペルム紀初期は現在以上の高酸素。昆虫が大きくなれたのもそのためだ。有名な巨大トンボを現代に連れてきたらおそらく酸欠になるだろう。この時期は哺乳類が支配者だった。
しかしその後三畳紀には、低酸素化で大絶滅。哺乳類が酸欠でゼイゼイしていた時に、効率の良い呼吸器官をもつ恐竜は繁栄した。
次に酸素濃度が上がってくると、高酸素環境下では素早く、体に占める脳の容積比率が高いため、生活能力が高い哺乳類に押され、逆に巨体を持て余し滅んでいったというものだ。
以下、参考に恐竜と哺乳類に関連する地球年代を抜き出す。
石炭紀
約3億6700万年前~約2億8900万年前 昆虫や両生類繁栄 爬虫類に進化
※石炭紀 - ペルム紀 酸素濃度歴史最高30%程で、現在の約1.5倍。この時期翼開長70cm程度のトンボなど巨大昆虫繁栄。
ペルム紀
約2億9000万年前~約2億5100万年前 高酸素(低二酸化炭素)
恐竜の祖先と哺乳類の祖先がいたが、哺乳類の祖先が支配していた。
三畳紀
約2億5100万年前 ~ 約2億年前 中期に恐竜やワニが出現
約2億1200万年前 酸素濃度が下がっていく。大量絶滅 - 全生物種の76%が絶滅
恐竜の祖先が台頭し、哺乳類が小型化、種の分化も低くなる。
ジュラ紀
約2億年前~約1億4000万年前 低酸素時代(高二酸化炭素)
主な恐竜の種族・気嚢がある竜盤類が支配し、それに鳥の祖先と目される鳥盤類の恐竜が続き、哺乳類は、恐竜がいないニッチで生息している。
白亜紀
1億4000万年前 ~6500万年前 酸素濃度が漸増する。
竜盤類が衰退していき、鳥盤類が台頭し、やがて、哺乳類も分化して、生息範囲を広げていく。白亜紀後期で、すでに恐竜時代が大体終っていた。
約6500万年前 K-T境界 小天体の衝突により恐竜・アンモナイトを含む全生物種の70%が絶滅した。
(まあ、ぼくは古生物の専門家じゃないからあんまり詳しくないけど、衝突が起こってないこの星でも哺乳類型人類が発生してるから、あながち間違いな説じゃないんじゃないかな)
(は~、なるほど、そうなんですね。こちらの星は哺乳類型人類……あれ?地球人と同じ?)
(まあそうなるね。星が違っても、生物って結局効率とか考えると、おんなじような姿になるんだろうね。猿から進化した、ほぼ地球人と同じ姿の人類だよ)
(じゃあ、早速行ってみてみますね。送ってくださってありがとうございました)
(まあまあ、ついでだからちょっと案内してあげるよ。まったく見知らぬ場所じゃ、観光の当てもないでしょ?)
(うわあ、いいんですか?重ね重ねありがとうございます)
女霊は、案内してくれた天文ファン霊とともに、惑星地表に向かっていった。
**********
絶滅説の説明はかなり端折ってザックリなのでおかしな部分もあると思います。適当こいてと流していただけると助かります。
2018/1/26
天秤星系の惑星位置設定を大幅改稿!どう考えても物理的にオカシイと結論付けました。
ちょっとでもつじつま合わせるために変更しました。
変更前太陽を挟んで二つの惑星と二つの月で微妙な重力差の楕円軌道で季節が生まれる
変更後
天秤星の内側に巨大惑星があり、微妙に公転が重なる
蝕がゆっくりで天秤星の恒星光をゆっくり半年遮るので四季が起こる
天秤星には月は二つあるので二つの月で天秤の様に見える、というわけで天秤星の名前変更はなし。
まさに宇宙人と会えることを期待する。
(じゃ、いくよ)
(はい、お願いします)
彼に従い、4次元的移動に付いて行く。それはどうにも言葉に出来ない感覚だった。霊の身としては生身の感覚とは違うのだが、建物の透過などとはまた違う感覚。大きな蛇に飲み込まれながらも、その内臓をめくって出るような……入りつつ出るような不思議な世界。
しかし感覚としてもはやその世界も、3次元空間と同じく自分の在りし世界として感知していた。生きているときは不可逆だった時の流れを遡りつつ宇宙を旅すると、たしかにあっという間に目的の地に到着したらしい。
(ほら、着いた。ここだよ)
(はい、うわあ~、地球そっくりな青い星ですね!)
(水と大気があると、まあ大体青くなるからね~。けど大陸の形はだいぶ違うでしょ?)
(本当ですねえ、なんていう星なんですか?)
(まだここの住人たちは、星に名前を付けてる段階じゃないんだよ。大地としか認識してない。僕らは天秤星って呼んでるけどね)
(え?天秤星?)
(この星、公転がほぼ円で公転周期が31日なんだけど、二つ月を持ってて天秤みたいなんだよね。だから天秤星。内側に大きな太陽系でいうところの木星くらいの惑星があってね、その星の公転軌道が天秤星とちょっと似てて恒星の光を微妙に遮るんだよ。結構隠す蝕はひと月くらいかな。結果公転12回で、地球みたいな寒い時期とあったかい時期がくるんだ。)
(え~?、結局1年が31日ですか?)
(季節が巡るのが12か月だから1年はだいたい地球と同じ期間と認識されてるね。)
(はあ~、なるほど。)
(うんそう、それでこの星、一番進んでる文明で中世後期とか近世前期程度かなあ)
(そうなんですか?太陽からみるとちょっと古い星みたいですけど……)
その惑星の主星の恒星は、太陽より極すこし赤っぽいのである。これは古い星の特徴だろう。
(そうなんだけどね、天秤星は地球みたいに大きな隕石がぶつかって無いから、大絶滅の時期が遅くなってね。恐竜時代がちょっと長かったんだよ)
(あれ?恐竜が進化した人類じゃない?巨大隕石衝突の恐竜大絶滅が無くても、哺乳類が高等人類として進化したんですか?)
(もともと、恐竜は滅びつつあったんだ。巨大隕石衝突が滅びを一気に加速しただけでね。こちらは衝突が無くてゆっくり恐竜が滅びた星なんだ。結果人類発生も遅くなったんだよ。太陽系より古い星だから、生命の発生は地球より早かったみたいだけどね)
恐竜の絶滅には諸説あるが、最も有名なのは巨大隕石衝突説だろう。
巨大隕石の衝突により、粉塵が舞い上がり長い冬が起こり、それで恐竜が絶滅したというものである。
最近の研究では隕石衝突はただのきっかけで、真の理由は火山活動だったという説もある。
隕石の影響は3年ほどで解消され、大打撃は受けたものの、絶滅するほどでは無かった。
しかし、衝突した影響で世界中の火山が活発化、インドではデカン高原ができるほどの大噴火となったと言われている。
その活動は数百年から数千年続き、気候が激変した結果、絶滅というものだ。
だが、衝突から何万年も恐竜は生き残ってる証拠もある。
ニューメキシコ州サンフアン盆地の地層は暁新世のもので、白亜紀/第三紀境界(K-T境界)の大量絶滅後50万年後の時代にあたる。
この地層の砂岩層で、ハドロサウルス、ティラノサウルス、アンキロサウルスなどの骨が一緒に見つかった。彼らは隕石衝突から50万年も生き延びたことになる。
よって隕石衝突が原因でもあるが、それが無くても、恐竜は滅んでいたという説もある。それは酸素濃度の変化によるものであるというのだ、絶滅も進化も酸素濃度が決めたとピーター・D・ウォードは唱える。
大量絶滅は低酸素環境か急速な酸素濃度低下にほぼ一致している。恐竜の絶滅が隕石衝突が切っ掛けによることは確実だが、他の大量絶滅もそうだと思うのは早計だ。
地球の歴史では全生物種の70~85%が死滅する大絶滅が5度起こっている。最後の一度は隕石が原因の事もあったとしても、残りには関係ない。
石炭紀・ペルム紀初期は現在以上の高酸素。昆虫が大きくなれたのもそのためだ。有名な巨大トンボを現代に連れてきたらおそらく酸欠になるだろう。この時期は哺乳類が支配者だった。
しかしその後三畳紀には、低酸素化で大絶滅。哺乳類が酸欠でゼイゼイしていた時に、効率の良い呼吸器官をもつ恐竜は繁栄した。
次に酸素濃度が上がってくると、高酸素環境下では素早く、体に占める脳の容積比率が高いため、生活能力が高い哺乳類に押され、逆に巨体を持て余し滅んでいったというものだ。
以下、参考に恐竜と哺乳類に関連する地球年代を抜き出す。
石炭紀
約3億6700万年前~約2億8900万年前 昆虫や両生類繁栄 爬虫類に進化
※石炭紀 - ペルム紀 酸素濃度歴史最高30%程で、現在の約1.5倍。この時期翼開長70cm程度のトンボなど巨大昆虫繁栄。
ペルム紀
約2億9000万年前~約2億5100万年前 高酸素(低二酸化炭素)
恐竜の祖先と哺乳類の祖先がいたが、哺乳類の祖先が支配していた。
三畳紀
約2億5100万年前 ~ 約2億年前 中期に恐竜やワニが出現
約2億1200万年前 酸素濃度が下がっていく。大量絶滅 - 全生物種の76%が絶滅
恐竜の祖先が台頭し、哺乳類が小型化、種の分化も低くなる。
ジュラ紀
約2億年前~約1億4000万年前 低酸素時代(高二酸化炭素)
主な恐竜の種族・気嚢がある竜盤類が支配し、それに鳥の祖先と目される鳥盤類の恐竜が続き、哺乳類は、恐竜がいないニッチで生息している。
白亜紀
1億4000万年前 ~6500万年前 酸素濃度が漸増する。
竜盤類が衰退していき、鳥盤類が台頭し、やがて、哺乳類も分化して、生息範囲を広げていく。白亜紀後期で、すでに恐竜時代が大体終っていた。
約6500万年前 K-T境界 小天体の衝突により恐竜・アンモナイトを含む全生物種の70%が絶滅した。
(まあ、ぼくは古生物の専門家じゃないからあんまり詳しくないけど、衝突が起こってないこの星でも哺乳類型人類が発生してるから、あながち間違いな説じゃないんじゃないかな)
(は~、なるほど、そうなんですね。こちらの星は哺乳類型人類……あれ?地球人と同じ?)
(まあそうなるね。星が違っても、生物って結局効率とか考えると、おんなじような姿になるんだろうね。猿から進化した、ほぼ地球人と同じ姿の人類だよ)
(じゃあ、早速行ってみてみますね。送ってくださってありがとうございました)
(まあまあ、ついでだからちょっと案内してあげるよ。まったく見知らぬ場所じゃ、観光の当てもないでしょ?)
(うわあ、いいんですか?重ね重ねありがとうございます)
女霊は、案内してくれた天文ファン霊とともに、惑星地表に向かっていった。
**********
絶滅説の説明はかなり端折ってザックリなのでおかしな部分もあると思います。適当こいてと流していただけると助かります。
2018/1/26
天秤星系の惑星位置設定を大幅改稿!どう考えても物理的にオカシイと結論付けました。
ちょっとでもつじつま合わせるために変更しました。
変更前太陽を挟んで二つの惑星と二つの月で微妙な重力差の楕円軌道で季節が生まれる
変更後
天秤星の内側に巨大惑星があり、微妙に公転が重なる
蝕がゆっくりで天秤星の恒星光をゆっくり半年遮るので四季が起こる
天秤星には月は二つあるので二つの月で天秤の様に見える、というわけで天秤星の名前変更はなし。
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