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店長会議
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「野地さん! 戻るのが遅い!」
「野地さん! 何分休憩するつもりですか」
「野地さん! 手が止まってる!」
今日も三ノ宮の怒声が響き渡る。客に聞こえやしないかとハラハラするが、実際聞こえているのだろう。目の前の作業着を着た客は苦笑いをしている。
ここ最近三ノ宮の、野地に対する当たりが酷いのだった。野地についてなんとかしてくれと何度も言われたのに結果なにもしていない川島は責任を感じていた。川島に訴えていた当時は、三ノ宮も年上の野地を立ててあまりひどい物言いはしなかった。だが最近はもう川島にも何も言わず、ただひたすら当事者の野地に不満をぶつけている。川島は三ノ宮の機嫌が悪いときは、店内のBGMの音量を上げたりして対応しているが、そろそろ店長として問題と向き合わないとまずい。パートたちは二人の戦いを面白そうに見て楽しそうにしているし、これでは野地がいじめられているにも等しい。
一方文句を言われている野地は、鈍感なのか意地っ張りなのか態度を改める様子はなく、職場環境は悪化の一途をたどっている。苛立ちが収まらない三ノ宮は他の職員にも当たりが強くなり、もともと嫌われていたところが取り返しがつかないレベルに達しそうだ。
川島はこの件を店長会議にかけることにした。そうすれば野地をどうにかできるかもしれない。配達途中で油を売っているくらいだもの、また本社に戻って栄養相談でもすればいいのだ。それが彼に合っている。
川島は店長連中にオブラートに包みながら報告した。
「……ということで、野地の移動を真剣に検討していただけないでしょうか。ちょっとうちの店舗では無理かと思うのです」
「三ノ宮主任ならうちに欲しいですね」
すかさず発言したのは二号店店長の坂部だ。坂部は偏屈な人柄で、あまり慕われていないが敏腕な男である。
「うちの宮川主任と、どうですかね」
「……宮川さんですかー」
宮川は女性職員へのセクハラで何回か注意を受けたことのある曰く付きの人物である。坂部と合わないと聞いたことがあったが、それと三ノ宮をトレードしようという提案だ。
違うのだ。三ノ宮ではなくて野地をもらってほしいのに。野地をなんとかしないと根本的なところは変わらないのだ。
しかし他の面々も「それでいいんじゃない?」というような空気を醸し出している。野地を押し付けた本社の中瀬課長も我関せずと言わんばかりにニヤニヤしている。そうか、こいつらは川島が人がいいからって、厄介者を次から次へと押し付けようとしてくるのだ。三ノ宮だってそうだった。パワハラの気があるから、若い世代が多い店舗で使いにくいということで三号店に来たんだった。
「中瀬課長、本社の籍なんだから、栄養相談でもやってもらったら」
「うーん、野地は客のタイプに合わせて臨機応変にいけないからなぁ。変なのに当たったら大変なことになる」
「ですが店舗業務に不向きなのも事実です」
川島は三ノ宮のトレードに傾いていた流れを変えようと、必死に訴えた。仕事中に公園でサボっていたことも伝えた。野地はやりたいこともやれず、客に怒鳴られ嶋津に嫌みを言われ三ノ宮に暴言を吐かれ本当に哀れだ。野地が少しでも楽しんで働けるところはないのか。
「……そんなに言うなら、奥の手しかないか……」
中瀬課長がそんなことを言い始めた。他に手があるなら、どうして最初からそちらを検討しないのか。野地の運命はどうなるのか。川島は目を見開いた。
「野地さん! 何分休憩するつもりですか」
「野地さん! 手が止まってる!」
今日も三ノ宮の怒声が響き渡る。客に聞こえやしないかとハラハラするが、実際聞こえているのだろう。目の前の作業着を着た客は苦笑いをしている。
ここ最近三ノ宮の、野地に対する当たりが酷いのだった。野地についてなんとかしてくれと何度も言われたのに結果なにもしていない川島は責任を感じていた。川島に訴えていた当時は、三ノ宮も年上の野地を立ててあまりひどい物言いはしなかった。だが最近はもう川島にも何も言わず、ただひたすら当事者の野地に不満をぶつけている。川島は三ノ宮の機嫌が悪いときは、店内のBGMの音量を上げたりして対応しているが、そろそろ店長として問題と向き合わないとまずい。パートたちは二人の戦いを面白そうに見て楽しそうにしているし、これでは野地がいじめられているにも等しい。
一方文句を言われている野地は、鈍感なのか意地っ張りなのか態度を改める様子はなく、職場環境は悪化の一途をたどっている。苛立ちが収まらない三ノ宮は他の職員にも当たりが強くなり、もともと嫌われていたところが取り返しがつかないレベルに達しそうだ。
川島はこの件を店長会議にかけることにした。そうすれば野地をどうにかできるかもしれない。配達途中で油を売っているくらいだもの、また本社に戻って栄養相談でもすればいいのだ。それが彼に合っている。
川島は店長連中にオブラートに包みながら報告した。
「……ということで、野地の移動を真剣に検討していただけないでしょうか。ちょっとうちの店舗では無理かと思うのです」
「三ノ宮主任ならうちに欲しいですね」
すかさず発言したのは二号店店長の坂部だ。坂部は偏屈な人柄で、あまり慕われていないが敏腕な男である。
「うちの宮川主任と、どうですかね」
「……宮川さんですかー」
宮川は女性職員へのセクハラで何回か注意を受けたことのある曰く付きの人物である。坂部と合わないと聞いたことがあったが、それと三ノ宮をトレードしようという提案だ。
違うのだ。三ノ宮ではなくて野地をもらってほしいのに。野地をなんとかしないと根本的なところは変わらないのだ。
しかし他の面々も「それでいいんじゃない?」というような空気を醸し出している。野地を押し付けた本社の中瀬課長も我関せずと言わんばかりにニヤニヤしている。そうか、こいつらは川島が人がいいからって、厄介者を次から次へと押し付けようとしてくるのだ。三ノ宮だってそうだった。パワハラの気があるから、若い世代が多い店舗で使いにくいということで三号店に来たんだった。
「中瀬課長、本社の籍なんだから、栄養相談でもやってもらったら」
「うーん、野地は客のタイプに合わせて臨機応変にいけないからなぁ。変なのに当たったら大変なことになる」
「ですが店舗業務に不向きなのも事実です」
川島は三ノ宮のトレードに傾いていた流れを変えようと、必死に訴えた。仕事中に公園でサボっていたことも伝えた。野地はやりたいこともやれず、客に怒鳴られ嶋津に嫌みを言われ三ノ宮に暴言を吐かれ本当に哀れだ。野地が少しでも楽しんで働けるところはないのか。
「……そんなに言うなら、奥の手しかないか……」
中瀬課長がそんなことを言い始めた。他に手があるなら、どうして最初からそちらを検討しないのか。野地の運命はどうなるのか。川島は目を見開いた。
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