隣の彼女

沢麻

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小悪魔

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 優吾は衝撃を受けたようだが、それとは別問題なのか部屋を物色し、二階(ではなくて、屋根裏らしいが)に行きたい、お化けに会いたいなどとだだをこね始めた。茉莉沙の家にいるからか、茉莉沙の存在が普段より大きくなっている。外の道では茉莉沙はギャラリーだったのに、今は優吾の話し相手になっている。
 「ほら優吾。迷惑なことしないで。公園行かないの? 今日は川上だってよ」
 「いかね」
 「ええっ優吾が?」
 優吾は上機嫌だった。茉莉沙も不機嫌そうには見えない。優吾のことを嫌いと言ったのは嘘だったのだろうか。
 「お前こそ行かないの?」
 「……」
 最近仲間外れにされていることは、優吾は気付いていないかもしれない。でも格好悪くて、そんなことは言えない。
 「川上は弟来るから嫌だもん」
 「居たって別に遊ばなきゃいい話でしょ」
 「そういえばマリサは一人っ子なんだよね?」
 万夢は茉莉沙と話そうと思った。優吾のことが好きなのに、今日は駄目だ。話していても苛つく。
 「……うん、まあー、一人っ子か」
 「あ……」
 まさか離婚したもう片方の親の方に、きょうだいがいたのかな。まずいこと訊いたかも。茉莉沙には何を話しかけても地雷になりそうで怖い。
 「なんか、私の知らないきょうだいはいるみたい。詳しく知らないんだけど」
 「? ……そっか、複雑なんだね。ごめん、変なこと」
 「いいよ、普通に暮らしてたら思い付かないし、気にしないで」
 茉莉沙はいちいち上から目線だ。ホームグラウンドだからか。
 「俺は一人っ子」
 優吾が入ってきた。
 「ふーん、そんな感じだね」
 「なんだよ、わがままっぽい?」
 「ううん、愛されて育ってるぽい。大事にされてさ」
 「そんな自覚ないけど、関口みたいに苦労してる奴見ると、俺って甘やかされてるのかなって思っちゃったわ。勉強になるホント」
 ……。なんだろう。この二人。優吾が茉莉沙の一言一言に魅了されているのが手に取るようにわかる。外では素っ気ないのに、別にしか言わないのに、ここではすごく大人ぶって偉そうにしている茉莉沙って、なんなんだろう。小悪魔的な……ってこういうこと? 茉莉沙は顔がすごく可愛い。これでツンデレされたら、馬鹿な男子なんてすぐ夢中になるのでは。
 帰りたい。来なければよかった。
 でも帰ったら、優吾と茉莉沙が二人きりになる。もっと親密になる。それはなんだか、どうしても許せない気がして、万夢は動けなかった。
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