僕は観客として

沢麻

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目撃

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 「お父さん! アイス買ってよー」
 珍しく日曜日休みがあり、川島は子供たちと大きめの公園に遊びに来ていた。売店のソフトクリームを買えと言われて、従う。一年生と三年生で、二人とも甘いものが好きで小太りである。
 「ほらほら、かき氷もあるぞ。ジェラートだって」
 「やだ! チョコがけパフェソフトがいい」
 「俺はブルーベリークリームチーズソースがけソフトクリームがいい」
 少しでも低カロリーなものをこちらが薦めても、子供たちは高額でこってりしたものを敢えて選ぶのであった。 
 日陰のベンチに腰かけてソフトクリームを食べていると、見慣れた車両が目についた。
 「あれ? あれってお父さんの会社の車じゃない?」
 「あっほんとだ。プ、ラ、ス、ア……って書いてある」
 「……ほんとだねぇ」
 公園の近くに配送だろうか。イレギュラーな時間帯に注文が入ることもあるが、現在午後三時で配達時間帯としては珍しい。でもそれなら公園の駐車場に停めるのはおかしいのでは……
 「ちょっと待ってて」
 川島はノーマルのソフトクリームを秒で食べ終わると、会社のバンの付近までこっそり歩いて行ってみた。エンジンがかかったままで、中で野地がスマートフォンを見ながらシートを倒している。
 ……サボっているのでは。
 今や店長という立場の川島は、以前なら見て見ぬふりをして立ち去っただろうが、勇気を振り絞り運転席のウインドウをノックした。いつもゆっくり行動する野地は、ゆっくりと顔を上げたがその後の動きは素早く、顔つきも険しく変わった。
 「野地さん、何してるの」
 「……今、戻るところです」
 「この辺に配送だったのかな?」
 「……」
 野地は無言で頭を小刻みに上下させると、そのまま慌てて車を発進させた。
 こういうところで時間を潰せば、店舗に居る時間は自ずと減る。そういうことなのか。明日配送伝票の記録を確認しなければという気持ちと、これを日常的に行っていたらどうしようという気持ちが胸を掻き乱す。野地が配送を中心に担当するようになって一週間ほどだが、もうこんな技を身に付けたなんて信じがたい。
 「おとうさーん」
 濃厚なソフトクリームを食べ終わった子供達に呼ばれ、川島は駐車場を離れた。とても子供達とのんきに遊ぶ気分ではなかったが、今日は休みなのだ。川島は野地のことを考えながら、残りの時間を過ごした。
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