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俺と嘘③
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俺は最強に散らかった部屋に夕希を入れた。昨日妄想でブラックタイガーと格闘したあとだったので色々散乱している。まあ仕方無い。
「マスク取りなよ」
俺は従った。俺のぼろぼろになった下唇を見て、夕希は少し切ない顔をした。
わかってるんだ。夕希が何を言いに来たのか。俺は全部わかってる。レイプの話は口実だろ。でもよかった。このまま夕希が来てくれなかったら、俺は本当に壊れてしまうところだったんた。
「……ごめんね」
「謝んなよ! 俺が謝らなきゃ! ごめん夕希。ほんとにごめん」
夕希は今度は泣きそうな顔になった。俺はそれ見ても、テンションが上がりすぎて止まらない。
「あんな辞め方して、責任感じたろ? でも夕希は全然悪くない。俺が弱かっただけ。いや、まあ今も弱いけど……あんなことしてごめん」
もう夕希を傷付けるのは今日で終わりにしよう。俺は俺の恋に、自分で幕を引こう。
「……ずっと夕希が好きだった」
夕希は泣き出してしまった。いいんだ。きっぱりふってくれ。
「でももう諦める。夕希、ずっと好きでいさせてくれてありがとう。五年間、すげえ毎日楽しかった。夕希がいたから仕事も頑張れた。これからは、夕希がいなくても頑張れるようになるよ。ありがとう」
「違うの!」
「?」
「あたしは……ずっと知ってたんだよ。俊くんの気持ち。それを利用してただけなの。寂しいとき、手っ取り早くそばにいてくれる男として利用してた。あたしにとっては恋愛対象にはならないのに、俊くんにはずっと好きでいてほしいとか自己中なこと考えて、そのことで俊くんを随分傷付けた。だからあたしが今辛い思いをするのは当然なの。あたしが悪いんだもん。あたしのせいで俊くんが仕事来なくなって、引っ越した部屋で引きこもって、たまに外でてレイプするようになったって、それ全部あたしのせいだって、責任感じなきゃだめなんだよあたしは。こんな最低な女、もう嫌いになりなよ」
「……」
俺は二ヶ月前、夕希を犯そうとした。簡単に色んな男とやる女だ。俺が襲いかかっても問題ない、あわよくば、と思った。もういい加減俺の恋心は膨れ上がり、破裂しそうで苦しかった。夕希を抱けば、夕希に穴を開ければ、俺のものになるのかもしれない。もう辛いんだ。地道に思い続けても、伝わらないし伝えられない。俺の気持ちに気付いてくれ。他の奴みたいに、夕希を傷付けたりしない。大切にする。言葉に出せない思いを、よりによって一番傷付ける方法で伝えようとしてしまったのだ。
そして失敗した。
暴れ、泣き叫び、拒絶と敵意の色が浮かんだ目で俺をずっと睨んでいた。
穴は開かなかった。
俺は次の日から仕事に行けなくなった。夕希と俺を知る他の誰にも会いたくなかった。夕希には絶対もう二度と会えないと思った。俺は好きな人にわざわざ嫌われるようなことをして、結果嫌われたという現実を受け止めたくなかった。俺を嫌いになった可能性のある夕希には会いたくなかった。だから死んだと思うことにしたのだ。事実、俺と夕希の友情は死んでいた。俺が殺した。
それから二ヶ月間、俺は狂ったように穴を開けることに固執した。いくら穴を開けても満足感は得られなかった。自分や親や他人を傷付け、自分の狂気に酔い、自分に嘘を吐き続けた。暗闇で一人で勝手に苦しんでいた。
でも美代さんが死んで、もう嘘を吐くのはやめようと思ったんだ。美代さんのように、嘘を吐いたまま死んでいくには俺は若すぎる。妄想を抱いて生きるにはまだ早い。夕希も今正直な気持ちを口にしたじゃないか。
「仕方ねーじゃん。でもさ、終わったこといつまでも気にしなくてもいいんじゃね?」
あれ、これ自分に言ってるみたいだ。
「馬鹿終わってないでしょ。俊くん捕まるかもしれないのに」
「だからそれは夕希のせいじゃないって」
「……仕事もまだしてないんでしょう?」
「だからさ、俺のこと好きじゃないならそこは夕希が世話焼くとこじゃないって」
「……」
夕希が寂しそうにした。そうか、夕希は夕希で俺に依存しているのかもしれない。いつでも無償の愛を送り続けた俺が、夕希から卒業しようとすることは確かに寂しいかもしれない。
勝手な女だな。まあそこがいいんだけど。
「ま、これからは俺は慰めてやれないから、まともな恋愛してくれよな」
「……」
「河合さんとかもいるから大丈夫だろ? 河合さん、なんだかんだで夕希のこと大好きだし」
……きっと俺が喋ってるんじゃない。これはブラックタイガーが喋ってるんだ。客観的な俺。現実を冷静に見れる俺。そんな俺がまだ、俺の中にいる限り、俺はまだ大丈夫かもしれない。
「マスク取りなよ」
俺は従った。俺のぼろぼろになった下唇を見て、夕希は少し切ない顔をした。
わかってるんだ。夕希が何を言いに来たのか。俺は全部わかってる。レイプの話は口実だろ。でもよかった。このまま夕希が来てくれなかったら、俺は本当に壊れてしまうところだったんた。
「……ごめんね」
「謝んなよ! 俺が謝らなきゃ! ごめん夕希。ほんとにごめん」
夕希は今度は泣きそうな顔になった。俺はそれ見ても、テンションが上がりすぎて止まらない。
「あんな辞め方して、責任感じたろ? でも夕希は全然悪くない。俺が弱かっただけ。いや、まあ今も弱いけど……あんなことしてごめん」
もう夕希を傷付けるのは今日で終わりにしよう。俺は俺の恋に、自分で幕を引こう。
「……ずっと夕希が好きだった」
夕希は泣き出してしまった。いいんだ。きっぱりふってくれ。
「でももう諦める。夕希、ずっと好きでいさせてくれてありがとう。五年間、すげえ毎日楽しかった。夕希がいたから仕事も頑張れた。これからは、夕希がいなくても頑張れるようになるよ。ありがとう」
「違うの!」
「?」
「あたしは……ずっと知ってたんだよ。俊くんの気持ち。それを利用してただけなの。寂しいとき、手っ取り早くそばにいてくれる男として利用してた。あたしにとっては恋愛対象にはならないのに、俊くんにはずっと好きでいてほしいとか自己中なこと考えて、そのことで俊くんを随分傷付けた。だからあたしが今辛い思いをするのは当然なの。あたしが悪いんだもん。あたしのせいで俊くんが仕事来なくなって、引っ越した部屋で引きこもって、たまに外でてレイプするようになったって、それ全部あたしのせいだって、責任感じなきゃだめなんだよあたしは。こんな最低な女、もう嫌いになりなよ」
「……」
俺は二ヶ月前、夕希を犯そうとした。簡単に色んな男とやる女だ。俺が襲いかかっても問題ない、あわよくば、と思った。もういい加減俺の恋心は膨れ上がり、破裂しそうで苦しかった。夕希を抱けば、夕希に穴を開ければ、俺のものになるのかもしれない。もう辛いんだ。地道に思い続けても、伝わらないし伝えられない。俺の気持ちに気付いてくれ。他の奴みたいに、夕希を傷付けたりしない。大切にする。言葉に出せない思いを、よりによって一番傷付ける方法で伝えようとしてしまったのだ。
そして失敗した。
暴れ、泣き叫び、拒絶と敵意の色が浮かんだ目で俺をずっと睨んでいた。
穴は開かなかった。
俺は次の日から仕事に行けなくなった。夕希と俺を知る他の誰にも会いたくなかった。夕希には絶対もう二度と会えないと思った。俺は好きな人にわざわざ嫌われるようなことをして、結果嫌われたという現実を受け止めたくなかった。俺を嫌いになった可能性のある夕希には会いたくなかった。だから死んだと思うことにしたのだ。事実、俺と夕希の友情は死んでいた。俺が殺した。
それから二ヶ月間、俺は狂ったように穴を開けることに固執した。いくら穴を開けても満足感は得られなかった。自分や親や他人を傷付け、自分の狂気に酔い、自分に嘘を吐き続けた。暗闇で一人で勝手に苦しんでいた。
でも美代さんが死んで、もう嘘を吐くのはやめようと思ったんだ。美代さんのように、嘘を吐いたまま死んでいくには俺は若すぎる。妄想を抱いて生きるにはまだ早い。夕希も今正直な気持ちを口にしたじゃないか。
「仕方ねーじゃん。でもさ、終わったこといつまでも気にしなくてもいいんじゃね?」
あれ、これ自分に言ってるみたいだ。
「馬鹿終わってないでしょ。俊くん捕まるかもしれないのに」
「だからそれは夕希のせいじゃないって」
「……仕事もまだしてないんでしょう?」
「だからさ、俺のこと好きじゃないならそこは夕希が世話焼くとこじゃないって」
「……」
夕希が寂しそうにした。そうか、夕希は夕希で俺に依存しているのかもしれない。いつでも無償の愛を送り続けた俺が、夕希から卒業しようとすることは確かに寂しいかもしれない。
勝手な女だな。まあそこがいいんだけど。
「ま、これからは俺は慰めてやれないから、まともな恋愛してくれよな」
「……」
「河合さんとかもいるから大丈夫だろ? 河合さん、なんだかんだで夕希のこと大好きだし」
……きっと俺が喋ってるんじゃない。これはブラックタイガーが喋ってるんだ。客観的な俺。現実を冷静に見れる俺。そんな俺がまだ、俺の中にいる限り、俺はまだ大丈夫かもしれない。
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