後ろに誰かがいる気がする

沢麻

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木村江梨子

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 《今度の日曜日、すっごく楽しみです。帰り、ちょっとドライブして送ってくれたらうれしいな。二人っきりになれるかな……》
 《なれるといいけど、無理かもね。でも、ユウカちゃんに会えるだけで幸せだよ》
 《わたしもですー。ほんとに大好き》
 《俺もユウカちゃんのこと好きだよ。いけないのはわかってるけど、好きなんだ。早く日曜日になればいいね。》
 
 夫は浮気性だった。過去にも二回あった。結婚する前に一度と、妊娠中に一度。妊娠中の時の浮気相手ははすごく若い子で、慰謝料だなんだと騒ぐ気にもなれなかったし、出産して一那を可愛がり始めた頃別れたようだったので目を瞑っていた。
 しかし江梨子はもうその点で夫を信じようとは思わなくなっていて、定期的に携帯を盗み見て動向をチェックしていたのだ。今日はたまたま、その行為を夫に見つかってしまった。だからと言ってこれはなんだ、離婚だと騒ぐ気はないが、それにしても一那の友達に手を出していたとは。まさかストーカーというのは、夫だったのではないか? 十五歳の子にこの内容は異常だとしか言いようがない。
 「いや、違うんだよ」
 夫は何が違うのかよくわからないが抵抗を始めた。
 「ユウカちゃんはお父さんがいなくて、俺に父親を求めてるようなところがあってさ」
 苦しいいいわけだ。いけないのはわかってるけど、などと真っ黒な内容を送っておいて、何を言う。
 「何もないよ、あるわけないでしょ。だって一那の友達だし」
 一那の友達と個人的にラインなど、江梨子はしたことがない。
 「親子ごっこ、みたいな。だってさ、俺だって一那には大好きだよとかもう言われないし、そういうの嬉しいじゃない」
 父と娘は、それが普通ではないか。
 「犯罪? わかってるよ。娘と同じ年の子供に、何をするっていうの。そんなんじゃないよ」
 優花は背は低いが、ものすごく人目を引く子で、顔も愛らしい。性格の良し悪しはさておき、男女ともに人気があると思われる。ああいう子供が好きな大人の男はいくらでもいる。
 夫の女性遍歴を思い出した。自分の前の女は、高校生だとか言っていた。きっと若い子が好きなのだ。浮気相手も二十歳そこそこだったし、たまにそういう動画を見ていることも知っている。
 しらをきっているが、こいつは優花が好きだ。自分の娘のクラスメイトであっても。
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