VS お義母さん

沢麻

文字の大きさ
20 / 34
色んな好みが違う!朝飯和or洋だけじゃない!

しおりを挟む
 初任給は三万四千円ほどだった。これで家に足りないものを買って、住みやすくしようと道子は思った。まず何が足りないか真剣に考えたところ、食器と鍋、調理器具が圧倒的に足りない。鍋はフライパンと少し深い鍋の二つしかない。食器も茶碗が二つ、お椀が二つ、サラダボウルが二つ、仕切りのついた平たい皿が二枚、トーストサイズの皿が四枚、それに小皿が十枚ほどしかない。コップ類はコーヒーカップが二つ、湯呑みが二つ、グラスが四つ。実は道子は、和馬の茶碗を使っているのだった。パパっと平らげて、洗って、また和馬に使う。味噌汁は湯呑みに入れて飲んでいる。いかにもこの家に不要な人物になったようで虚しかった。そうだ自分の茶碗とお椀を買おう。
 手持ちが増えると出歩きたくなるのも世の常で、道子は仕事の後にショッピングモールに出向くようになった。最初はいつも悪趣味で蛍光色か黒中心の服ばかり着せられている孫の瑠璃夏に品のいい服を買ってあげた。それから予定通り自分の食器類を買う。それにしてもショッピングモールとは何でもあるもので、うろうろしている間に座布団を買ってみたり、カーディガンを買ってみたり、和馬に靴下などを買ってみたり、ついでに杏奈にも靴下を買ったり、化粧品を買ったりと止まらないではないか。なんて楽しい。
 
 「あのーお義母さん。生活費のほうは三千円なんですかねぇ」
 いつものように杏奈に買ったものを見せていたら、いきなりそんなことを言われた。確かに給料日に、それだけ渡したが……足りないということなのか。しかし自分は食器や座布団や靴下など、この家のためのものを色々買ってきたではないかと思うとそれで解決な気がして「食器や座布団や靴下を買ってあげたじゃない」と返した。すると杏奈は何やら不満げに、「私、最初働いていただくときに、物を買って欲しいとは言ってないし、生活費を入れるように言ったんですけど……」とぶつぶつ言う。
 「何よ、いらなかったっていうの?」
 「いや、そうは言ってないですけど、あの、座布団とかじゃなくて五千円にして欲しかったっていうのが本音です」
 「だって座るところがないじゃないの!」
 五千円か……。だったら最初から金額を提示すればいいのに。あと二千円払うのが惜しい。小金でぷらぷらとショッピングモールで遊ぶのが、最近の楽しみだと言うのに。
 というか杏奈がネットスーパーなどで買い物をするから生活費が高くつくのではないだろうか。
 「じゃあ来月から私が一回五千円分食材の買い物をしてくるっていうのはどう。ネットスーパーより安いし、たまには違った食材も食べたいんじゃない?」
 この家は決して魚を買わないのも道子は気になっていたのだ。杏奈は少し考えてから言った。
 「そうですね、そろそろ私もひじきにはうんざりです」
 「!」
 ……この嫁。
 しかしこれで、道子は一ヶ月に一回五千円の買い物をすることに決まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...