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相川
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「ちょっと、タバコくさい」
妻がまた物凄い形相で睨んできた。子供が産まれたので気を使って外で喫煙しているというのに、妻は喫煙を終えて室内に入った瞬間いつも顔をしかめる。しかしどちらかと言えばにおいを発しているこっちに非がありそうなので、とりあえず「ごめんね」と言う。
「ごめんねって言うくらいならタバコやめてよ」
えっ。妻が食い下がってきた。ごめんねなんて心の底から思っているわけではない。仕方なく言っているしもっと言えば外で喫煙するのだって仕方なくだ。ほんとはテレビを見たりビールを飲みながらゆったりソファーに座って煙草を楽しみたいに決まってるじゃないか。だから煙草をやめるとかそういう展開になるのが理解できない。
「ごめんね」
俺はまた曖昧な笑みを浮かべてその場から立ち去った。妻は口が達者で、口喧嘩では勝ち目がないため争う気は毛頭ない。そもそもあんなに煙草が嫌いになるなんて思わなかった。妊娠初期の悪阻の辺りから煙草に異常な嫌悪感を示すようになったが、それ以前は特に何も言わなかったのだ。女は妊娠、出産で体型のみならず何もかも変わるというが、その通りだった。あそこまで憎しみの目を向けられると、この先一緒に暮らしていけるのか怪しい。
まぁ煙草くらいで離婚とか、そんなことにはならないよな。
俺は楽観的に構えていたわけだ。嫌煙家なこと意外は皆が羨む自慢の妻なわけで、気持ちもまだまだあった。そんな中いきなり離婚届を持ち出された俺の衝撃は半端なかったわけである。
「え、これ、どういうわけ?」
俺は冗談でしょアハハハと続けられそうなノリでその離婚届について反応した。しかし妻は真剣な表情で、「本気よ」という。
「本気って何。俺何かしたわけ?」
「煙草を吸う人は嫌なの」
「ええっ」
じゃあどうして俺と結婚したの? と突っ込みを入れたくなる。俺が煙草を吸いだしたのは昨日今日の話ではないではないか。
「待ってよ。それだけの理由ってありえなくない?」
「それほど嫌なの」
「外で吸ってるのに」
「吸い終わっても三十分くらいは副流煙が吐き出されるのよ。じゃあ煙草を吸い終わったら三十分経ってから家に入ってくれない?」
「はぁ?」
冗談じゃない。そんなことしたらもう一本吸ってしまって永遠に家に入れないではないか。
「とにかく煙草をやめてくれない限りは、一緒に暮らしたくありません」
妻はいきなり敬語になりやがる。
「ま、ま、待ってよ。わかった、やめるよ」
俺は妻と子供を繋ぎ止めたいがために咄嗟に嘘を吐いた。そう、煙草をやめる気などない。
「もし嘘を吐いたら慰謝料貰って別れるわよ」
「えっ」
そんなことで慰謝料なんて発生するのか? 俺はとりあえず今どうやらキレていて冷静な判断が困難と見える妻の言いなりになって、落ち着かせる作戦に出ることにした。
「もうこれはいらないわね」
妻はいきなり俺の煙草を奪い取ると、いきなり水道で水をじゃっとかけた。うわ。何する。決して安いものじゃないんだぞ。俺はさすがにムカつき妻を睨んでしまった。それを妻は見逃さない。
「何よ、その顔は。やめるんでしょ?」
「いや、そうだけど……」
俺の頭の中は煙草でいっぱいになった。この先どうやって妻にばれないように喫煙を続けるか、そのことばかり考えながら、妻には従順な振りをしてなんとかその離婚云々はやり過ごした。
妻がまた物凄い形相で睨んできた。子供が産まれたので気を使って外で喫煙しているというのに、妻は喫煙を終えて室内に入った瞬間いつも顔をしかめる。しかしどちらかと言えばにおいを発しているこっちに非がありそうなので、とりあえず「ごめんね」と言う。
「ごめんねって言うくらいならタバコやめてよ」
えっ。妻が食い下がってきた。ごめんねなんて心の底から思っているわけではない。仕方なく言っているしもっと言えば外で喫煙するのだって仕方なくだ。ほんとはテレビを見たりビールを飲みながらゆったりソファーに座って煙草を楽しみたいに決まってるじゃないか。だから煙草をやめるとかそういう展開になるのが理解できない。
「ごめんね」
俺はまた曖昧な笑みを浮かべてその場から立ち去った。妻は口が達者で、口喧嘩では勝ち目がないため争う気は毛頭ない。そもそもあんなに煙草が嫌いになるなんて思わなかった。妊娠初期の悪阻の辺りから煙草に異常な嫌悪感を示すようになったが、それ以前は特に何も言わなかったのだ。女は妊娠、出産で体型のみならず何もかも変わるというが、その通りだった。あそこまで憎しみの目を向けられると、この先一緒に暮らしていけるのか怪しい。
まぁ煙草くらいで離婚とか、そんなことにはならないよな。
俺は楽観的に構えていたわけだ。嫌煙家なこと意外は皆が羨む自慢の妻なわけで、気持ちもまだまだあった。そんな中いきなり離婚届を持ち出された俺の衝撃は半端なかったわけである。
「え、これ、どういうわけ?」
俺は冗談でしょアハハハと続けられそうなノリでその離婚届について反応した。しかし妻は真剣な表情で、「本気よ」という。
「本気って何。俺何かしたわけ?」
「煙草を吸う人は嫌なの」
「ええっ」
じゃあどうして俺と結婚したの? と突っ込みを入れたくなる。俺が煙草を吸いだしたのは昨日今日の話ではないではないか。
「待ってよ。それだけの理由ってありえなくない?」
「それほど嫌なの」
「外で吸ってるのに」
「吸い終わっても三十分くらいは副流煙が吐き出されるのよ。じゃあ煙草を吸い終わったら三十分経ってから家に入ってくれない?」
「はぁ?」
冗談じゃない。そんなことしたらもう一本吸ってしまって永遠に家に入れないではないか。
「とにかく煙草をやめてくれない限りは、一緒に暮らしたくありません」
妻はいきなり敬語になりやがる。
「ま、ま、待ってよ。わかった、やめるよ」
俺は妻と子供を繋ぎ止めたいがために咄嗟に嘘を吐いた。そう、煙草をやめる気などない。
「もし嘘を吐いたら慰謝料貰って別れるわよ」
「えっ」
そんなことで慰謝料なんて発生するのか? 俺はとりあえず今どうやらキレていて冷静な判断が困難と見える妻の言いなりになって、落ち着かせる作戦に出ることにした。
「もうこれはいらないわね」
妻はいきなり俺の煙草を奪い取ると、いきなり水道で水をじゃっとかけた。うわ。何する。決して安いものじゃないんだぞ。俺はさすがにムカつき妻を睨んでしまった。それを妻は見逃さない。
「何よ、その顔は。やめるんでしょ?」
「いや、そうだけど……」
俺の頭の中は煙草でいっぱいになった。この先どうやって妻にばれないように喫煙を続けるか、そのことばかり考えながら、妻には従順な振りをしてなんとかその離婚云々はやり過ごした。
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